トヨタ新型アルファードの最上級グレードにして大本命!「エグゼクティブラウンジ プラグインハイブリッド」を渡辺敏史が試す【試乗レビュー】
トヨタの高級ミニバン「アルファード」にプラグインハイブリッド車が新たに登場。静寂性とパワーを兼ね備えたPHEVの走りと、ラグジュアリーさを極めた室内空間の組み合わせはもはや敵なし!? モータージャーナリストの渡辺敏史が試乗した。
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PHEV仕様のアルファードを試す
我々が普段接しているのは、難しいことをいわなければ総じてクルマと束ねられるけれども、厳密にいえば色々な「型」がある。セダンだクーペだSUVだ……と区分けされるのがそういうことだ。
その中で、日本において一大勢力となっているのが「ミニバン」だ。90年代の登場当初は人も荷物もいっぱい運べる、セダンとはまったく異なる機能性を売りとしていたが、そこに加えて昨今はセダンの役割も内包し、フォーマルな場へのアクセスも差し支えないものとなった。それをもって、政財界をはじめとした「お偉いさん」の移動を支えるクルマとして、もはや鉄板の地位にあることは多くの人も感じていらっしゃることだろう。
その総代たる存在がアルファード&ヴェルファイアだ。世間的にはアルヴェルとも略されるそれは過去三代に渡って日本のショーファードリブン=運転手付きで乗せられるクルマとしての地位を固めつつ、オーナードリブン=普通の人がハンドルを握るファミリーカーとしての需要も膨らませてきた。
そんなアルヴェルに新たに追加されたのがプラグインハイブリッド=PHEVモデルだ。大出力の駆動用モーターと大容量バッテリーでもって電気自動車=BEVのようにも振る舞えるだけでなく、バッテリー残量に応じて普通のハイブリッド車=HEVとしても走らせることができる。捉えようによっては、充電も航続距離も気にせず振る舞えるBEVという見方もできなくはない。

システム最高出力は225kW(306ps)。大容量リチウムイオンバッテリーを採用し、よりモーターが主体となって走行するシステムを開発。満充電からのモーターのみでの走行距離は73km。実測40km程度の距離なら余裕でBEV走行でカバーできる
PHEVの利はどこにある?
前述の通り、車型的に送迎用途が多いクルマだとみればPHEVはなおさらに相性が良い。都市の中心部を徘徊する、そのぶんをほぼ電池のみでカバーすることも可能だろうし、夜間の余剰電力を利用して充電するならランニングコストの面でも相性がいい。特に運行管理が細密なショーファードリブンであればCO2削減の面でも実益が望めそうだ。
ちなみにアルヴェルPHEVのバッテリー容量は18,.1kWh。満充電からのモーターのみでの走行距離は73kmと発表されている。東京的な尺度であれば、仮に話ほぼ半分の実測40kmと踏まえても、千代田区起点で浦安や吉祥寺方面を往復するくらいの距離はBEV走行でカバーできる計算だ。そして万一電池が空になっても、搭載する2.5リッター4気筒エンジンが駆動と発電のために稼働するHEVモードとなるので、ガソリンを入れさえすれば立ち往生することはない。
逆にエンジンを強制的に稼働させて発電に回すモードを設定すれば、走りながら充電するという使い方もできる。燃費効率はやや下がるものの、家の帰りの1kmくらいをBEV走行で静かに振る舞いたいとか、出先でめいっぱい電気を使いたいとか、そういう目的のために自在に電力を工面することが可能という点も、PHEVの利といえるだろう。もちろん災害時の非常電源的な稼働も考えられており、トヨタの試算では満タン・満充電状態から一般家庭が日常使用する電気を約5.5日ぶん供給できるというから心強い。
電池容量が大きい分、HEVモデルに対しては重くなる、その大半はバッテリーの重量となるわけだが、これが床下に積まれることによって低重心化が図れるのも確かだ。加えて重いものを搭載する前提で床周りの剛性が強化され……と、これらもPHEVモデルのタナボタ的な長所といえるだろう。アルヴェルはそれをしっかり走りに活かすべく、遮音性能だけでなくサスセッティングにも独自のチューニングを加えている。
アルファードに死角はあるか

アルファード エグゼクティブラウンジ(PHEV)のインテイリア。新型は路面の凹凸に応じて、モーターのトルクをリアルタイムで制御することで、車体の上下の縦揺れを抑制。フラットな乗り心地を追求したという
アルファードとヴェルファイアは単に顔違いというだけではなく、足回りの設定などで走りのキャラクターを微妙に違えている。ざっくり言えばコンフォート寄りのアルファードに対して、スポーティに振っているのがヴェルファイアだ。かつてのクラウンになぞらえれば、ロイヤルとアスリート的な区分にあたるだろうか。今回の取材車はアルファードの側だった。
モーターのみでの走行時の最高速は140km/hと日本の法定速度域はカバーしており、急速充電にも対応しているため、扱い次第ではほとんどの時間をBEVのように走らせることも不可能ではない。そのぶん、ノイズ対策もより入念に施されていることもあって、アルファードPHEVの静粛性はHEVにも増して優れている。
また、大きなバッテリーを床下に積むことで自ずと重心位置が低くなったぶん、乗り心地も更に改善されている。低重心化は運動性能にとってもメリットは大きく、駆動モーターを含めると300psオーバーとなる大パワーをきっちり使って山道を走るにもハンドリングに不安はない。総じて、HEVモデルに対して、上質感や走りのゆとりといった利は誰もが実感できるだろう。
但し、同グレードのHEVモデルに対して200kgの重量増がもたらすものはプラス要素だけではない。公称値ではHEVモデルを若干上回るものの、重さがゆえの物理的不利は間違いなく実燃費に現れるだろう。PHEVモデルの効率や効能を最大限に活かすとすれば、充電環境の確保が大前提となることは間違いない。
ちなみにPHEVモデルは最上位グレード「エグゼクティブラウンジ」のみの設定となる。が、一方でアルファードは直近、2列目ベンチシートで8人乗りのベーシックなグレード「X」も追加されるなど、用途や予算に応じたバリエーションを上下に広げ、オーナードリブン側のニーズにも積極的に応えられる存在となっている。

最上級グレード「エグゼクティブラウンジ」のセカンドシートは、プレミアムナッパレザーを採用。前後スライドは最大480mm電動で操作できるほか、伸ばした足を受け止めるオットマン、サイドテーブルなども備わり、極楽快適な移動を体験できる
SPECIFICATIONS
トヨタ アルファード エグゼクティブラウンジ(プラグインハイブリッド)|Toyota Alphard Executive Lounge(PHEV)
ボディサイズ:全長4995×全幅1850×全高1945mm
ホイールベース:3000mm
車両重量:2470kg
駆動方式:4WD(E-Four)
エンジン:直列4気筒
総排気量:2487cc
エンジン最高出力:177PS(130kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:219Nm(22.3kgfm)/3600rpm
トランスミッション:CVT
モーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:182PS(134kW)
フロントモーター最大トルク:270Nm(27.5kgfm)
リアモーター最高出力:54PS(40kW)
リアモーター最大トルク:121Nm(12.3kgfm)
システム最高出力:306PS(225kW)
サスペンション:(前)マクファーソンストラット
サスペンション:(後)ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:(前後)ベンチレーテッドディスク
タイヤ:(前後)225/55R19
燃費:16.7km/L(WLTCモード)
EV走行換算距離:73km(WLTCモード)
価格:1065万円