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最終更新日:2025.04.11 公開日:2025.04.11

ジグソーパズルの最後のピースのように、短い道路の開通で大きな効果が生まれることがある? 長い目で見た道路の整備効果のひみつ。【川辺謙一の「道路の雑学」Vol.6】

初台交差点の真上にある西新宿ジャンクションの高架橋。首都高の4号新宿線と中央環状線(C2)をつなぐ役割がある。筆者撮影

交通技術ライター川辺謙一が語る「道路の雑学」。第5回は、道路の整備効果に迫る。

初台交差点の真上にある西新宿ジャンクションの高架橋。首都高の4号新宿線と中央環状線(C2)をつなぐ役割がある。筆者撮影

文・写真=川辺謙一

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新しい道路の開通とその効果

みなさんのなかには、新しい道路が開通する(正確には供用開始になる)と、クルマで走り初めをしたいと思う方はいませんか? 昨日まで走れなかった真新しい道路を走ると、未知の風景が目の前に広がり、ちょっと気分が上がりませんか?

道路は、短い区間が完成するだけでも、大きな効果を発揮することがあります。そこがつながることで、近道ができて所要時間が短縮するだけでなく、混雑しやすい地域をう回するルートができて交通量が分散して渋滞が解消される、もしくは事故の発生件数が減るという効果が出るのです。

つまり、ジグソーパズルの最後のピースを埋めた瞬間に、一枚の絵が完成するように、短い区間が完成した瞬間に道路ネットワークが充実し、それまで見られなかった効果が出ることがあるのです。

そこで今回は、新しい道路ができる(整備される)ことで、どのような効果が生まれるかを見ていきましょう。

フロー効果とストック効果

道路は、わたしたちの暮らしを支える重要なインフラ(社会資本)です。道路がないと、人や物が流れないので、私たちが移動できないだけでなく、コンビニやスーパーに商品が並ばず、ネット通販で注文した商品が自宅に届きません。

道路などのインフラ(社会資本)の整備がもたらす効果(出典:国土交通省[1])

道路などのインフラ(社会資本)の整備がもたらす効果(出典:国土交通省[1])

道路がつながると、「フロー効果」と「ストック効果」と呼ばれる2つの効果が生まれます。国土交通省は資料[1]で、「フロー効果」が「公共投資の事業自体によって生産、雇用や消費といった経済活動が派生的に創り出され、短期的に経済全体を拡大させる効果とされています」、「ストック効果」を「整備された社会資本が機能することで、整備直後から継続的かつ中長期にわたって得られる効果です」と説明しています。

道路の開通は、大きな「ストック効果」をもたらすことがあります。その代表例である「移動時間の短縮による生産性向上」は、沿線にお住まいの方にとっては気づきにくいことかもしれませんが、長い目で見ると、多くの人に恩恵をもたらします。

首都高の中央環状線全通とその効果

首都圏の3環状。都心環状線の外側を通る環状道路。中央環状線は、東京都心から約8kmの場所を通っている(出典:国土交通省関東地方整備局[2])

首都圏の3環状。都心環状線の外側を通る環状道路。中央環状線は、東京都心から約8kmの場所を通っている(出典:国土交通省関東地方整備局[2])

具体例として、首都高速道路の中央環状線の開通効果を見てみましょう。中央環状線は、東京都心から約8kmの場所を通る環状線で、複数の放射線を結び、その内側を通る都心環状線のう回路としても機能しています。2025年3月7日には、全線開通(以下、全通)から10周年を迎えました。

首都高速道路株式会社は、2025年1月24日に中央環状線全通10周年整備効果を発表しました[3]。それによると、渋滞損失時間が2000年〜2023年で約56%減少し、全通による1都7県の経済効果(GRP変化額)は約8,200億円/年になりました。また、中央環状線内側の追突・車両接触事故は、2000年〜2023年で約6割減少し、第三次医療施設へ30分以内に緊急搬送できる範囲が広がりました。

中央環状線の整備で、都心部の渋滞損失時間が減少した(出典:首都高速道路株式会社[3])

中央環状線の整備で、都心部の渋滞損失時間が減少した(出典:首都高速道路株式会社[3])

つまり、たんに渋滞が減って所要時間が短縮しただけでなく、大きな経済効果を生み出し、交通事故を減らし、病院に緊急搬送できる範囲を広げたのです。

なお、中央環状線で最後に開通した区間(中央環状品川線)は、約9.4kmです。首都高速道路の総延長約327.2km[4]の3%弱にすぎません。ただ、それがつながることで、中央環状線が完成し、道路ネットワーク全体が充実し、先述したような効果を発揮しました。そう考えると、短い道路の開通効果はけっしてあなどれないですね。

中央環状線の山手トンネル。その大部分が山手通りの真下を通っている。筆者撮影(動画から切り出し)

中央環状線の山手トンネル。その大部分が山手通りの真下を通っている。筆者撮影(動画から切り出し)

@kawaberry1 カーブ途中で右から合流。首都高C2中央環状線・西新宿ジャンクション付近 #ドライブ #高速道路 #東京 ♬ Funny – aint lindy

<参考資料>
[1] インフラストック効果とは,国土交通省
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/stock/stockeffect.html
[2] 3環状の計画の歩み,国土交通省関東地方整備局
https://www.ktr.mlit.go.jp/road/shihon/road_shihon00000131.html
[3] 首都高中央環状線全線開通10周年整備効果,首都高速道路株式会社
https://www.shutoko.co.jp/-/media/pdf/responsive/corporate/company/press/2024/01/24_c2_10th.pdf
[4] 首都高リニューアル,首都高速道路株式会社
https://www.shutoko.jp/ss/shutokorenewal/situation/

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