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最終更新日:2025.03.14 公開日:2025.03.14

クルマで興奮してますか? 伝説のヒルクライム・イベントが“真庭で”復活! 第1回 MHヒルクライム 真庭速祭。

10年前に箱根ターンパイクを封鎖して開催され、日本における伝説的なヒルクライムとして認知されているMHヒルクライム。その続編が突如として岡山・真庭の地でスタートを切ったのである。

写真=河野マルヲ(Maruo KONO)

文=吉田拓生(Takuo YOSHIDA)

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パドックに集まった観客の前を往年のレーシングカーが暖機しつつ出走の準備を整えていく。日産のR91CPは1992年のデイトナ24時間優勝車。

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ヒルクライム、海外ではメジャー?

クルマ好きなら「ヒルクライム」という言葉を聞いたことがあるかもしれない。それはヒル=丘、クライム=上る、つまり丘を駆け上がるタイムを競うタイムトライアル競技のこと。

特徴的なのは走るためのステージは専用のサーキットではないこと。公園内の道路を使用したり、公道を封鎖して行う必要があるため、これまで日本ではなかなか普及してこなかった経緯がある。

ヨーロッパではサーキットができるはるか以前からヒルクライムが盛んにおこなわれており、有名なイギリスのシェルズレイ・ウォルシュ・ヒルクライムなどは、生涯をかけてそのベストタイムの更新を狙い続けるファナティックがいる大会でもある。

また今日、世界一有名なヒルクライムといえば同じくイギリスのグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード(FOS)が挙げられる。これなどはマーチ伯爵という貴族の邸宅の広大な庭の道をコースとした一大イベントで、歴史的なレーシングカーや往年のレーサー、さらには世界中の自動車メーカーまでもが集結、観客も20万人を超すという一大イベントになっているのである。

マニワってどこですか?

特に注目を集めたウィリアムズFW12ジャッド。ドライバーは谷口信輝。その傍らでは諸井猛オーナーが見守る。

皆さんは真庭という地名をご存じだろうか? 真庭市は岡山県の北部、中国山地の山々に囲まれたのどかな田舎町である。そんな真庭市の街はずれにある広域農道、木山神社のそばから始まる木山街道を特設会場として、昨年11月17日、突如としてレーシングカーや最新のチューンドカーの野太い排気音が鳴り響いたのだった。

「クルマで興奮してますか?」というキャッチコピーを掲げる日本のグッドウッド(?)ならぬ「TONE プレゼンツ MHヒルクライム/真庭速祭」。その第1回目となるイベントの幕が切って落とされたのである。

ちなみにイベント名にあるMHとはモーターヘッドというモーターカルチャーマガジンの名称。誌面での活動だけに留まらないMHは2014年に箱根ターンパイクを封鎖して開催した伝説的なヒルクライム・イベントを開催し、その様子を迫力ある映像として作り込みYouTubeで公開。今日までに513万回の再生回数を誇り、日本における全く新しいヒルクライムの可能性に言及している。その際のメインスポンサーを務めたのも今回と同じく総合工具メーカーのTONEだったのである。

パドックにこもるヒトのクルマの熱気

様々なマシーンたちの鼓動を楽しむ観客たち。用意されたチケットが僅か3000枚弱だったこともあり、前売りのみの販売で即日売り切れていた。

昨年のプレイベントにも出走したアルボーS2000。製作とドライブを柴田優作選手が手掛けるこのマシーンは“魔王号”としても有名。

ホンダ・シビック・タイプRと道上龍選手の再会も注目を集めた。車内映像からも道上選手の本気度が伺えた。

2023年の11月に無観客でプレ開催され、その1年後に第1回が開催された「MHヒルクライム 真庭速祭」。コースである木山街道は日本のどこにでもあるような田舎の峠道。その全長6kmほどの区間をコースとして設定し、新旧20台ほどのレーシングカーやチューンドカーが熟達したオーナードライバーやプロのレーシングドライバーによって全開で駆け上がる。

今回ははじめて観客をパドックに入れての開催となったが、それでもスタンスは慎重で、前売りのみとして用意されたチケットは3000枚弱。もちろん即日ソールドアウトとなっていた。

観客たちはコース脇まで行くことはできないが、そこは現代のスピード・イベントであり、パドックにおける暖機からドライバーの乗り込み、スタート地点に向かう車両やドライバーの紹介の実況までがリアルに楽しめる。またコースの各所や参加車輛の車内に設けられたカメラからリアルタイムの映像が送られてくることでも、スピードを共有できていたのである。もちろん今回のイベントもまたYouTubeにアップされていることは言うまでもないのである。

ターボの不敵なビートを響かせながらスタート地点に向かうポルシェ962C。日本のレースシーンを沸かせた1台だ。

目玉はF1マシーン! 伝説のタッグも再現

現役時代を終えてから1度も走っていなかったクスコ・インプレッサを小林且雄がドライブ。参戦当時のドライバーであり、キャロッセに参戦を進言した張本人でもある。

HKSが持ち込んだレーシングパフォーマー#GR86を谷口信輝がドライブ。筑波2000を55秒台で回るポテンシャルで真庭を沸かせた。

イベントの目玉といえる1台は、谷口信輝選手がステアリングを握ったF1マシーン、ウィリアムズFW12だったが、他にもニッサンのグループCカーであるR91CPややはりグループCのアドバン・アルファ・ノバ962Cといったおおよそ公道が似合わない純レーシングカーの存在感と音が注目を集めていた。

他にもホンダが持ち込んだシビックのWTCCマシーンを現役当時のドライバーである道上龍選手が、全日本GT選手権で活躍したCUSCOスバル・インプレッサを参戦当時のドライバーである小林且雄選手が走らせるなど、ファンにはたまらない伝説の再現もあったのである。

アタックタイムは参考タイムとなるが、それでも各ドライバーは可能な限りの本気で走っており、それは車内映像からもはっきりと見て取れた。走行車両もレアならドライバーも一流、そして彼らが本気で走るステージはなぜか公道。一見ミスマッチだが、誰にとっても身近な場所だからこそ感情移入できる部分も多いのである。

真剣で盛大なクルマのエキジビション。伝説的なMHヒルクライムは真庭を舞台として蘇り、再び強烈なインパクトを残したのだった。

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