三浦半島に新たな縦軸ができる!「三浦半島中央道路」延伸計画が進行中。最終的にはどこまでつながる?【いま気になる道路計画】
三浦半島を縦につらぬく「三浦半島中央道路」の整備計画が進行中だ。先行区間として中央トンネルが開通し、エリアの交通流を変化させたなか、その先の延伸計画が具体化しつつある。開通のメリットや、現在の進捗状況を見ていこう。
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逗子~横須賀の内陸縦断ルート「三浦半島中央道路」とは?
三浦半島中央道路の概要。
「三浦半島中央道路」は、神奈川県逗子市から横須賀市までの新たな縦断軸として整備が計画されている、延長約11.1kmの道路だ。1993年に都市計画決定した。
現在、三浦半島を付け根から先端方面へつなぐ主要道路は、両側の海沿いにあたる「国道134号」や「国道16号」、あるいは衣笠を抜ける「横浜横須賀道路」「県道・横須賀葉山線」が担っている。
しかし、限られたルートへ交通流が集中するため、交通渋滞の発生するポイントが多数あり、そうした混雑を解消するためのバイパスとなるのが「三浦半島中央道路」の整備計画だ。
これまでに、2004年に開通した「三浦半島中央トンネル」を含む、南郷トンネル入口交差点(逗葉新道・県道311号鎌倉葉山線)から湘南国際村までが開通している。三浦半島中央トンネルは、二子山の山岳部を貫く南郷・竜神・新沢の3本のトンネルから構成される区間で、逗葉新道と横須賀葉山線を一気に短絡する画期的な新ルートとなった。
南側の湘南国際村から先は、そのまま海沿いの国道134号の立石公園付近までつながり、葉山の中心街を避けた南北移動が可能となった。
いよいよ動き始めた「逗子市内延伸」計画とは
三浦半島中央道路の桜山・長柄区間。
三浦半島中央道路のなかで、現在、計画が進行中なのは「桜山・長柄区間」だ。
これは、逗葉新道から北側を1km延伸、逗子葉山高校付近にトンネルを設け、逗子~田浦の東西軸である「県道・横須賀逗子線」の「逗子警察署入口交差点」に直結するというもの。歩道付きの2車線道路で、一般的な山岳トンネル工法が採用される。
また、接続する逗子警察署入口交差点では、右折待ちによる渋滞が深刻になっていることから、横浜逗子線側でも交差点部が拡幅され、両方向に右折レーンが新設される計画となっている。
現在、この東逗子エリアは渋滞多発ポイントで、逗子~田浦の重要東西軸であることや、金沢八景方面から下りてくる「県道・金沢逗子線」を経た交通流がなだれ込んでくることにより、激しく混雑している。
そのため、便利な三浦半島中央トンネルへ、逗子葉山高校前の裏道を抜けて、住宅地内を通り抜けるドライバーが後を絶たず、地域の安全性の低下が課題となっているのだ。そのため、延伸区間の実現は急務とされている。
気になる進捗だが、2025年度は都市計画の手続きが進行中だ。これが終われば、用地取得や測量設計が本格化していくこととなる。
とはいえ、住宅地付近にトンネルを通すという事業の性格上、完成まではまだ時間がかかりそうだ。トンネル直上の周辺土地では家屋調査が進められ、さらに土地の地下の一部を権利補償する「区分地上権」も採用されるなど、協議や調整が必要となっている。住民説明会でも「15~20年はかかるのではないか」という県側の想定が出た。
古くから地元調整が難航していた区間だが、2014年からようやく現地測量がスタートし、足掛け10年以上でいよいよ事業が本格化しようとしている。
さらなる壮大な計画も進行中
三浦半島中央道路は最終的に武山方面へ延伸される計画だ。
さて一方で、開通済みの区間の南端である「湘南国際村」よりも南側でも壮大な「未開通計画」がある。
計画ルートは、湘南国際村から大楠山の西側を南東へ抜け、大楠トンネルの手前で平作方面の市道と接続(芦名工区)。さらに三浦縦貫道路と交差して、武山地区の「通研入口」付近で県道・横須賀三崎線と接続する(山科台工区)というもの。総延長は5km強だ。
実現すれば、衣笠や久里浜方面への新アクセスルートとなり、三浦海岸方面への最短距離ルートが誕生。衣笠中心街や東逗子の混雑ポイントを通り抜ける必要が無くなる。
同計画は、いつ着工するのだろうか。
神奈川県の道路整備の基本方針「改定・かながわのみちづくり計画」(2016年)を見ると、三浦半島中央道路の南側区間は「整備推進箇所」という位置づけとなっている。計画内では「2025年度までに整備を始める」という意思表示があるが、残念ながら着工見通しは現時点で立っていない。
2018年の湘南国際村活性化検討委員会のなかでも、県側から「当分の間、工事に移る予定はない」という声が出ており、その後も表立った動きは見えていない。横須賀市議会でも今年に入って「どうなっているのか」という質問があったが、市長は「さまざまな機会を捉え、4市1町が一丸となって積極的に要望を行ってまいります」と答えるにとどまっている。
とはいえ、2024年の「三浦半島地域広域幹線道路整備促進期成同盟」の活動記録を見ると、先行区間である芦名工区では、橋梁・トンネルの設計が進められているという。また、課題として、芦名地区の市道交差点付近に産業廃棄物最終処分場「かながわ環境センター」があり、道路を通すにはまず処分場の埋め立てが完了する必要があるとしている。
同時に県の立場としては、まず北側の桜山・長柄区間に注力していきたいと表明しており、この南側区間の着工は当分なさそうだ。間近に迫っている「かながわのみちづくり計画」の再改定において、南側区間がどう再び位置づけられるのかに注目だ。
三浦半島の中央部を南北につらぬく「三浦半島中央道路」の完成は、地元住民の利便性や安全性の向上みならず、観光産業への好影響も見込める。南側区間の具体化はまだまだ先になりそうだが、一刻も早い北側区間の完成に期待しながら、引き続き注目していきたい。
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