ファミリーカーが欲しい! 新米パパママのクルマ選びに密着してわかった、トヨタ新型「シエンタ」人気の秘密。
交通の便が良い街に住んでいても、子どもの誕生をきっかけにマイカーを購入する夫婦は少なくない。では一体なにを基準に選べばよいのだろう。モータージャーナリストの山崎 明氏が自身の家族を例にクルマ購入のポイントをお届けする。
クルマがあるとやっぱり便利!
コロナ禍が始まったばかりの2020年春、80代の母が高齢者施設に入ることになった。母が一人で住んでいた藤沢の実家は住人が誰もいなくなってしまったのだ。実家は1965年築で相当年季が入ったもので、そのまま誰かが住むには厳しい状態だった。実家は私の家からそれほど遠くないところにあるため私が時々風通しに行ってはいたものの、空き家状態が続いていた。
そんな折、結婚して東京の賃貸マンションに住んでいた娘が藤沢に戻りたいと言いだしたのだ。通勤を考えて都内に居を構えたのだが、コロナ禍により夫婦共々在宅勤務が中心となり、人が多くてせわしない都内での暮らしが嫌になったようだった。それなら、思い切って実家を建て替えて住んだらどうかと提案したところ、そうさせてくれるなら是非そうしたいということになった。母に伝えたら二つ返事でOKとなり、古家を取り壊して真新しい娘夫婦の家を建てることになった。
どのような家を建てるべきかで悩みに悩み、様々なハウスメーカーと打ち合わせを重ねた結果、設備面、断熱スペック面で極めて優れていると思われたI社を選択し、ようやく2023年8月に着工、2024年2月に完成したのだ。
実家は駅から徒歩圏にあり、コンビニやスーパー、ベーカリーなども徒歩数分のところにある。日常生活的には車は必ずしも必要はないのだが、藤沢で生活する上で車があるとないとでは大きな違いがあるのだ。
郊外の状況はどこでも同じだと思うが、鉄道駅周辺は昔からの商店街で駐車場は少なく車でのアクセスは良くない。大型施設を作る余地もない。そこで駅から離れた場所に駐車場完備の大きなショッピングモールがいくつもできて、そちらの方が賑わう結果となっている。そしてそのようなモールに行くには車は必需品なのである。車があれば公共交通機関で行くには不便なところにあるコストコやIKEA、アウトレットモールなどに行くことも容易になる。そのためいずれは車の購入が必要であることはわかっていたので、2台分の駐車スペースを確保したのである。
家の完成とほぼ同時に夫婦は子宝も授かったので、車もすぐに買わねばということになり、車選びが始まった。新築した家は超ハイスペックなもので、屋根はすべて太陽光発電パネルで覆われている(一部に太陽光発電パネルを設置するのではなく、屋根全体が太陽光パネルでできている)。そのため11kWの発電量を持ち、天気の良い日は使い切れないため電力会社に売電するかたちになる。そう、娘夫婦の家はまさに電気自動車(BEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)にふさわしい家なのだ。BEVなら、事実上走行経費ゼロで運用可能になるのだ。それを見込んで、BEV用のコンセントも設置済みだ。
条件はコンパクト、スライドドア、ゴルフ4人分
しかし、である。子供をチャイルドシートに乗せる場合、ドアを大きく開ける必要がある。一般的な駐車場で通常のドアを全開にできるケースは希だ。そのため、リアドアがスライドドアの車が是非ともほしい。しかしスライドドアを装備したBEVは現時点では1車種もないのである(正確には軽バンにはあるのだが)。PHEVも皆無だ。この理由はおそらく現在日本国内ではBEVやPHEVの需要は非常に少ないため、国内メーカーであってもBEVやPHEVは輸出をメインに考えて作られているからだ。海外ではスライドドアの乗用車の需要が少ないのである。
そうなると仕方なくガソリンで走る車を選ばざるを得ないという結論になる。娘夫婦は共にペーパードライバーであり、藤沢の一部には細い道しかないエリアもあるためボディサイズはできるだけ小さい方が良い。しかし子供が生まれたばかりだし、安全装備は最新のものが備わったものが欲しい。運転に自信が無いので、360°モニターもついていてほしい。費用を抑えるため最初は中古も検討したものの、当然のことながら装備が見劣りするため思い切って新車を選ぶことにしたのだ。
現時点でコンパクトかつスライドドアのついている車種としては軽ハイトワゴンにたくさん選択肢があり、登録車でもルーミー/トールやソリオがある。しかし、娘夫婦にはスライドドア以外にもう一つ、車選びで満たしたい基準があったのだ。二人ともゴルフが趣味で、できれば友達夫婦と4人でゴルフに行けるものが良いという。実はこのハードルはすごく高い。なにしろ大人4人が乗った上で4人分のゴルフバッグが積めないといけないのだ。ゴルフバッグは長い上にかさばるので、かなり大きな車でも2~3個しか積めないものが多いのである。
ゴルフダイジェストがYouTubeで主要車種のゴルフバッグ積載テストの動画を公開している。これを見ると、コンパクトボディ、スライドドア、ゴルフ4人の条件をすべて満たすモデルはシエンタとフリードということがわかった。シエンタとフリードは運転席と後席がウォークスルー可能という点も小さい子供のいるファミリーにはありがたい。ここまで選択肢が狭まるとあとは容易である。娘のスタイリングの好みは圧倒的にシエンタ、ということであっさりとシエンタにすることが決まったのだ。
選んだのは「シエンタ」! 最後までカラーに悩む
さて、次は仕様選びである。実用上は5人乗り仕様でも十分なのだが、シエンタは3列目シートが2列目シートの下にきれいに収まるため、いざというときに7人乗れる7人乗り仕様ということも即座に決まった。パワートレーンは燃費だけでなく加速も良く静粛性も高いハイブリッドで即決。
グレードはアダプティブハイビーム(ハイビームの光を細かく制御することで対向車や先行車がいても一部ハイビームの光で照らすことができる)やハンズフリースライドドア(鍵を持っていればドア下の床下に足を出し入れすればドアが開く機能)、停止保持機能付きレーダークルーズコントロール(Z以外は停止保持機能がない)、後席サンシェードといった実用的機能もついたZと、これもすぐに決まった。
最後まで決まらなかったのがボディカラーである。夫婦の一番好みだったのはアーバンカーキだが、このカラーはCMやカタログでもメインに扱われているためか、一般的には一番売れるはずのホワイトを抜いて最も売れているカラーらしい。つまりただでさえ売れているシエンタの、最量販カラーというありふれた選択となるということだ。アーバンカーキでないとすると次の候補はベージュだった。
結論が出ないまま発注の日を迎えたのだが、ディーラーに向かう道中、なぜかベージュのシエンタばかり何台も遭遇した。新しいCMではベージュも登場しており、ベージュを選んだところで被りにくいわけでもないような気がしてきた……。内装を希望のカーキにするなら外装はアーバンカーキの方が似合うということで、ディーラーでの商談の最後の最後でアーバンカーキに決定したのだった。
発注したのが2024年6月2日だったが、結局納車になったのは10月6日、4ヶ月以上待つことになった。私も運転してみたが、実用重視の車にもかかわらず走りもしっかりしており意外と運転を楽しめる。シエンタはヤングファミリーには理想的なモデルといえ、おすすめである。
SPECIFICATIONS
トヨタ シエンタ ハイブリッドZ 2WD(7人乗り)|Toyota Sienta
ボディサイズ:全長4260×全幅1695×全高1695mm
ホイールベース:2750mm
車両重量:1370kg
駆動方式:FF
エンジン:直列3気筒
総排気量:1490cc
エンジン最高出力:91PS(67kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:120Nm(12.2kgfm)/3800-4800rpm
モーター最高出力:80PS(59kW)
モーター最大トルク:141Nm(14.4kgfm)
システム最高出力:116PS(85kW)
トランスミッション:CVT
燃費:28.2km/L(WLTCモード)
価格:303万6600円