『イタリア発 大矢アキオ ロレンツォの今日もクルマでアンディアーモ!』第60回【Movie】━━“アニメ・ネイティヴ”2世がカーカルチャーを支え始めた<フォーリコンコルソ2025レポート>
日本のアニメがヨーロッパのクルマ文化に与えた影響は想像以上に大きい! イタリア・シエナ在住のコラムニスト、大矢アキオ ロレンツォの連載コラム第60回は、近年イタリアで注目を集める噂の自動車イベント「フォーリコンコルソ」の模様をお届けします。
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コモ湖畔・噂の新興イベント
「フォーリコンコルソ」というイベントが近年、イタリアの自動車ファンの間で知名度を上げている。Fuoriconcorsoとはイタリア語で「コンクールの外」を意味する。本欄ですでに紹介した自動車エレガンス・コンクール「コンコルソ・ヴィラ・デステ」と同じ5月の週末に、場所も同じ北部コモ湖畔で開催されている。
ただし、オーガナイズはまったく別である。ミラノの高級紳士服ブランド「ラルスミアーニ」の3代目社主グリエルモ・ミアーニ氏によるものだ。ちなみに彼は自動車メーカーとのパイプが太い。一例として、2024年のミラノ・デザインウィークでは、発表から間もない「アルファ・ロメオ・ジュニア」をモンテナポレオーネ通りのブティックの、それもウィンドウ内にサプライズ展示して話題となった。

湖畔に設けられた4会場のひとつ、ヴィッラ・グルメッロで。1950〜70年代のレーシングモデルが並ぶ一角。

オーガナイザーのグリエルモ・ミアーニ氏。展示車の「ビッザリーニP538」と。
フォーリコンコルソが2019年の第1回から一貫しているのは、ヴィラ・デステのようなコンテストではなく、毎回特集をじっくり組むかたちであることだ。5月24-25日に開催された2025年版のテーマは「ヴェロチッシモ(超高速)」。湖畔に建つ4つのヴィッラ(館)とその庭園には、新旧イタリアのフォーミュラカー、レーシングカーそしてラリーカーが散りばめられた。

エントランスで最初に来場者を迎えてくれたのは歴代イタリアン・グランプリカー。ダルコ・ヴィールさんは27歳。普段はトリノ自動車博物館の修復部門に勤務しているが、毎年フォーリコンコルソで車両解説員を務めている。

メーカー博物館が所蔵する1989年「フェラーリF40LM」は、フェラーリのフランス法人の求めに応じて製作されたル・マンカーである。

2023年に人気レーシング・カテゴリーであるGT3用に企画されたフェラーリ「296 GT3」。

FIA GT選手権のために製作された2004年「マセラティMC12 GTI」。6リッターV12気筒575psエンジンの轟音を響かせ、拍手喝采を浴びた。

ドイツのコンストラクター「アポロ」が製作するミドエンジン・スーパーカー「IE(インテーザ・エモツィオーネ)」。
またコンコルソ・ヴィラ・デステがBMWグループのオーガナイズであるのに対して、こちらはブランド色がないことから、年を追ってブランドが積極参加するようになったのもフォーリコンコルソの特徴だ。2025年、その数は10に及んだ。
とくに力が入っていたのはメインパートナーのひとつを務めた「アルファ・ロメオ」で、アレーゼのミュージアム収蔵車両と個人コレクション合わせて15台を展示。ブランドのイメージリーダーである「33ストラダーレ」を題材にした豪華本の発表会も行った。

「アルファ・ロメオ33ストラダーレ」。
フォーリコンコルソは、新作発表の場としても注目を浴びつつある。「ボーフェンジーペン」は旧アルピナの創業家が立ち上げた新ブランドで、今回第一作を会場で世界初公開した。デザインはトリノの名門カロッツェリア「ザガート」による。アンドレアス・ボーフェンジーペンCEOによる熱い語りは、動画をご覧いただこう。

“ポスト・アルピナ”の第一作「ボーフェンジーペン・ザガート」を世界初公開したアンドレアス・ボーフェンジーペンCEO。

往年のアルファ・ロメオ・ジュリアGT風レトロモッドを手がける「トーテム」。彼らは「GTスーパー・ペルセポネ(左)」と、バッテリーEV版の「GTエレクトリック・ガイア(右)」を公開した。
きっかけは日本のベル・エポック
その創始を1929年にさかのぼり、伝統の香り漂うコンコルソ・ヴィラ・デステと異なるのは、ずばり若者の姿が目立つことだ。入場料は18〜25歳の場合一般の半額だが、それでも90ユーロ(1万5千円)である。若者たちはイベントとクルマに対してそれなりの知識と期待を抱いてやって来ていることは明らかだ。

「ケーニグセグ」の歴代モデルが並ぶコーナーで。

“ランチア女子”も発見。
彼らと話し始めると、彼らは大抵『頭文字D』や『湾岸ミッドナイト』を熱く語る。ヨーロッパのスーパースポーツやハイパーカーを熱心にカメラに収める彼らだが、クルマへの関心のきっかけは日本のコミック、それも連載スタートを日本のベル・エポック(良き時代)ともいえる1990年代の作品であるところが痛快である。
スイス・ルガーノから同い年のアレッサンドロさんとともに来場したダヴィデさんは、近日日本を訪れるという。アニメに登場するようなクーペやスペシャリティーカーは少数派で、「トヨタ・ジャパンタクシー」と軽自動車に埋め尽くされた今日の東京が彼の目にどう映るか、興味深いところだ。
ベルガモから来たロベルトさんの話も面白かった。母親は日本のアニメ好きで、とくに「スタジオジブリ」の熱心なファンという。そうした親の子どもたち、つまり日本アニメ・ネイティヴ2世が、自動車趣味を支え始めているのだ。将来彼らが支持するのは、どのようなクルマになるのか。なかには自動車づくりに携わる人間も現れるだろうと思うと、今から楽しみではないか。

北部ベルガモから来たシモーネさん21歳(左)とロベルトさん 24歳(右)。車両は1969年「ランチア・フルヴィア・スパイダー・スペチアーレHF」。

ダヴィデさん(左)&アレッサンドロさん(右)。ダヴィデさんは近日、日本を休暇で訪れる予定があることを嬉しそうに話してくれた。

「MVアグスタ」がディスプレイされた第4会場「ヴィッラ・フローリ」で。