スバル車×キャンプ好きが集う「Subaru CAMP」はどんなイベント? 幻の希少車「ブランビー」にも遭遇!
スバルオーナーが集うキャンプイベント「Subaru CAMP(スバルキャンプ)」が群馬県・無印良品 カンパーニャ嬬恋キャンプ場で開催された。参加条件は「スバルのクルマでキャンプしている人」だけ。そんな、なんとも心地良さそうなイベントを覗いてみよう。
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200人規模まで成長したキャンプイベント
軽井沢から鬼押ハイウェイを経由してのドライブで約1時間、草津にも近い群馬県吾妻郡のカンパーニャ嬬恋キャンプ場は、無印良品が運営する施設。風光明媚なロケーションと充実したサービスで、年々キャンプ愛好家からの人気が高まっている。
5月24日~25日にかけ、この美しいキャンプサイトに新旧さまざまなスバル車が集まった。その数はなんと140台と200人。思わず「懐かしい」とつぶやいてしまうような“昭和のスバル”から最新モデル、さらには日本では発売されていないはずの輸出専用モデルまで、実にバラエティ豊かだ。
浅間山、四阿山、草津白根山に三方を囲まれたバラギ湖畔に位置するカンパーニャ嬬恋キャンプ場。この日はあいにくの天候だったけれど、天気に恵まれれば湖を見晴らす丘に広がるサイトには、爽やかな風が吹く。
これだけの規模であるからには、スバルのオフィシャルのイベントなのかと思えば、そうではないところがおもしろい。会場を案内してくださったスバルの須崎兼則さんは、「僕はあくまで個人としてお手伝いをしているだけで、スバルの主催というわけではないんですよ」とおっしゃる。
スバルにおける須崎さんの肩書は、カスタマーファースト推進本部アフターセールス企画部主査というもの。「ざっくり言うと、スバルを買っていただいたお客さまに、よりこのブランドを愛していただけるような取り組みをすることが僕の仕事です」とのことだ。
では、一体どのようにこれほど規模の大きいイベントが成り立っているのか。須崎さんにうかがうと、こんな風に説明してくださった。
まだコロナ禍だった2022年、須崎さんは大阪オートメッセでYASUさんというひとりのスバル愛好家と知り合う。YASUさんはスバルのファンを集めたキャンプイベントを主催していて、当初は3台から始まったものが、30台ほどの規模にまで拡大したタイミングだった。
YASUさんと意気投合した須崎さんは、キャンプイベントにスバルのコンセプトカーを展示したり、知り合いの部品メーカーに協賛を呼びかけるなど、個人として応援をするようになった。
当初はYASUさんの地元である関西で行われていたキャンプイベントが、やがて関東にも進出する。「Subaru CAMP」と銘打たれたこのイベントはさらに成長を続け、2025年はカンパーニャ嬬恋キャンプ場の協力を得て、200人もの人を集める催しとなった。
あくまで手作りのイベントであるけれど、須崎さんやYASUさんの働きかけによって、スバルや関連するメーカーの協賛も得られるようになっている。抽選会では協賛企業がたくさんの景品を提供している。左から主催者のYASUさん、その右隣でマイクを握っているのが須崎さん。
須崎さんによれば、「お土産を持ち帰っていただく抽選会や焚き火など、最低限の企画は用意していますが、基本的にはスバルが好きな人が集まる場を作っているだけです」とのことだ。
実際、会場を歩くと、テントの横に停めたクルマの周囲に自然と人の輪ができて情報交換会が始まったり、オーナーの許可を得て珍しいモデルの写真を撮影したり、みなさんリラックスした様子でこの集まりを楽しんでいる。
参加者の何人かに話をうかがうと、かっちりとしたスケジュールがないから好きなタイミングで飲み食いしたりぶらぶら歩き回れるのがいいという声や、結局みんなスバルファンなので初対面でも話がしやすいという声が聞かれた。
また、これまでの「Subaru CAMP」をきっかけに知り合い、一緒にツーリングに行くようなグループも生まれているという。
メーカー発ではなくファンが自発的に開催して輪が広がっていく──。理想的なファンミーティングであるように思えた。
Subaru CAMP 2025 in 無印良品カンパーニャ嬬恋キャンプ 会場の様子
日本に1台だけ? 須崎さんの愛車は「スバル・ブランビー」
須崎さんの熱心な話に耳を傾けながらも、ついついその愛車に目が行ってしまう。須崎さんがお乗りのクルマは、1985年型のスバル・ブランビー。そんなクルマ、聞いたことがないと思われた方も多いと思うけれど、それも当然で、ニュージーランドで生産されていた激レア車なのだ。
須崎さんと愛車のスバル・ブランビー。
当時、スバルはレオーネをベースにしたピックアップトラックを日本で生産、北米市場に向けて輸出していた。ご存知の方も多いように、アメリカ市場というのは乗用車よりもはるかに多くのピックアップトラックが販売される、トラック王国だ。
スバルのピックアップトラックはブラットと呼ばれており、これをニュージーランドでノックダウン生産したものがブランビーなのだ。ブラットが左ハンドルだったの対して、ニュージーランド生まれのブランビーは右ハンドルという違いがある。
「僕はあくまでスバルの社員なので、新車を売れと怒られるんですよ(笑)。でも、もともと性格的に人が乗っていないクルマに乗りたいタイプで、旧車を探していたんですね。
スバルの旧車のイベントにも顔を出したりして、するとそこでブラットはレオーネと共通の部品が多くて、しかも右ハンドルのブランビーだったらほとんど同じだという情報を聞いたんです。そうこうするうちに、旧車仲間のグループLINEで“黄色いブランビーが出ているよ”という書き込みを見て、お店に駆けつけました」
1985年型スバル・ブランビーは、排気量1781ccの水平対向OHVエンジンを搭載。4段MTと組み合わされる。2024年3月に須崎さんのもとにやって来た。
実は、クルマ好きで知られる某有名タレントも、この個体に興味を持ってショップにコンタクトを取っていたという。須崎さんの初動が少し遅かったら……、あるいはこのブランビーは別の人生を歩んでいたかもしれない。
実際にドライブした印象は、「スポーティで運転がしやすいですよ」とのこと。
「ただ、日本で言うスポーティとはちょっと違って、アクティビティで活躍するスポーティさです。僕は小さい頃からMTBをやっていた関係で、ピックアップトラックも愛用していました。そういう意味で、自分のライフスタイルにも合っていると思います」
ただし、もしかすると日本に1台しか存在しないかもしれない希少車で、しかもイエローという目立つボディカラー。どこを走っても、どこに停めても、須崎さんだということがわかってしまう。そう話を振ると、須崎さんは「だから絶対に悪いことはできませんね」と明るく笑った。
FRP製シェルを載せているのでラゲッジスペースは広々している。イベント時、須崎さんはこのスペースで車中泊を楽しんでいた。
Subaru CAMPを支えるスバリストの存在
世界を見渡してもスバルとポルシェだけが量産している水平対向エンジンや、この水平対向エンジンを軸とした左右対称の4輪駆動システム、最近ではアイサイトなど、スバルは個性的な技術を特徴とする自動車メーカーだ。
こうした技術に惹きつけられた“スバリスト”や“スバラー”と呼ばれる熱心なスバルファンが存在することは、このブランドにとって大きな財産だと思われる。
記念すべき第1回目のミーティングは、スバルXVのオーナーを対象にしたもので、3台が集ったという。わずか数年で140台と200人が集まる規模のイベントに成長した。
自動車の白物家電化やコモディティ化が指摘されるいま、「Subaru CAMP」を取材してみると、スバルには独自の技術とデザインが根づき、それを理解する素晴らしいファンがいることを肌で感じた。
電気自動車の時代になると、自動車メーカー各社が個性を表現することが難しくなるという意見もある。というのも、モーターはエンジンほどの“味わい”の違いが生まれにくいからだ。
仮にそうなった場合、大切なのは自社のファンやサポーターの存在ではないだろうか。
メーカーが音頭を取って人を集めるのではなく、スバルを愛する人が主導して運営する「Subaru CAMP」は、ファンやサポーターを育てたり、獲得するためのヒントとなるようなイベントだった。
Subaru CAMP 2025 in 無印良品カンパーニャ嬬恋キャンプ 会場の様子
Subaru CAMP 2025 in 無印良品カンパーニャ嬬恋キャンプ 会場の様子




