信号機なのに“青”がない!? 「黄色」と「赤」だけの交差点はいつ進行したらいい?【信号機マニア・丹羽拳士朗の偏愛日記 #2】
北は北海道から南は沖縄まで、全国の珍しい信号機を訪ね歩いて20年! 信号機マニア・丹羽拳士朗さんによる新連載第2回目は、これまでの常識を覆す“青がない”信号機を紹介しよう。
いつ進行したらいい!? 青のない信号機を発見!
山梨県甲府市酒折の信号交差点。甲府市街の東に位置している。
今回紹介するのは、山梨県甲府市にある信号交差点だ。東西に横断する県道甲府韮崎線(以下、主道路)と南北に縦断する道路(以下、第一従道路)が直角に交差しているところに、もうひとつの道路(以下、第二従道路)が南西側から斜めに交差して突き当たっている。
交通量の多い主道路側の信号機は通常の青・黄・赤の配列となっているが、第一従道路側の信号機は、なんと両方向ともに「黄・黄・赤」の配列となっている! さらに、第二従道路側には「赤・黄・赤」の配列の信号機が設置されているではないか!
この黄・黄・赤や赤・黄・赤は、いずれも青がなく、いつ進行すれば良いのかとツッコミを入れたくなるような信号機であるが、それぞれ進行できるときは左の黄や左の赤が点滅することによって、進むことができる。
ちなみに黄点滅は他の交通に注意しながら進行できるの意、赤点滅は一旦停止し、安全確認後進行できるの意となっている。
青のない信号機……なぜ存在する?
「第一従道路」を北から南に向かったとき、交差点の信号は左の黄が点滅している。
なぜこの信号機は通常の青現示ではなく、黄の点滅や赤の点滅で車を進行させているか、その理由を推察していく。
そもそも、第一従道路・第二従道路共に交通量が非常に少ないため”感応式”となっており、車両を感知するか歩行者が押しボタンを押さないと第一従道路・第二従道路側のいずれの信号機も赤のままだ。
そして、車両を検知ないし歩行者が押しボタンを押すと第一従道路・第二従道路の車両を同じタイミングで進行させるという仕組みで、違う2方向から同時に車両が交差点に進入して危険なため、それぞれ黄点滅・赤点滅で車を進行させているものとみられる。
なお、黄・黄・赤が設置されている第一従道路より第二従道路のほうがさらに交通量が少ないため、優先している第一従道路の信号機は黄点滅、第二従道路は赤点滅で一旦停止してから進行するようになっていると思われる。
「第二従道路」を交差点に向かうと左の赤が点滅している。
ここでふと疑問が浮かぶ。黄・黄・赤や赤・黄・赤の配列の信号機は黄や赤が2つあることとなるが、それぞれ真ん中の黄や右の赤を使えば良い話ではないかと。
おそらくだが、本来の位置の真ん中の黄や右の赤の意味は通常の信号機の黄や赤と同じ意味であるのに対し、左黄や左赤は車を進行させることができる点滅現示なので、そこを区別するためにあえてこのような配列の信号機としていると思われる。
青のない信号機の交差点はマニアの聖地
ただ、この黄・黄・赤や赤・黄・赤の配列の信号機はわかりにくいということもあってか、通常の青・黄・赤の配列の信号機への交換が進み、真ん中の黄や右の赤が点滅するように変更になったり、そもそも青が点灯する普通の動作の信号機に変更になったりということが多い。
なお、兵庫県や新潟県では例外的に黄・黄・赤配列の信号機については新しいLED信号機へ交換しても引き続き黄・黄・赤の配列の信号機を利用しており、まだ数は見られるが、赤・黄・赤の配列の信号機はかなり数を減らしており(元々黄・黄・赤よりは少ない)、全国的に相当珍しいものとなっている。
そういった意味で黄・黄・赤と赤・黄・赤の信号機が両方設置されているこの交差点は、我々マニアにとってある意味「聖地」と言えるだろう。
また黄・黄・赤と赤・黄・赤が両方同じ交差点に設置されるというケースも極めて珍しい。
この交差点の信号機は2024年10月までは電球式の平成9年製の黄・黄・赤、赤・黄・赤の配列の信号機が設置されていたが、2024年10月に更新され、現在主流のひさしがない小型タイプの薄型LED灯器に更新された。
先述の通り、新しいLED信号機へ交換されてもなお黄・黄・赤も赤・黄・赤も引き継がれるのは極めて珍しい。
電球式の黄・黄・赤や赤・黄・赤がなくなってしまったのは非常に残念ではあるが、新たに新型のLED信号機の黄・黄・赤と赤・黄・赤が登場したのは信号機マニアとしては正直喜ばしいことで、自分も急いで登場した1ヶ月後の2024年11月23日に山梨県へ撮影に出向いた。
今後も信号機マニアの聖地として名を馳せることになるだろう。
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