今尾直樹が選ぶ今年の1台は「マクラーレン アルトゥーラ スパイダー」━━【若者はこれに乗れ! KURU KURAカー・オブ・ザ・イヤー2024-25】
日本を代表する著名モータージャーナリスト20名が、20代・30代の若者にオススメしたい今年いちばんのクルマを選出。新車・中古車問わず、いま購入できる車両の中から、今尾直樹が選んだベストカーを紹介しよう!
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2024年いちばんのクルマ
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マクラーレン アルトゥーラ スパイダー|McLaren Artura Spider
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マクラーレン アルトゥーラ スパイダーです。2021年に登場したマクラーレン初の量産ハイブリッド・スーパーカー、アルトゥーラのコンバーチブル版で、コンバーチブル化に伴いパワーユニットの最高出力を680psから700psに引き上げている。最高速度330km/h、0-100km/h加速3秒をオープン・エアで楽しめるのだ。
今年上陸したスパイダーがアルトゥーラ初体験だった筆者的には2024年最大の衝撃だった。めちゃんこ感動した。マクラーレンの2024年のF1コンストラクターズ・チャンピオン獲得と併せて寿ぎたい。
3リッター120°V6ツイン・ターボをミドに搭載するハイブリッドのスーパーカー。8速DCTと電子制御サスペンションを備える。という成り立ちはフェラーリ296GTB/GTSとそっくり同じだけれど、運転フィールは大いに異なる。
カーボン・モノコックの採用による軽量・高剛性ボディのアルトゥーラのほうが軽やかでサラッとしている。対するフェラーリはイタリアのお色気ムンムン、ドルチェ・ヴィータの芸術品。
マクラーレンは禅的というか、無我の境地を味わうための道具、といってよいかもしれない。内外装はフェラーリ以上に宇宙船的、宇宙戦艦ヤマトっぽいというか、新世紀エヴァンゲリオンっぽいけれど、中身はある目的、端的に申し上げれば、ドライビングを心底突き詰めようというストイックさが、若干のユーモアとともに詰め込まれている。
そのユーモアというのはEV走行時に聞こえてくるSF映画の宇宙船の飛行音みたいなサウンドとか、跳ね上げ式で開くドアとかを指す。操作系のスイッチがわかりにくのもイギリス人のイタズラと捉えられる。
こんな宇宙船みたいなかたちのスーパー・スポーツカーなのに、駐車時も含めて運転しやすいことは驚嘆で、飛ばせば、まるで自分と一体になったかのようにすら感じる。「僕は、エヴァ初号機のパイロット、碇シンジです!」って感じ。
つまるところ、ドライビングオタクのためのスーパーカー。最長33kmのEV走行ができるのは超高性能車の延命策にしても、それをザッツ・エンタテイニングでまとめている。そこがスゴイ。こんなのがウチにもアルトゥーラだったら……。
ドライブデートしたいクルマ
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マセラティ グラントゥーリズモ|Maserati Granturismo
マセラティ グラントゥーリズモ|Maserati Granturismo
マセラティ・グラントゥーリズモです。単なる願望ですけれど、2024年はマセラティの最初のグラントゥーリズモ、A6 1500誕生から75年。マセラティ創業110年でもある。ということで、4座GTのグラントゥーリズモに登場した75周年記念モデルがとってもヨカッタ。
袖ヶ浦フォレストレースウェイで3周しただけだけれど、第2世代のグラントゥーリズモそれ自体が素晴らしい。フロントに搭載する3リッター90°V6“ネットゥーノ”ユニットはMTC(マセラティ・ツイン・コンバスチョン)なるF1エンジン由来の副燃焼室を備えているのが特徴で、ターボ過給により最高出力550psと最大トルク650Nmを発揮する。これを後輪だけで受け止めるのはアブナイと考えたのか、4WDを採用しているところがミソ。
それとは別に、マセラティは韓流ドラマによく出てくる。パク・ミニョンと箱根までドライブしたい。韓国語ができないのが問題ではある。もちろん、問題はそれだけではないのですけれど、パク・ミニョンとデートするから、といえばマセラティがグラントゥーリズモを貸してくれるだろうとは思う。
家族でお出かけしたいクルマ
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ホンダ N-VAN e:|Honda N-VAN e:
ホンダ N-VAN e: です。2024年に試乗した新型車のなかで探すと、これがイー。軽の商用バンでもあり、乗用ワゴン版もあるN-VANのEV(電気自動車)仕様で、最上級仕様のe: FUNだと300万円弱もする。けれど、国から補助金が55万円もらえる。いまどき国の補助が得られるということが家族にはうれしいはずだ。私たちは国に守られている。愛されている。
電気モーターで走るEVは静かで快適、内燃機関のような微振動がなく、床下に電池を敷き詰めているので、低重心。なので乗り心地もよい。モーターの最高出力は64ps、最大トルクは162Nmもある。出足は鋭い。外部給電機能もついており、エレキ・ギターを爆音で弾きまくるとか、こたつに入りながら天体観測するとか、というようなアイディアがN-VAN e: のHPでは漫画で紹介してある。家族そろってゲームを爆音で楽しむのもよい。
EVの最大の問題は航続距離が短いことだ。充電のインフラも整っていない。N-VAN e: FUNの場合、一充電の走行距離は245km。都内から箱根まで家族でドライブに行ったら、充電しないと帰ってこられない可能性大である。さあ、そこで家族はどうしたらよいのか? ハラハラドキドキの大冒険。絆はいっそう深まるにちがいない。
クルマは単に便利な移動の道具ではない。冒険のための相棒なのだ。
運転が楽しいクルマ
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ホンダ フリード AIR|Honda FREED AIR
ホンダ フリード AIRのガソリン・モデルです。もちろんマクラーレン アルトゥーラ、マセラティ グラントゥーリズモはすばらしい。それ自体がクリスマス、お正月、お祭りにディズニーランド、ユニバーサル・スタジオに大人のお店みたいなもんである。
そういうのももちろん楽しいけれど、対極にあるようなフツーの、日常のためのクルマ、ホンダ・フリードも楽しい。ここではあえて、1.5リッター直4DOHC、最高出力118ps、最大トルク142Nmのガソリン仕様をあげておきたい。
現代のフツーの国産ファミリーカーのよさが詰まっている。自然吸気エンジンとCVTの相性もよいし、着座位置が高めで見晴らしがよく、運転しやすい。運転の楽しさを理解するのに好適だと思う。
いま20代だったら欲しいクルマ
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ルノー ルーテシア(4代目)|Renault Lutecia
ルノー ルーテシア(4代目)|Renault Lutecia
ルノー トゥインゴかフィアット パンダ、あるいはBMW1シリーズか3シリーズ、もしくはポルシェ ボクスターのMTを中古で買いたい。もっとも、20代は40年前の、いまの私の選択です。
いま20代だったら……という想像ができない。というのが正直なところです。
とりあえず、予算は200万円ぐらい。懐に優しそうなのは、トゥインゴか、あるいはルーテシア。ネットで検索してみると、ルーテシア、2011年で走行6.6万km、車両本体価格66.6万円。なんてのが出てきた。支払い総額82.9万円。
いま、20代の私は買うだろうか? 会ったら、こういおう。いいから買え。
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