「子供の頃に憧れていたことを叶えてあげる」──フォトグラファー澤村洋兵の生き方と愛車グロリアワゴンの関係【フォトエッセイ】
タイパ・コスパばかりが求められるこの時代、都市部に住んでいればクルマなんて必要ないと考える人が大半なのかもしれない。それでも昨今、ヤングタイマーと呼ばれる1980~1990年代のクルマを“あえて”手に入れる人たちが増えている。フォトグラファーとして活躍する澤村洋兵さんもその1人。彼はなぜ「日産・グロリアワゴン」を愛車として迎えたのだろう。愛車と仕事、そして人生の価値観を綴る澤村洋兵さんのフォトエッセイ。
自分が子供の頃に憧れていたことを叶えてあげる
初めまして澤村洋兵です。京都在住でフォトグラファーをメインに活動しています。
こんなことを言ったら本末転倒ですが、京都で暮らしていると、バスや電車が充実していてクルマが必要になる場面はそうありません。
自分自身も「京都の街中に住んでいるとクルマなんて必要ない」「京都を楽しむなら、自転車が便利ですべてが事足りる」「クルマが必要な時なんて滅多にないから、レンタカーやタクシーを使った方がコスパもいい」そんな風に思っていました。
今の愛車に出会うまでは。
「日産・グロリアワゴン(1995年式・Y30型)」
この子を手に入れてから、今までの考えは全て吹き飛びました。ほぼ毎日乗っています。ちょろっと出かけるだけでも乗っちゃいます。というかこの子に乗りたくてどこかに出かけるってことも多いくらいになりました。
なぜそんなことになったのかというと、ここ数年、自分がどう生きていきたいかを考える上で「自分が子供の頃に憧れていたことを叶えてあげる」というテーマを持っているからです。その憧れのうちの1つに「大人になったら自分のクルマを持つ」というトピックがありました。
それが愛車を手に入れるきっかけ。
そういえば子供の頃は「自分のクルマが欲しい」と漠然と考えていて、当時は大人になったら自分のクルマを持っているのだと信じて疑わなかった気がします。それなのに、なんで最近はクルマが欲しくなくなっていたのだろう。考えてみると「あ、子供の頃に走っていたクルマに憧れがあったんだ」ってことに気づいたのです。
現代のクルマに魅力がない訳ではないですが、なるほど確かに「旧車ってかっけーなー」なんてことを感じている自分がいたのでした。オトンとオカンが乗っていたクルマ、近所の兄ちゃんが乗っていたクルマ、当時のテレビで見かけたクルマ、そんな少年時代のイメージが僕の“クルマ観”をかたちづくっていました。
「よし! 自分が子どもだった時代のクルマを買おう」そんな流れで、僕のクルマ探しは始まりました。
なぜ日産・グロリアワゴンだったのか
どんなクルマにするか考えながら調べている時、正直一番欲しかったのは1965~1973年のフォード・マスタング ファストバックでした。でもそもそもの値段が高いこともそうですが、燃費も悪いし、壊れやすいし、荷物もあんまり載せられない。ちょっと不便すぎることがネックになりました。
写真が仕事なので、どうせなら機材もしっかり載せたいですし、ちょうど趣味の釣りも再開したので釣り道具も載せられるサイズがいい。なので「マスタングはまたいつか。夢の2台目だな」との考えに至りました。そもそも古すぎて、自分が子どもの頃に走っていたクルマでもないのですけどね(笑)
ということで、ある程度の燃費の良さや積載面での便利さ、かつ自分が憧れるデザインの旧車。その辺りの条件が含まれるクルマを探しました。そこで見つけたんですよね。「日産・グロリアワゴン」を。
見つけてから1年くらいはいい個体が現れるまで探しました。そもそもあんまり売ってないんです。しかも、なぜかフェンダーミラーに憧れがあって、さらにできればベンチシート、コラムAT、ウッドパネルってのが理想の条件でした。
いろんな中古車屋さんに「見つけたらお願いします」ってな感じに話はしていたのですが、なかなか見つかりませんでした。
憧れが手に入る喜び! 専門店だから仕入れられたクルマ
「欲しいんですけど見つからないんですよねー」なんて色々なところで話していると、とある知り合いが「ほぼ専門店みたいなところが大阪にあるよ」と教えてくれたので、速攻で連絡をとりました。
大阪の「ガレージマーズ」さん。Y30セドリック、グロリア、ハイエースを中心にワゴンやバンをラインナップしていて、アフターパーツも充実し、カスタムもしてくれるという理想的なお店でした。
これまで全然見つからなかったのが嘘のように、連絡してすぐに「ベンチシート、コラムATだけ諦めてくれたらもうすぐいいのが入ってくるよ」と返事が来ました。僕はもちろん「すぐ見に行きます!」と前のめり気味に返事をしたのでした。
数日後に約束をとって見に行くと、目の前に探し続けていた車が……!
「買います」
即決してしまいました。そこから納車まではワクワクが止まりませんでした。
ちなみに、別の部分でも憧れがありまして、ナルディのウッドハンドルとクレーガーホイールにホワイトリボンタイヤ。その3つだけカスタムをお願いしました。
今回、少し古いクルマを買ってみて、個体差がかなりあるので専門的技術や知識、パーツ仕入れの良さなどを考えると、車種ベースで専門的にやってるクルマ屋さんで買うのが良いと感じました。近しいモデルのクルマを買った友達がいるのですが、明らかに僕のものより調子が悪いので。旧車が欲しい人はしっかり調べてから買ったほうがいいでしょう。
カメラ機材も釣り具も積める相棒
というわけで手に入れたマイカー。95年式の日産・グロリアワゴン。一瞬でお気に入りの愛車となりました。
ラゲッジスペースが大きくて荷物もたくさん積めるので、仕事で使うカメラ機材はもちろん、趣味の釣りでも便利。しかも、古くてもそれなりに走るので大満足です。
さらに、移動手段とは別の部分でも活躍してくれています。デザインが渋いのでポートレートの撮影でも使えるんですよね。クルマを借りて撮影するってなると面倒ですが、マイカーで、しかも絵になるとくれば、フォトグラファーとしてはかなり助かります。
チラチラと写っていますが、最近ではなかなか見ないブルーベースの内装ってのも調子がいい。
次はマスタングが似合うおっさんを目指して
何から何までお気に入りのマイカー。しかも旧車なのに調子が良い。絵にもなるし便利な部分も多い。周りにどう思われているかは置いといて、乗ってる時はめちゃめちゃイケてる気分になれて最高です。でもクルマってそんなものですよね。自己満足100%でもかなりハッピーな気分。
おじさんカーといえばおじさんカーなので、大人になったからこそ、このクルマが似合うってのもあるんじゃないかなーなんて思っています。個人的に似合ってると思ってるだけかもしれませんが(笑)
次に欲しいマスタングは、今はまだ似合わない気がしているので、まずはマスタングが似合うおっさんになれるように頑張ります。
ここまで、良いところばかり紹介しましたが、調子のいいめちゃめちゃお気に入りな僕のクルマにも1つだけ問題点があります。
それは「この間、どこどこ走ってましたよね?」ってすぐバレてしまうところです(笑)
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