日本の「機械式駐車場」は狭すぎる! なぜ私は愛車のBMWを手放すことになったのか、その理由。
なぜマンションの機械式駐車場はこんなにも停めにくいのだろうか。これは、自動車ジャーナリスト山崎 明氏が引っ越し先の駐車場問題を解決すべく、現在の愛車BMW1シリーズから次なる愛車を求めて苦悩の日々を綴った、ひとつのノンフィクションだ。
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引っ越ししても1シリーズなら問題ないハズだった?
2025年の夏、住む場所を替えることとなった。現在住んでいる家から徒歩4分くらいの、より駅近のマンションに住み替えることにしたのだ。二人の子供たちが結婚して独立した世帯を持ち、今の家が夫婦二人には大きすぎることと、3階建てで冬はかなり冷え込むため、今年から「高齢者」となる我々夫婦にとってこれから住みづらくなるだろうということで、駅近のマンションを探し始めていたのだが、理想的な一軒が売りに出たので購入した次第である。
マンションは購入したものの、現在の自宅は手放さなかった。自宅には2台分のシャッター付き車庫があり、その車庫を手放したくなかったからだ。趣味車のマツダ・ロードスターの保管のほか、軽整備、洗車など、マンション駐車場ではできないことができるクルマ好きには貴重な空間だからである。

筆者のガレージに収まるマツダ ロードスター(ND型)とBMW 118d(F20型)の2台
家そのものは息子夫婦が住んで管理してもらい、1階の車庫のみ私が引き続き使うというかたちである。ロードスターは頻繁に乗るわけではないし、雨の日は基本的に乗らないから、徒歩4分の距離であっても問題ない。
問題なのは日常用のクルマの方で、徒歩4分というのは結構距離があるのだ。やはり買い物などに使う足としてのクルマは住む場所のすぐ近くに置いておきたい。
それでマンションの駐車場を借りることにしたのだ。マンションの駐車場には平置きと機械式があり、平置きと機械式の背の高い車を駐めることのできる部分は埋まっていたが、全高1550mm以下の機械式の区画は複数の空きがあった。私のBMW 118d(F20)は1550mm以下なので問題はなく、全幅も1850mmまでOKなので、1765mmのF20は余裕で入るはずである。
両側60mmしか余裕がなかったマンションの機械式駐車場
契約を済ませ、初めて駐めた時に重大な問題を知ることになる。私にとって機械式駐車場に駐めるのは悪夢であることがわかった。パレットに入る前に完全にクルマをまっすぐにしないと入れられないという事実を初めて知ったのである(マンション居住の方には当たり前の話なのだろうが)。
駐車スペース前には平置き駐車場があるためスペースは狭く、パレットに入れる前にまっすぐにするには何度か切り返さないといけないのだ。私のクルマより全幅の広いクルマを駐めている住人もいるのだが、今までの45年に及ぶカーライフで自分の車庫に入れるのに苦労した経験がない私としては、かなりのストレスなのである。

となりの5ナンバー車と比べると余裕は少ない。
またF20のMスポーツはトレッドもタイヤサイズもリアの方が大きく、リアタイヤは車検ギリギリOKな感じで外に張り出している。実際、トレッドが1530mmでタイヤサイズが245なので、計算上は1775mmとなって全幅の1765mmより10mm広くなる。
※トレッドは左右のタイヤの中心の間の数値。タイヤはトレッドの外側からタイヤ幅の半分張り出していることになるので、タイヤ両サイド間の距離はトレッド値+タイヤ幅1本分となる。
パレットの全幅は1900mmあるので、計算上は両側60mmほど余裕があることになり、ネット上で検索するとより厳しい状況で駐車している人も多いようだ。しかしかなりの頻度で使う実用車の出し入れに毎回すごく気を遣うのは御免、というのが私の正直な気持ちである。「入れられる」と「楽に入れられる」は大違いである。

フロントよりリアのクリアランスが厳しいため、完全にまっすぐな状態じゃないとパレットに入れられない。
次の愛車は5ナンバーや軽自動車も候補?
過去の記事に書いたように、このF20は私好みに手が入っており、とても気に入っているのだが、これはあくまで日常用のクルマなのでより小さいクルマにすべきと判断するに至った。
もともと、リアシートに人を乗せる機会がほとんどなくなったので次はコンパクトなBセグメントにしようと考えていたので、その時期が早まっただけとも言える。
幸い、F20を手放そうかと友人・知人に相談したところ、すぐに買い手はみつかった。
実は小型化する際の買い換え候補として以前から考えていたクルマがある。ルノー・ルーテシアのエスプリ・アルピーヌ仕様である。ルーテシアのE-TECHハイブリッドは興味深い仕組みで、それにアルピーヌ風味が加わった仕様は非常に魅力的である。
ヨーロッパでは2年前に発売になっており、日本でもアルカナとキャプチャーにはエスプリ・アルピーヌ仕様が導入されているが、ルーテシアはまだマイナーチェンジ前のモデルを売っている状況で、現在日本で買うことはできない。

ルノー ルーテシア エスプリ・アルピーヌ|Renault Clio Esprit Alpine 写真=ルノー
プジョー208もアウディA1も魅力的だが、欧州のBセグメント車はどれも3ナンバーサイズとなっており、全長が短くなることを除いて買い換える意味が薄れてしまう。
Bセグメントより小さいAセグメントでは、新車で購入できる輸入車はフィアット500の在庫車(生産は終了している)のみだ。

アウディ A1|Audi A1 写真=アウディ

フィアット 500|Fiat 500 写真=ステランティス
不思議なもので、クルマというものは数センチの差であっても体感的な大きさは結構異なるものだ。F20の前に乗っていたのはF30型のアルピナB3で、F20より幅で35mm、長さで305mm大きいだけなのだが、F20に買い換えた時にはかなりコンパクトに感じ、駐車も楽に感じたものだ。
日本には「5ナンバー」という全幅を1700mmに制限する独自の規格があり、この5ナンバーのベーシックカーであれば全長は4000mm前後のコンパクトなものが多い。F20より全幅で70mm、全長で300mm小さくなれば体感的にはかなり小さく感じるだろう。
さらに割り切って考えれば全幅1480mm以下、全長3400mm以下の軽という選択肢もある。さあどれにするか、これからじっくり検討することにしよう。
(次回に続く)
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