トゥクトゥク? オートリキシャ? “サイドカー”扱いの三輪車「フリーダム250」は乗りモノ好きが辿り着く、人生の相棒にピッタリだ【試乗レビュー】
「FREEDOM(フリーダム)250」は、実用性と趣味性を兼ね備えたユニークな屋根付きトライクだ。普通の乗りモノには飽きたという人たちに人気があるという。一体どんな乗り物なのか、試乗してきた。
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トゥクトゥク? それともオートリキシャ?
いまの自分にとって理想的な乗りモノとは何だろうか? デザイン性、運転の楽しさ、安全性、珍しさ、維持費など、判断基準は人それぞれだろう。
今回ご紹介するのは、これからの日本社会にマッチするのでは? と筆者が勝手に思っている個性的な“3輪モデル”だ。
カタログには「トゥクトゥク」とも記載されている「フリーダム250」。このモビリティを扱うノスタルジックオート三輪舎の浅野社長が言うにはオート三輪でも、トゥトゥクでも、リキシャでも、呼び方は自由とのこと。せっかくなので、ここではフリーダム250と呼ぼう。

ノスタルジックオート三輪舎の浅野社長。FREEDOM 250の取り扱いは2016年からスタートし、今年で約10年。現在でもアップデートが入り、少しずつ仕様変更されている。
フリーダム250を一言で表すなら「屋根付きトライク」だ。
東南アジアを連想させるフォルムに、ポップな色合いに目を奪われるが、注目すべきは、実用面で非常に優れていることだ。
運転席に1名、後席に2名、計3名が乗車可能で、屋根(幌)付きなので雨天走行もOK。オプションの後席ドアは旋回時にロックがかかって開かない設計となっており、安全面もバッチリ。
排気量250cc以下&サイドカーのメリットがすごい

こちらは新色のホワイト。ほんのりアイボリーがかっており、新車ながらすでにレトロ感が漂っている。発売されたばかりだが、一番人気が出そうだ。
フリーダム250の魅力はそれだけじゃない! 排気量が126cc以上250cc以下で、3輪バイク(トライク)や、バイクにサイドカーを付けた車両は「側車付軽二輪」に区分され、次のような素晴らしいメリットがある。
・普通自動車免許で運転できる
・排気量が250cc以下のため、自動車税は年間3600円
・車検と車庫証明が不要
・自動車重量税(4900円)の納付は新規登録時のみ
フリーダム250のボディサイズは全長2485×全幅1290×全高1750mmとコンパクトだからどこでも走れるし、燃費は約26km/L(無鉛レギュラーガソリン)で燃料タンク容量は15Lもあるので、街乗りには必要十分。使い方によっては軽自動車より便利かもしれない。
いま注目を集めているミニカー規格と比べても、側車付軽二輪規格は3名まで乗車でき、最高速度が80km/hで高速道路走行が可能という点で、明確なアドバンテージがある(ミニカー規格は乗員1名かつ最高速度60km/hまで)。
税込車両価格は87万7800円。維持管理にかかる費用の安さやメリットを考慮すれば、納得のお値段だ。

FREEDOM 250のリア。ハッチゲートを開けると、ガソリンタンクとスペアタイヤが収納されている。
他のどの乗りモノとも違う乗り心地
実際に一般道で試乗させてもらったが、なるほど、これは新鮮! いままでに体験したことのない乗りモノだった。
フリーダム250はスーパーカブと同じく遠心クラッチ式を採用。カブに乗ったことがある人なら、すんなり扱えるだろう。運転の経験がクルマだけの人は、クルマのような円形のステアリングホイールではないことや変速方法で最初は戸惑うかもしれないが、カブ並に簡単なので大きな心配はいらないだろう。
加速については浅野社長とのタンデム走行だったので、重さは感じたが、特に不満はなし。非推奨だが3速からの発進も問題ないほどトルクも太く、250ccらしくアクセルを回せる感覚が楽しい。
ただし、コーナリングの感覚はちょっと独特。二輪車慣れしている人は、バイクと同じハンドルタイプなのに、車体が傾かないことに最初は違和感を覚えるはずだ。筆者は左ハンドルのレバー=クラッチという認識が染みついていたので、シフトチェンジの際にブレーキ制動してしまう悲しいミスを連発。もちろん試乗時間の後半では克服できた。

フリーダム250|FREEDOM 250

フリーダム250|FREEDOM 250
車内のエンジン音は正直、大きい(笑)。しかし、車内は幌に包まれているうえ、エンジンは運転席シートの真下にあるので当然のこと。だが、車内で声を張って会話をすることすら楽しく感じさせてくれる魅力がフリーダム250にはある。間違いなくエンジンが好きな人向けのモビリティだ。
ラゲッジスペースは後席の後方に確保。リアゲート等からのアクセスはできないが、日用品を載せるには問題なさそうだ。

エンジンは運転席のシート下に配置。すぐに状態を確認できるのも魅力のひとつ。

オートバイのようなハンドルまわり。操作は自動遠心クラッチ式のトランスミッションを搭載しているのでエンストの心配なし。スーパーカブ乗りやトライク経験者ならすんなり運転できるハズ。
弱点を聞いてみると、“風と気温”との答えが。寒さは平気だが、真夏が厳しいという。それでも屋根付きなので、全身むき出しのバイクよりは直射日光を避けられる分、快適だろう。
寒さ対策として、運転席の左右にもドアを付ければいいのでは? と質問してみると、そうするとサイドカー扱いではなくなるとのこと。これは素人考えで失礼しました!
試乗後、鼻息荒く、浅野社長に「もっと流行るといいですね!」と言ってみると、ご本人は少しだけ苦笑い。何かマズいことを言ってしまったか……?

左足まわりには、前進・後退切り替えレバー、サイドブレーキ、遠心クラッチなどが配置されている。

車内の前列・後列シート。後列シートの後ろに奥行き30cmほどのラゲッジスペースがある。
好きな人だけ乗ってくれれば嬉しい
浅野社長によれば、フリーダム250の普及は少しずつしか考えておらず、カーシェアやレンタカー事業者からの引き合いは基本的には断っているそうだ。
その理由は大きく2つ。
ひとつ目は「部品の品質とメンテナンス体制」だ。車両のパーツは中国製で、扱いを開始した2016年頃は不具合も多かった。
だがそれからは社長自ら構造を熟知し、組み立てまでを手がけるようになり、安全性は格段に向上。部品選びも自ら行い、故障は減ってきているとのこと。

FREEDOM 250の心臓部には排気量250ccのOHVエンジンを搭載。なお、組み立ては7日~10日程度で完成するという。

組み立て途中のFREEDOM 250。

こちらはFREEDOM250のパッケージ状態。上下2段に横9列の計18台で、ぴったり1フィートコンテナに納まるそうだ。
ふたつ目は「初見での運転がやや難しい」ことだ。一般的な二輪車・四輪車のレンタカーのように、誰もがサクッと乗れるわけではない。
これはトライクやリバーストライクの運転経験がある人なら分かることだと思うが、決して難しいワケではなく、最初にレクチャーを受けて車両の特性を把握すれば問題ない話。
そうした理由もあって、店舗の販売方針としては、何か不具合があった時にでもカスタマーサポートをすぐに対応できる範囲で十分という考えだと語ってくれた。カッコイイ!
最後に、このフリーダム250はどんな人が乗っているのかと訪ねてみると、やんちゃなクルマ・バイク乗りはもちろん、とにかくいろんな乗りモノに乗り尽くした人が購入しているという。
酸いも甘いも“乗りモノ”を楽しみ尽くした人たちに人気があるとのことだが、筆者個人の意見としては、逆にこれまで乗りモノを持たなかった人が乗るのもアリだと思う。
エンジン車が好き! ありきたりな乗りモノには飽きた! 目立ちたい! 維持・管理コスト面に惚れた! 遊べる2台目の乗りモノが欲しい! という方、1台どうでしょう?

全国のオーナーが集まるイベントでは、カラフルなFREEDOM 250がずらりと並ぶ光景も。アクティビティ用や街乗りなど、用途も様々で、まさに遊べる足グルマといったところ。
SPECIFICATIONS
ノスタルジックオート三輪舎 フリーダム250|FREEDOM 250
ボディサイズ:全長2485×全幅1290×全高1750mm
ホイールベース:2060mm
最小回転半径:2.8m
タイヤサイズ(前後):4.0-10
重量:350kg
エンジン:246.2cc 水冷4ストローク
最高出力:11.5kW(15.6PS)/7000rpm
最大トルク:19.5Nm/5000rpm
最高速度:80km/h
燃費:26km/L
燃料タンク:15L(無鉛レギュラーガソリン)
トランスミッション:ロータリー式5速 前進・後進
駆動方式:シャフトドライブ
車両価格:87万7800円(税込)

ノスタルジックオート三輪舎の店内。グッズ・パーツ販売の他に、浅野社長ご自身のコレクションや、知人から押し付けられた(笑)というオブジェも飾られている。