埼玉の新たな「南北幹線」になるか!? 渋滞激しい「産業道路」で4車線化が進行中! 進捗状況は?【いま気になる道路計画】
埼玉県東部の県中枢部を南北に貫く「産業道路」では、渋滞緩和を図る拡幅整備が進行中だ。完成によるメリットや、現在の進捗状況について解説していこう。
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JR京浜東北線の東側を並行する「産業道路」

産業道路の概要。JR京浜東北線に並行するように南北を貫く道路。
埼玉県の「産業道路」は、荒川を越えた川口市の「本町ロータリー」で国道122号から分岐し、JR川口駅前を経て、JR京浜東北線(東北本線・高崎線)の約1.2kmほど東側を並行して北上する都市計画道路。
県東部の中枢エリアを南北に貫き、大宮を越えてイオンモール上尾の手前で国道17号に合流して終わる。延長約24kmに達する重要なネットワークである。
そんな産業道路は、ほぼ全区間で旧態依然とした2車線道路のままになっている。鉄道交差部や重要交差点こそ立体化されているものの、全般的に慢性的な混雑に悩まされている。
「埼玉県地域防災計画」では「第一次緊急輸送道路」に指定されているため、渋滞対策が急務となっており、複数の工区で4車線化やバイパスの整備事業が行われているところだ。
具体的に、どこの区間で4車線化の予定があり、どこで事業が進行中なのだろうか。まずは川口市の状況を見ていこう。
【川口市の産業道路における4車線化事業】
・本町ロータリー~蕨(わらび)駅前:4車線予定なし
・蕨駅前~川口市・さいたま市境:4車線完成済み
川口市が2021年に策定した「川口市道路網計画」によると、産業道路は基本的に2車線のままで、東部エリア(旧鳩ケ谷市域など)を優先して4車線化する方針となっている。いっぽう、蕨駅前より北側は立派な4車線道路が完成済みだ。しかし、全線を見ても、まとまった4車線区間はここだけと言っていいだろう。
「用地取得完了」もあれば「事業化検討開始」も!

JR京浜東北線東側の南北道路が産業道路。さいたま市内ではほぼ全区間にわたって改良整備対象となっている。
次にさいたま市における産業道路の4車線化事業を見てみよう。
2024年に策定された「さいたま市道路整備計画」では、緑区・浦和区・大宮区の3区にわたり、産業道路のほぼ全区間にわたって4車線改良の対象となっている。
【原山工区】385m 工事中
2024年度に用地取得が完了。いよいよ工事が本格化している。ここが完成すれば、浦和駅方面へ向かう際の混雑緩和が期待される。
【原山2工区】626m 用地取得中
用地取得率は64%。工事は本格化していない。ここが完成すれば、国道463号現道や、北側の越谷浦和バイパスとの交差点周辺において混雑緩和が期待される。
【駒場工区】842.8m 事業化
2025年1月末に悲願の事業化を果たした。これから測量設計や用地取得が進められていく。ここが完成すれば、駒場運動公園・浦和駒場体育館・浦和総合運動場周辺の混雑緩和が期待される。
【領家工区・領家2工区】合計1770m 事業化方針が決定
2024年の新計画で追加された工区。ここが完成すれば、JR北浦和駅から伸びる「さいたま幸手線」領家交差点周辺の混雑緩和が期待される。
【上木崎工区】607m 事業化
2025年6月に悲願の事業化を果たした。これから測量設計や用地取得が進められていく。ここが完成すれば、JR与野駅東側エリアの混雑緩和のほか、与野駅北側で線路をまたぐ「新都心大橋」へのアクセス性も向上することが期待される。
【北袋町】1001m 4車線完成済み
さいたま新都心エリア周辺の開発に伴って、古くから4車線になっている区間。新都心の2本の東西軸をつなぐ役目を果たしている。
さいたま新都心の「南北軸」さらにスムーズに

産業道路「天沼工区」の事業中区間(北側)整備状況(令和7年4月時点)。
以下もさいたま市において整備が進められている工区だが、ここでは、現道の拡幅ではなく別ルートの「バイパス道路」としての計画が進んでいる。
【天沼工区】670m 工事中
2024年度に最後の未取得区間において行政代執行がおこなわれ、用地取得が完了。工事が本格化している。狭い現道を東側にバイパスする新ルート。将来は、首都高速埼玉大宮線 与野JCTから大宮区役所を経由する東西軸「南大通東線」が延伸して、ここで交差して十字路が誕生する予定だ。
【天沼2工区】534m 用地取得中
用地取得率は82%で大詰めを迎えている。ここが完成すれば、JR大宮駅東口から伸びる駅前道路に接続し、駅利用の新たな交通流として活躍することになりそうだ。
【堀の内工区・堀の内2工区】合計1190m 事業化準備中
2025年度に、都市計画決定に向けた事業説明会が実施予定。近いうちに、詳細な計画図が公表される見込み。大宮駅エリアを東西につらぬく「さいたま春日部線」周辺を改良する重要工区だ。さいたま春日部線も順次4車線化が進行中で、エリア全体の慢性的な渋滞緩和が期待される。
なお、さいたま春日部線の南側(堀の内工区)は4車線、北側(堀の内2工区)は2車線で計画されている。
以上のように、埼玉県の産業道路では、川口~浦和~大宮がまるごと4車線化に向けて動いている。ともかく一本筋の通った南北軸に乏しい同エリアにとって、いま一番ホットな道路整備だろう。近い将来に4車線化の「完成ラッシュ」が訪れることに期待したい。
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