首都高はUターンできるってホント? 清水草一の「道路Q&A」第1回
道路に関する様々な謎や素朴な疑問を、首都高研究家の清水草一が解説する新連載がスタート。初回は「首都高のUターン」について調査しました。
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有名なのは大黒PA
「首都高はUターンできる」って聞いたんですけど、本当ですか?
そう聞くと、「えっ、自動車専用道路なのにUターンできるの!?」と思ってしまいますが、「首都高にはUターン“も“できる場所が2か所ある」というのが本当です。
ひとつは、横浜市にある大黒PAです。
大黒PAは、首都高湾岸線の両方向(東行き/西行き)および大黒線(下り)からアクセスできますが、通常のPAのように、上下線には分離されておらず、3方向すべて、ひとつの駐車スペースにまとめられています。
大黒PAから退出後は、大黒JCT内で、首都高湾岸線両方向および大黒線(上り)、合計3方向に向かうことができます。つまり、元来た方向に逆戻りもできるわけで、実質的にUターンができることになります。

首都高で最大のパーキングエリアである大黒PA ©Q2PHOTOAS - stock.adobe.com
首都高の場合、大黒PAに立ち寄っても、ETCでの利用料金は、利用した入口から出口までの最短経路で計算されます。たとえば東京都内の首都高の入口から大黒PAに向かっても、そのままUターンして首都高だけを使って都内に戻れば、走った距離に対して、大幅に安い料金で済む場合があります。
これは不正利用には当たりません。首都高や阪神高速では、積極的な渋滞回避を促すため、経路選択は自由だからです。
こういった、両方向(全方向)に進行できるSAPAは、他にもあります。
首都圏では、東京湾アクアラインの海ほたるPAが代表的です。海ほたるは、PA自体が目的地になりうる、世界的にも珍しい海上PA。PA内に、Uターン専用の誘導路および料金所が設置されていて、Uターンする場合は、片道料金(ETC普通車で通常は800円)で利用できるようになっています。
Uターン可能なSAPAは関西にもある
関西では、明石海峡大橋の淡路島側にある淡路SAが有名です。
淡路SAは、神戸淡路鳴門自動車道の本州側からの玄関口に位置します。SAは上下線で分離されていますが、淡路ハイウェイオアシスを経れば、クルマで自由に行き来ができますし、退出する際は、そのまま前進・Uターン・一般道への出口と、いろいろな方向に進むことができます。

淡路SAは本州側から明石海峡大橋を渡ったところにある。Uターン、上下線、一般道へといろいろな方向に進むことができる ©Q2PHOTOAS - stock.adobe.com

淡路SAの上下、淡路ハイウェイオアシスへは無料で行き来することができる 資料提供:本四高速グループ
瀬戸大橋の与島PAも、Uターンが可能です。与島PAは、瀬戸内海をまたぐ瀬戸大橋の雄大な景色が楽しめるため、かなりのUターン需要があります。そのためSA出口にUターン専用の検札所(ETCの場合は与島PAに立ち寄ったことを記録するゲート)が設けられており、Uターン料金が設定されています。
一方、東京外環道の新倉PAは、沿道にスペースがなかったため、高速道路の高架下に上下線まとめる形で、こじんまりとPAが設置されました。本来Uターン利用の必要性はあまりない場所ですが、構造上、Uターンできてしまいます。Uターンした場合の料金は、走った分だけ、出口料金所で自動的に計算される形になっています。
複雑な箱崎ロータリーの走行は慎重に
首都高には、もう1か所、Uターン可能なユニークな場所があります。向島線と深川線の分岐点にある箱崎JCTです。正確には、箱崎JCT下の箱崎ロータリーを利用することで、Uターンが可能です。
箱崎ロータリーは、高架構造の箱崎JCTの1階層下側にあります。ロータリーには出口が4か所、入り口が2か所接続されていて、「首都高のラビリンス」と呼ばれるほど複雑な構造ですが、このロータリーを使えば、向島線の上下方向および深川線下り方向、合計3方向に向かえます。つまり、来た方向に戻ることもできるのです。

首都高6号向島線と9号深川線が接続する箱崎ジャンクション。下層部はロータリーとなっており、箱崎出入口、浜町出入口、清洲橋出口や箱崎パーキングエリア、東京シティエアターミナルへの専用出口につながっている
箱崎ロータリー内には、箱崎PAが設置されていますが、駐車可能台数わずか16台のため、本線上にはPAの案内表示がありません。
箱崎ロータリーは、箱崎PAを利用するために建設されたわけではなく、主な目的は、ロータリー中央部にある、東京シティエアターミナルへのリムジンバスのアクセスです。
東京シティエアターミナルは、羽田および成田空港へのバスターミナルとして建設されました。そのため、箱崎ロータリー内から全方向に向かえるように設計されたのです。そのロータリーを使えば、一般車もUターンできるというわけです。
これは一種の裏技(違反ではありません)で、裏技だけに、「実は首都高はUターンできるんだよ」と、意味ありげに語られたりするのです。

首都高6号向島線(下り)から箱崎ジャンクションに向かうと、複数の案内標識や路面標示が出てくる。まさに初見殺し! 構造が複雑なため、はじめて走るドライバーはYoutubeやストリートビューなどで事前に予習してから向かうといいだろう

箱崎ロータリー中央部にあるリムジンバス発着場。箱崎ジャンクションと一体化している東京シティエアターミナル(T-CAT)は、地下鉄半蔵門線水天宮前駅とも直結している

箱崎ロータリーのルート案内図 資料提供:首都高速道路
この箱崎ロータリーの合流部には、一時停止が4か所存在します。かつては信号機も2か所ありましたが、交通量が減少したため、昨年廃止されました。
とにかく構造が複雑で、どちらに向かえばいいのかわからなくなりやすく、首都高初心者は注意が必要です。Uターンしようとして、またUターンが必要になった、なんてことになりかねません。間違った方向に向かってしまった場合は、決して本線上でUターンしようなどと考えず、最寄りの出口で一旦降り、どこか適切な場所でUターンして、正しい方向に乗りなおしてください。

箱崎ロータリーの合流部には以前、信号機が2箇所設置されていたが、2024年12月9日に撤去及び一部区画線の変更が行われた

信号機撤去後の現在の箱崎ロータリー
高速道路では、逆走車の発生が問題になっています。首都高は通常の高速道路に比べると、逆走(インターや本線上でのUターン)は困難ですが、それでも逆走するクルマは発生しています。
昨年9月に発生した逆走事例は、平和島出口から軽トラックが逆走で本線に進入し、しばらく羽田線上りを逆走したというものでした。
「首都高はUターンできる」と言っても、それは逆走のことではありませんので、くれぐれも誤解しないようにお願いします。
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