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公開日:2025.08.22

なぜ僕らはランクルに惹かれるんだろう。新型「250」とネオクラ「70」、乗って比べて本音で語る700kmの旅【後編】

YCSがランクル70とランクル250を乗り比べ。

ランクル250に乗り込み「Vintage Club by KINTO」でレンタルできる“70(ナナマル)”を乗りに行く出張カーセッション。新型の250に乗った僕たち「YOKOHAMA Car Session」のメンバー3人は、愛知県刈谷市にある「ランクルBASE」に到着して、ついに1995年式の70とご対面。さて、往年の名車70ってどんな乗り心地?

YCSがランクル70とランクル250を乗り比べ。

文=後藤和樹(YOKOHAMA Car Session)

写真=三浦知也

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■YOKOHAMA Car Session(YCS)とは?
2024年と2025年に神奈川県の横浜赤レンガ倉庫にて開催された、「35歳以下のヤングタイマー好きな若者たちと愛車」を集めたカーミーティングイベントのこと。メンバーは後藤和樹さん(愛車:いすゞ ピアッツァXE)、本田浩隆さん(愛車:シトロエン BX19TZi)、甲野大輔さん(愛車:ホンダ S2000)の3名で、このイベント名(YCS)でグループとしても活動中。

YCSのメンバーは左から、後藤和樹さん(愛車:いすゞ ピアッツァXE)、本田浩隆さん(愛車:シトロエン BX19TZi)、甲野大輔さん(愛車:ホンダ S2000)

YCSのメンバーは左から、後藤和樹さん(愛車:いすゞ ピアッツァXE)、本田浩隆さん(愛車:シトロエン BX19TZi)、甲野大輔さん(愛車:ホンダ S2000)


昨今、ネオクラシックカーやクラシックカーといった「ちょっと旧いけど魅力的なクルマ」が注目されている。しかし中古車両価格の高騰や、維持管理の難しさなどを考えると、購入のハードルが高いと感じる人も多いハズ。

そんな中、トヨタ系企業のKINTOが往年の名車をレストアして気軽に楽しめるようにと、旧車レンタカーサービス「Vintage Club by KINTO」をスタートさせたのをご存知だろうか。「所有するのはハードルが高いけど、旧車の世界を体感してみたい」──そんな思いを抱く人にとって、まさに“はじめの一歩”を提供してくれるサービスだ。

前編では新型のランクル250に東京から愛知の「ランクルBASE」まで試乗した。後編では、そんなVintage Club by KINTOが2025年7月よりレンタルを開始した「ランドクルーザー“70(ナナマル)”」に実際に試乗する。

ランクルBASEで70を受け取り、いざ出発! 最初に70に乗ったのは後藤さん。

ランクルBASEで70を受け取り、いざ出発! 最初に70に乗ったのは後藤さん。

レストアされた1995年式のランクル70に試乗!

甲野 後藤は70のファーストインプレッションを大事にしたいから往路はあえて250を運転しなかったワケだけど、70に乗る前と後で印象は変わった?

後藤 俺はクルマ全般において「初期のもの」に興味を抱きやすい傾向があるんだよね。操作の楽しさとか、シンプルな構造で余計な介入もなくて、そのクルマの本当の姿が味わえる気がしてさ。だから、まず何の情報もなく、乗ったこともない状況で目の前に250と70を出されて「どっちが好み?」と聞かれたら、真っ先に70と答える。だから、実際に乗ってみてもその感想は変わらないかな……なんて思ってたけど、全然違ってた(笑)。

最初にランクルBASEのスタッフさんに「70は乗りにくいですよ。5MTだし、真っ直ぐ走らないし、止まらないし(笑)」なんて言われて、むしろワクワクしてたけど、本当にその通りだったんだよね。

ランクルBASEで70を借りた後、すぐに高速道路を走ることに。独特の走り癖に興奮するYCSの二人。ちなみにこの70はホイール、タイヤ、リーフスプリング、シャックル、ショックアブソーバ、シート、ステアリングがカスタム済み。

ランクルBASEで70を借りた後、すぐに高速道路を走ることに。独特の走り癖に興奮するYCSの二人。ちなみにこの70はホイール、タイヤ、リーフスプリング、シャックル、ショックアブソーバ、シート、ステアリングがカスタム済み。

本田 トラックとかバスを運転しているみたいな大味な感覚だよね。

後藤 そうそう、ステアリングも路面状況を全部伝えてくるし、ブレーキも弱い。あんなに重いクルマをあんなに小さいキャリパーで止めてたなんてね。

甲野 車重2200kgだっけ? たしかにその割にはブレーキが小さかった(笑)。

本田 前輪なんて普通にベンチレーテッドディスクかと思ったら、シングルディスクなんだもん。マジか! って思った。

甲野 後藤が70で走り始めた時は、俺が250を運転してたけど、こっちは片手でハンドル持ってても真っ直ぐ走るし、合流も踏んだら楽に加速するけど、そっちは大変そうだったな。

後藤 1速落として踏んでも加速しないから、踏むたびに「頑張れー!」って応援しながら走ってたもん(笑)。

本田 4.2LディーゼルNAで、車格的には十分大きなエンジンだけど、パワーの伝え方が一昔前のSUVみたいな感覚が伝わってきた。

後藤 ホントに曲がらないし、止まらないし、路面のギャップを拾ったらそっちにクルマが向くしで大変だった。でもクルマをしっかりと走らせるって意味ではすごく面白かった。

知多半島道路に向かって、名古屋高速をのんびり南下。ただし悠々と走っているのは250(笑)。

知多半島道路に向かって、名古屋高速をのんびり南下。ただし悠々と走っているのは250(笑)。

本田 ランクル70に乗るってのは、機械を操縦するってことなんだよね。運転という二文字では片付けられない。

後藤 自分がこのクルマを操ってるんだぜ! っていう感覚を楽しみたいなら、間違いなく70だね。本格オフローダーだから、本当に荒れた道を走るなら、突然トルクがモリッと出たら逆に危険だと思うし、ギュッてブレーキ効いたら危険だと思うから、これで正しいんだろうね。

甲野 雪道とかでも急ブレーキ踏んだらスリップするから、じわっと踏みましょう。みたいなのがあるじゃん? 70は自ずとそうなるように出来てるんだろうね。

後藤 やっぱ70の本質っていうのはそういう所にあって、キー捻って、エンジンの鼓動感じて、思い描いたラインでクルマを曲げていく、みたいな所作を楽しめる人に合っているんだろうな。

70は対話できるようになると、そのクセが病みつきになる?

甲野 俺は250に乗ってる時間が長かったから、終盤になって二人から「お前、楽ばっかしてんじゃねぇ!」って言われた(笑)。

本田 ぜってぇ運転させてやるってな!

甲野 まあそれで70に運転チェンジしたんだけど、正直、最初はしんどかった。轍にハンドルを取られるってのをスゴイ感じた。ただ、乗った後は「ふ~、楽しかった」みたいな気持ち良い疲労感があった。

まあ、ひとつ言えるのはあの個体は玄人向けって感じだな(笑)。だからこそレンタルで長時間借りられるってのはいいよね。あのクルマの良さは5~10分乗ったくらいじゃわからない。それから復刻した70とも乗り比べしたくなった。

本田 そうだね。普通なら「乗りづらい」って思ったクルマはもう乗らないけど、70はなんか病みつきになるんだよね。やたら癖のあるラーメンみたいに「うわ、こんなの二度と食わねぇ!」って思った一週間後に、「また食いてぇな」ってなる感覚。

後藤 70は自動車界の富山ブラックだな(笑)。

一般道をトコトコ走るのはとても楽しい。それにしてもさすが愛知県。豊田市から少し離れた半田市でも、旧式の70と街中で3~4台ほどすれ違った。

一般道をトコトコ走るのはとても楽しい。それにしてもさすが愛知県。豊田市から少し離れた半田市でも、旧式の70と街中で3~4台ほどすれ違った。

トヨタ ランドクルーザー“70” ZX(1995)|Toyota Land Cruiser“70” ZX

トヨタ ランドクルーザー“70” ZX(1995)|Toyota Land Cruiser“70” ZX

甲野 でも操縦が難しいクルマと対話が成功して、乗れるようになってきた時の面白さは何事にも代えられないよな。

本田 試乗後にランクルBASEに戻ったら、新車の70に乗り続けて60万km走ったっていうオーナーさんが遊びに来てて、その人いわく、「70は生活の道具として秀でたもの。乗り手は選ぶが、ハマった人は虜になる」って言ってたよね。代えが効かないとも言ってた。

甲野 250はすごく良く出来たクルマだけど、道具としての相棒感みたいなものは70の方があったね。

後藤 他にも70のオーナーさん達と話したけど、皆さんそれぞれに使い方の違いやストーリーがあって、日常の足になったり、キャンプやレジャーに行ったりしていて、とにかく「好き」だからこのクルマに乗ってる、というナナマル愛を感じたな。そりゃ世界中で乗られてるよなって。

甲野 ランクルを通して仲間が増えていくって話も良かった。これって個性やストーリーがあるクルマじゃないとできないよね。

本田 ランクルでしか味わえない魅力ってのがあるんだよな。このクルマならどこにでも行ける。自分の行動範囲を広げてくれるクルマだと思う。まさに「LAND CRUISER」だよ。

ランクル70と250はどっちがいい? YOKOHAMA Car Sessionの総評

YCSがランクル70とランクル250を乗り比べ。

YCSがランクル70とランクル250を乗り比べ。

後藤 もし自分が家庭持ちで、みんなでキャンプに出掛けるのなら間違いなく250を選択するだろう。真っ直ぐ走らせるためのステアリング操作や、ギヤを労る走らせ方など邪念にすぎない……。

しかし、趣味に偏りのあるクルマファン(笑)としては、運転という行為そのものも楽しみたい。70はクルマとの対話が必要で、これができると「もっと走らせたい。乗っていたい」と思わせる不思議な魅力がある。

どちらが良い、悪いというのではなく、それぞれの持つランクルのストーリーが楽しめれば良い。そういうクルマなのだと、改めて思った。

70の後で250に乗った後藤さん。快適すぎてベタ褒めしてました。

70の後で250に乗った後藤さん。快適すぎてベタ褒めしてました。

本田 ランクル250は長距離走らせても全くの疲れ知らずで、楽しく走れて癒しも与えてくれる、まさに「ぼくが考えた最強の自動車」であると感じた。

反対に、ランクル70からソリッドに伝わってくる全ての感覚は、「機械を操縦している」と再認識させられ、現代車に慣れ親しんだ身に鞭が入るようであった。しかし、それをうまく乗りこなせた時に感じる喜びは何にも代え難いと実感した。

70のカスタムされたMOMOのステアリングが渋いと喜ぶ本田さん。

70のカスタムされたMOMOのステアリングが渋いと喜ぶ本田さん。

甲野 どちらも同じ「ランドクルーザー」ではあるが、250と70の魅力は全く別モノ。250はとにかく完璧な優等生。どんなステージでも卒なくこなせて、このクルマがあれば人生がもっとアクティブになると思わせてくれる。

対して、70は遥かに硬派な世界。現代のクルマと比べるとあらゆる面で乗り手を選ぶ難しさはあるが、それゆえにクルマと対話する面白さがある。

自分がクルマに何を求めるのか。それ次第でどちらに惹かれるかは変わるだろう。長い歴史を持つランクルの世界の一端を、是非皆さんにも体験して欲しい。

250に乗り、もっと速度を上げたそうな表情の甲野さん。ちゃんと70が着いてきているか確認中。

250に乗り、もっと速度を上げたそうな表情の甲野さん。ちゃんと70が着いてきているか確認中。

SPECIFICATIONS
トヨタ ランドクルーザー“70” ZX|Toyota Land Cruiser“70” ZX(1995年式)
ボディサイズ:全長4805×全幅1790×全高2040mm
車両重量:2200kg
駆動方式:4WD
総排気量:4163cc
エンジン:直列6気筒SOHC
最高出力:99kw(135ps)/4000rpm
トランスミッション:5段MT

INFORMATION
ランドクルーザー“70” ZX(1995年式)レンタル
場所:ランクルBASE(愛知県刈谷市一里山町金山100)
レンタルサービス実施期間:2025年9月30日(火)まで
料金:3万円~/8時間、3万5000円/24時間、以降1日につき3万円 ※最長5日間まで
https://vintage.kinto-jp.com/

そうそう、ランクル70をお借りした際のキーにはVintage Club by KINTOのラバーキーホルダーが付いていた。とても楽しい体験をありがとう。

そうそう、ランクル70をお借りした際のキーにはVintage Club by KINTOのラバーキーホルダーが付いていた。とても楽しい体験をありがとう。

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応募はこちら!(8月31日まで)
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