吉田拓生が選ぶ今年の1台は「ロータス・エメヤR」━━【若者はこれに乗れ! KURU KURAカー・オブ・ザ・イヤー2024-25】
日本を代表する著名モータージャーナリスト20名が、20代・30代の若者にオススメしたい今年いちばんのクルマを選出。新車・中古車問わず、いま購入できる車両の中から、吉田拓生が選んだベストカーを紹介しよう!
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2024年いちばんのクルマ
ロータス エメヤR|Lotus Emeya R
「いちばん」と言われても今ひとつ漠然としているので、「いちばん驚かされたクルマ」という自分なりの解釈を付け加えてさせてもらうと、答えはすんなり出てくる。ロータス・エメヤである。
試乗した人が「エッ!」と驚く、期待を大きく超えてくる1台。特にフロントよりリアモーターが強力なエメヤRは、静かで乗り心地の良いプレミアム・サルーンでありながら、ライトウェイトのロータスを彷彿とさせる鋭いハンドリング特性も持ち合わせている点が出色といえる。
長くこの世界にいると、乗る前からだいたい感じがわかってしまうもの。などと思っていることもあって余計にエメヤRが輝いて見えたのである。
メーカーとしては激動の時代を迎えているロータス。初代エリーゼでもそうだったが、案外ピンチに強いメーカーなのかもしれない。
ドライブデートしたいクルマ
マツダ・ロードスターRS(ND)|Mazda Roadster RS
僕が免許を取った頃、若者は皆クルマ好きであり、風変わりな愛車に乗っていても今ほど異性に変な目で見られなかったと思う。でも今は高額な輸入車に乗っていれば色々と怪しまれるし、少しいじったスポーツカーや個性的な旧車に乗っていると煙たがられたりする。
だからデートが目的ならノーマルの国産新車ならなんでも、という消極的な答えになりがち。でもそこに「クルマ好き」という要件を含めるなら、答えはロードスターしかないだろう。これなら彼女はもちろんそのご両親だって「あぁ、クルマ好きなのね」という以上の詮索はしてこないはず。
数あるロードスターの中でも、昨年3月にマイナーチェンジを受けたロードスターRSは珠玉の仕上がりなので、静かに走らせればデートも快適にこなせるし、ひとりで“ひとっ走り!”というときにも妥協することなく楽しめるはずだ。
家族でお出かけしたいクルマ
メルセデス・ベンツ 初代Aクラス(W168L)|Mercedes-Benz A Class
初代Aクラス(W168L)のロングはかつて子供が誕生した頃に我が家にあったファミリーカーだった。だから今敢えて、ヒト様にこのクルマをお薦めしたいわけではないのだ。ATにヤバイ問題を抱えているのは有名だし……。
家族にとって思い出深い時代の1台をもう一度手に入れてみたら? という提案。すっかり子供も成長して、大して口も利かなくなってしまったような家族でも「昔の思い出話に花が咲くのでは?」ということ。たぶん今手に入れようと思えば、日本一走行距離が少ない個体でもかなりリーズナブルなはず。これほど興味深いタイムマシーンはないのでは?
運転が楽しいクルマ
マセラティ GT2 ストラダーレ|Maserati GT2 Stradale
まだ発表されただけなので、試乗したわけではない。でもベースとなっているMC20の精確で、それでいて華のあるドライバビリティに心酔している身としては、そのハイパフォーマンスモデルに期待しないわけにはいかないのである。
GT2ストラダーレはその名の通り、GT2レーシングカーを公道に落とし込んだモデル。資料から読みとれる“ストラダーレ”は、ダウンフォースの徹底的な増強とサーキットの連続周回に備えた冷却性能が印象的。
今の時代に電気を排してプレチャンバー技術1本で勝負してきたネットゥーノ・エンジンも実にマセラティらしいアプローチといえる。そしてもちろん核となっているのはダラーラと共同設計したカーボンファイバー製モノコック。運転しても飛び切り楽しそうだが、ガレージで眺めているだけでも満足できそう。こういった純粋なモデルがもっと評価されてもいいと思う。
いま20代だったら欲しいクルマ
BMW 初代1シリーズ(E87)|BMW 1 Series
サイフは軽い! でも質感の高いモデルで運転を楽しみたい! そんな20代のクルマ好きにお薦めしたいのはBMWの初代1シリーズである。2代目以降はターボエンジン、3代目以降はFFベースになり中古車価格もまだ高めなので、ここではFRレイアウトの初代に限定したい。中古車市場を覗いてみれば、込々40~50万も出せば理想的な色や仕様を選べるはずだ。
僕は1シリーズの前身とも言うべき3シリーズ・コンパクトを所有し、雪道や氷上走行会、雨の日限定で袖ケ浦サーキットのスポーツ走行に通ったりしていた時期がある。その経験からシンプルなFR車がもたらしてくれるクルマ本来の楽しさ、を理解しているつもりである。
今の時代、何気なくクルマを選ぶと、4駆、ターボ、ハイブリッド、6気筒、MT、太いタイヤ等々色々なエクスキューズが付いてきてしまうもの。でもこれから様々なクルマと付き合っていく若者が、その最初の1台としてドライビングと真剣に向き合うためには、素直な4気筒エンジンとコンパクトなシャシーがあれば十分だと思う。
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