なぜ僕たちはメルセデス・ベンツに憧れるんだろう? エントリーグレードの「GLC」とラグジュアリーな「マイバッハ」、2つのSUVに乗って瀬イオナが考えた。
いつかは愛車にしたい憧れのクルマ、そのひとつがメルセデス・ベンツだ。なかでもSUVは20代の私にとって、いまもっとも気になる存在。でも、どうしてメルセデスに惹かれちゃうんだろう。新米記者の瀬(はやせ)イオナが、最新の2モデルに乗ってその理由を考えた。
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いつかは乗りたいメルセデス
コロナ禍以降、アウトドアの人気が高まったり、災害への備えとして車中泊が注目されたりと、「クルマの中でも快適に過ごせるSUV」が、ここ数年でぐっと身近な存在になった。そんな背景もあってか、今や高級車メーカーたちもこぞってSUVを出すようになったのが“令和らしさ”かもしれない。
SUVブームによって、若者からも熱い眼差しが向いている。私もそのうちの一人だ。SNSや街中で見かけると、スタイリッシュでイケてる姿は一瞬にして映えるし、オーナーもどこか余裕があってきちんと感が漂う。
メルセデス・ベンツは、20代の私にとって憧れのメーカーのひとつである。そんな憧れのメルセデス・ベンツから、2種類のSUVに試乗できる機会をいただいた。
ラグジュアリーさと実用性をちょうどよく両立し、メルセデスで一番人気の「GLC 220 d 4MATIC」と、圧倒的な存在感と贅沢さを誇る「マイバッハ EQS680 SUV」。どちらも、20代の私には高嶺の花だ。
ところがGLCから、エントリーグレードの「Core」が今回登場し、所有できる現実がちょっぴり見えてきた。ということで体験してみよう。
GLCの人気の秘密が分かった!

GLCのエントリーグレードとして新たに誕生した「Core」。さっそく試乗してきました
まず「GLC 220 d 4MATIC」に新しい追加された「Core」というグレード。エントリーグレードとして位置付けられ、さらに幅広い層に届ける狙いだろう。
シートヒーターが非装備だったり、ボディカラーのバリエーションが3色に限られていたりと、仕様面では割り切った部分もあるが、乗ってみて、チープさを感じる瞬間は一度もなかった。
というより、ボディの見た目は変わらないので、このモデルのスポーティさも相まって、誰もがエントリーグレードとは思わないはず。オプションのAMGラインパッケージを選べば、シートの種類を2パターンから選ぶこともでき、エントリーグレードながら自分好みに仕立てられる嬉しいポイントもある。

スポーティ&スタイリッシュなGLCのインテリア。程よいサイズ感に加え、見切りの良さも魅力のひとつ
運転してみると、ディーゼルエンジンだったこともあり車内に伝わる音や振動を覚悟していたが、そこはさすがメルセデス。驚くほど静かだった。振動も少なく、運転していて疲れないというのはこういうことかと納得した。
アクセルを踏んでスッと前に出る加速フィーリングも軽快で、ディーゼルは重たいという先入観が覆された。燃費もWLTCモードで18.1km/Lと優秀で経済的。何よりGLCのボディサイズが運転していて本当にちょうどいい。大きすぎず小さすぎず、日本の道路でも扱いやすい絶妙なサイズ感で売れ筋モデルなのがわかる。

富士山をバックにパチリ。GLCとなら遠出のドライブもたのしそうだな〜
そして気になるのは、若手でも買えるのか、という現実的な話。Coreグレードの価格は819万円。オプションをつけずにざっくり試算すると、残価で4~5割を設定して、残りの約400万円を4年で分割すれば、月々の支払いはおおよそ8万3000円ほど。
もちろん頭金をいくら入れるかで変わってくるけれど、20代の私たちにとっては「がんばれば、もしかして……?」というギリギリのライン。一人暮らしや都心生活と両立させるのは難しいかもしれない。でも、現実味がまったくないわけじゃない。その事実が、なんだか嬉しかった。
マイバッハ EQSはすべての感覚でラグジュアリー

続いて試乗したのは、メルセデスが究極のラグジュアリーと最先端テクノロジーの融合を追い求めたと謳う、メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV。この風格、ヤバすぎです!
次に帝王感溢れる「マイバッハ EQS680 SUV」を体験。これはもう、別格だった。ドアを閉めた瞬間の静けさや、EVだから(当然だけど)アクセルを踏んでもほとんど音がしない。滑るように路面を移動する感覚も上質だ。
インパネには巨大なモニターが助手席まで広がっていて近未来感増し増し。全長5m、幅2m超えの迫力だけど、最小回転半径がわずか5.1m。スムーズにスッと切り返せてしまう取り回しの良さに、何度もウソでしょ……とつぶやいてしまった。

マイバッハ EQS680 SUVは全長5135×全幅2035×全高1725mmという大型サイズなのにとっても運転がしやすい。後輪操舵システムのおかげで最小回転半径はわずか5.1mなんだって! すごっ!

ゴージャスなマイバッハ EQS 680 SUVのインテリア

なんだこの穴は? と思って調べてみたら飲み物を冷やすためのクーリングボックスなんだって。私もいつかキンキンに冷えたシャンパンを飲んでみたい!
そして後席。“木目調”じゃない本物の木材を使ったウッドパネルや、やわらかな照明に包まれた空間は、もうクルマというよりラウンジだった。シートの間には冷蔵庫(正確にはクーリングボックスって言うんだって)があって、初めて体験した私は、きちんと冷えていることにまずびっくり。
さらに、シートにはふかふかのクッションまで備わっている。まるで飛行機のファーストクラスの座席のようで、ただ座っているだけで心がほどけていく感覚に包まれた。大きなパノラマサンルーフも印象的で、頭上が空とつながっているような開放感。視覚も触覚も、すべての感覚でラグジュアリーを味わえた。

マイバッハ EQS 680 SUVの後席は、まさにファーストクラス

これがラグジュアリーというものなんですね。とろけるううう〜
私たちがメルセデス・ベンツに惹かれる理由
帰り道、ふと考えた。どうして私たちは、メルセデス・ベンツに惹かれるんだろう?と。値段? 性能? ステータス? いろいろあるけれど、私の出した答えは“余裕”だった。
どんな道でも、どんな瞬間でも、慌てず、静かに、力強く。そんな余裕を纏った存在が、メルセデスのSUVにはある。ああ成りたい、と思わせてくれる存在。今の自分にはまだ持てないものを、代わりに見せてくれているのかもしれない。
今の自分にとっての“相棒”は三菱初代パジェロミニ。背伸びも見栄もなく、等身大で付き合える大切な存在で愛しい。どこへでも行けるし、狭い路地もスイスイ。発売から30年経っていて多少古いけれど、可愛くてちょっとクセのある感じが、今の自分っぽくて気に入ってる。
でも今回の試乗でわかった。パジェロミニは今の自分だけど、メルセデス・ベンツのSUVはきっとなりたい自分なのかもしれない。
試乗を通して感じたのは、メルセデス・ベンツのクルマは単なる高級車という以上に、人生のステージが上がった先にあるクルマだということ。だからこそ、20代の私たちが惹かれるのも不思議じゃない。まだ手が届かないからこそ、乗ってみたいし憧れる。そして、そう思わせてくれることこそが、メルセデス・ベンツの本当の魅力なのかもしれない。

メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV|Mercedes-Maybach EQS 680 SUV
SPECIFICATIONS
メルセデス・ベンツ GLC 220d 4マチック コア|Mercedes-Benz GLC 220d 4MATIC Core
ボディサイズ:全長4725×全幅1890×全高1640mm
ホイールベース:2890mm
車両重量:2000kg
駆動方式:4WD
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1992cc
エンジン最高出力:197PS(145kW)/3600rpm
エンジン最大トルク:440Nm/1800-2800rpm
トランスミッション:9段AT
燃費:18.1km/L(WLTCモード)
タイヤサイズ(前後):235/60R18
価格:819万円
メルセデス・マイバッハ EQS 680 SUV|Mercedes-Maybach EQS 680 SUV
ボディサイズ:全長5135×全幅2035×全高1725mm
ホイールベース:3210mm
車両重量:3050kg
駆動方式:4WD
モーター:交流同期電動機
システム総合最高出力:484kW(658PS)
システム総合最大トルク:955Nm
バッテリー総電力量:118kWh
航続距離:640km(WLTCモード)
タイヤサイズ(前後):275/40R22
車両価格(税込):2790万円