はじめよう、クルマのある暮らし。

Traffic

公開日:2025.09.19

なぜETC専用化が進むのか? 料金所のひみつ。【川辺謙一の「道路の科学」Vol.11】

交通技術ライター川辺謙一が語る「道路の科学」。第11回は、高速道路の料金所のETC専用化に迫る。

文と写真=川辺謙一

この記事をシェア

便利なETCと料金所

みなさんは、有料の高速道路を使うとき、通行料金をどのようにして支払っていますか? おそらく多くの方がETC(自動料金収受システム)を使い、キャッシュレスで支払っていると答えるでしょう。

ETCは便利なシステムです。車両が料金所のETCレーンを通行(速度は20km/h以下)すると、車両の車載器と料金所のアンテナの間で無線通信を行い、通行料金のキャッシュレス決済ができます。通信エラーなどが起こり、開閉バーが上がらないことがなければ、一般レーンのように停止する必要はありません。

それゆえ国内では、高速道路の利用者の大多数がETCを使っています。現在の全国のETC利用率は95.3%です(データ出典:国土交通省・2025年4月)。なお、ETC利用率は大都市圏で高く、首都高速道路では98.5%です(データ出典:国土交通省・2025年4月)。料金所係員がいる一般レーンを通行する車両(以下、非ETC車)は、全体から見れば少数派です。

なぜETC専用化が進むのか? 料金所のひみつ。【川辺謙一の「道路の科学」Vol.11】

国土交通省の方針とETC専用化

国土交通省は、この傾向を踏まえて、高速道路の料金所のETC専用化を推進しています。つまり、たんにETC利用率が高くなったからではなく、国土交通省の方針に沿って各高速道路会社が連携してETC専用化を進めているのです。

同省の道路局高速道路課は、2020年12月17日に「ETC専用化等による料金所のキャッシュレス化・タッチレス化について~都市部は5年、地方部は10年程度での概成に向けたロードマップの策定~」を発表し、高速道路会社6社の料金所のETC専用化を進めるスケジュールを明らかにしました。

この資料に記されたおもな目的には、「混雑の緩和など利用者の生産性の向上」「将来的な管理コストの削減」「高速道路内外の各種支払における利用者利便性の向上」「料金所係員の人員確保が困難な中での持続可能な料金所機能を維持」「料金所係員や利用者に対する感染症リスクの軽減」があります。

料金所のETC専用化は、半導体不足によってスケジュールが2年ほど後ろにずれ込みました。ただし、2024年からは、半導体の供給不足が解消したため、今は着々と進められています。

なぜETC専用化が進むのか? 料金所のひみつ。【川辺謙一の「道路の科学」Vol.11】

非ETC車に対応するサポートレーン

なお、すべての料金所をETC専用レーンだけにするのはむずかしいです。先述した非ETC車が存在するだけでなく、車載器へのカードの入れ忘れなどによる通信エラーが発生し、正常に決済できない車両がいるからです。

このため各高速道路会社は、ETC専用レーンとは別にサポートレーンを設け、料金所の無人化を図っています。サポートレーンは、ETC専用レーンを通行できない車両が誤って進入してしまった場合に、当該車両をサポートするレーンで、離れた場所にいる係員と遠隔で連絡できる構造になっています。

実際は、このようなサポートレーンを設けても、対応できない場合があります。とくに非ETC車の通行台数が多い料金所では、係員の直接的なサポートが必要になります。

たとえば首都高速道路では、一部の料金所で、係員がいる一般レーンが残っています。首都高速道路は、1日あたりの平均通行台数が約105.4万台で、そのうち約1.6万台が非ETC車です(2025年4月時点のデータから算出)。また、他社の高速道路との接続点に近い本線料金所では、1レーンあたりの通行台数が多いゆえに、完全に無人化すると混乱が起きやすいです。このため、現時点では一般レーンが今後も残る予定です。

なお、首都高速道路では、先述した一部の料金所を除き、2028年春までに料金所をETC専用化することを目指しています(首都高速道路プレスリリース2025年1月24日)。同様に、他の高速道路会社も、目標時期を設定して料金所のETC専用化を進めています。

料金所のETC専用化は、今後も続きます。これによって料金所係員がいる一般レーンは希少な存在になり、通行料金を現金で支払う機会も減るでしょう。

記事の画像ギャラリーを見る

この記事をシェア

  

Campaign

応募はこちら!(9月30日まで)
応募はこちら!(9月30日まで)