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最終更新日:2025.01.14 公開日:2025.01.14

新宿駅西口の「ぐるぐる道路」が消える? 再開発によってまもなく消える「らせん状車路」のひみつ。【川辺謙一の「道路の雑学」Vol.4】

交通技術ライター川辺謙一が語る「道路の雑学」。第4回は、今月に通行止めになる新宿駅西口の「ぐるぐる道路」を通して東京の都市計画に迫る。

文と写真=川辺謙一

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上から見た新宿駅西口の「ぐるぐる道路」(2022年10月筆者撮影)

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変化する新宿駅西口と「ぐるぐる道路」

現在、新宿駅前の風景が刻々と変化しています。東京都が2021年に事業計画決定した「東京都市計画事業新宿駅直近地区土地区画整理事業」(2021年事業計画決定)と称される再開発事業にともない、東口と西口の駅前広場を改造しているからです。

現在は、新宿駅西口にあった小田急百貨店新宿本館のビルがありません。このため、地下1階にある駅前広場からは、ビルに隠れていた広い空を眺めることができます。

かつては、小田急百貨店新宿本館の展望台から、西側に広がる新宿副都心とともに、駅前の「らせん状車路」(以下「ぐるぐる道路」)を眺めることができました。この「ぐるぐる道路」は、長らく新宿駅西口のシンボルとなっていた自動車の通路で、2025年1月15日0時をもって通行止めになります。

この「ぐるぐる道路」は、どのようなきっかけで生まれ、どのような役割をしていたのでしょうか。今回はその経緯を、都市計画の視点から探ってみましょう。

戦後に整備された新宿副都心

新宿駅西口地下広場から見た風景。写真正面にあった小田急百貨店新宿本館はすでに解体された(2024年12月筆者撮影)

「ぐるぐる道路」は、先ほど紹介した新宿副都心とセットで建設されました。そこで新宿副都心の歴史を探ってみましょう。

新宿副都心は、新宿駅西口よりも西側にあるエリアです。ここでは東京都庁をはじめとする超高層ビルが多数建ち並んでいるだけでなく、道路が上下2層構造になっており、複数の場所で立体交差しています。

かつてここには、水を浄化して上水道に供給する施設(淀橋浄水場)と、小西六写真工業(現・コニカミノルタ)のフィルム工場がありました。淀橋浄水場は新宿駅西側の発展の妨げとなり、フィルム工場は明治時代に建設されたゆえに老朽化していました。

そこで東京都は、1959年に新宿副都心の整備計画を決定しました。淀橋浄水場は東村山に、フィルム工場を日野にそれぞれ移転させて、跡地に新しい街をつくったのです。立体交差する道路は、淀橋浄水場にあった貯水槽の凹凸(底は周囲より約7m低い)を利用して建設されました。

工場の跡地だった新宿駅西口広場

小田急百貨店新宿本館から見た新宿副都心(2022年10月筆者撮影)

「ぐるぐる道路」の通行止めを示す看板(2024年12月筆者撮影)

いっぽう、現在の新宿駅西口広場は、第二次世界大戦前の区画整理によって整備されました。かつてこの場所には、専売公社(現・JT)の工場がありました。

そこで東京都は、第二次世界大戦後に新宿駅西口広場を地平と地下の上下2層(地下2階の駐車場もふくめると上下3層)にして、新宿副都心にある上下2層構造の道路とつなげました。

このとき、新宿駅西口広場に「ぐるぐる道路」が誕生しました。これは、地平と地下に分離された広場を結ぶ「連絡路」であり、高低差をカバーする「ループ線」でした。もちろん、地平から地下2階の駐車場にアクセスするルートの一部でもあります。

新宿副都心(手前)と新宿駅西口広場。「ぐるぐる道路」は、上下2層構造になった道路や広場をつなぐ「連結路」である(筆者作図)

歩行者中心の駅前広場に

以上の経緯で変化した新宿駅西口の姿は、今後また一変します。

まず、新宿駅西口広場では、車道が縮小され、歩行者の滞留空間が創出されます。東京都都市整備局がウェブサイト(2024年9月9日付)で公開している新宿駅西口広場の「将来形」の図面には、現存する「ぐるぐる道路」がありません。地平では、周辺の車道の多くが消え、歩行者空間が広がります。地下1階では、道路のロータリーの規模が縮小されます。ただし、地下1階から空を見上げる「吹き抜け(開口部)」は残されます。

工事着手前の新宿駅西口地平広場(東京都都市整備局「新宿駅直近地区」2024年9月9日付)

新宿駅西口地平広場の将来形(東京都都市整備局「新宿駅直近地区」2024年9月9日付)

新宿駅西口地下広場の変化(東京都都市整備局「新宿駅直近地区」2024年9月9日付)

いっぽう、小田急百貨店新宿本館の跡地には、地上48階・地下5階の複合施設が建設されます。小田急電鉄・東京メトロ・東急不動産は、2024年3月25日付プレスリリースで「当該建物の竣工予定は2029年度です」と記しています。

これらが完成すると、新宿駅西口は、今とは明らかに異なる空間になり、「ぐるぐる道路」は消えます。ただ、駅前広場が自動車中心から歩行者中心の空間へと変化し、東京駅丸の内口広場のような観光名所になるといいですね。

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