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最終更新日:2024.07.30 公開日:2024.07.30

スズキの「軽量化100kgチャレンジ」にワクワクが止まらない! 次期アルトは車重600kgより軽くなるのか?

スズキは7月17日に技術戦略説明会を開催し、自動車業界の課題であるカーボンニュートラルを目指すコンセプトを発表した。今回は、その中でも簡潔かつ説得力のあるスズキらしい戦略“軽量化”について紹介する。

文=山崎明

資料=スズキ

「さわやかアルト47万円」というキャッチコピーでデビューを果たした初代アルト。

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スズキらしい「エネルギーの極少化」というコンセプト

2024年7月17日、都内でスズキの技術戦略説明会が行われた。自動車業界共通の課題として、カーボンニュートラルという目標があるわけだが、それに対するスズキの技術戦略がその主たるテーマだった。

スズキには「小・少・軽・短・美」という行動理念がある。つまり「より小さく」「より少なく」「より軽く」「より短く」「より美しく」しようというものだ。今回の技術戦略もこの行動理念に則ったもので、そのコンセプトは「エネルギーの極小化」である。動力源が何であれ、エネルギーの極小化を目指すクルマ作りをすることで、カーボンニュートラルを目指そうという明確なコンセプトだ。

使うエネルギーが少なければ、当然排出するCO2は少なくなる。CO2排出量が少なくなれば、回収や除去しなければならないCO2の量も減らすことができる。そしてそのキーテクノロジーは“軽量化”だ。軽いということはクルマを作る材料が少なくて済むということで、材料の調達・運搬・製造に使われるエネルギーも少なくなる。軽ければ動かすためのエネルギーも少なくて済む。スズキの試算によれば、車体を200kg軽くすることができれば製造時のエネルギーを20%、走行時のエネルギーを6%少なくすることができるそうだ。

乗用車の業界平均とスズキ平均の車重比較(販売加重平均)。

これはBEV(電気自動車)であっても変わらない。車体が軽ければ駆動するモーターは小さくて済み、小さいモーターならばバッテリーも小さくて済む。バッテリーは多くのレアアースなどの資源を必要とするから、小さいバッテリーならその採掘のためのエネルギーも節約できる。バッテリーが小さければ充電時間も短くなるし、リサイクルに必要なエネルギーも小さくて済むのだ。なおスズキのBEVは、2025年以降に発売されるという。

非常にわかりやすく説得力のある戦略である。この戦略に基づくひとつの技術的ターゲットとして、次期アルトの開発目標が示された。この目標はなんと現行アルトより車重を100kg軽くするというものだ。1979年に発売された初代アルトの車重はわずか545kgだった。しかし商用車登録を前提に開発された当時のアルトはラジオすらオプション、2ドアでリアシートは極めて簡素なものだったのだ。

スズライトと歴代アルトの重量。

次期アルトは600kgより軽くなる?

その後アルトはモデルチェンジを重ねるごとに装備を充実させ快適性もアップしたが車重も増加していった。2009年発売の7代目では車重は740kgにまで増加していたのだ。それでも競合のダイハツ・ミラよりも軽かったのだが、2014年発売の8代目では原点回帰を目指しなんと620kgという大幅な軽量化に成功していた。しかし現行の9代目ではデュアルカメラブレーキサポートやサイド/カーテンエアバッグなどの安全装備の充実などからやや重い、680kgとなった。

この現行モデルを基準に100kg削減となると目標車重は580kgとなる。これは3代目アルトと同じ車重である。3代目といえばまだ550cc、ボディサイズも3.2m×1.4mの旧軽規格の時代で、エアコンはオプション、安全装備はエアバッグすらなかった時代である。

現行アルトAグレード(2WD仕様)の車重は680kg。

現在要求される安全性や快適性を満たした上でどうやってこの目標を達成するというのか。もちろんその詳細は明らかにされていないが、数多くの細かい努力の積み重ねによって達成されることは間違いないだろう。

会見中、鈴木社長から1つのヒントになるような発言があった。樹脂パーツを思い切り削減したいというのだ。確かに最近のクルマの内装は樹脂パーツで覆われ、鉄板が剥き出しになっている場所はドアのサッシュ部分などごく僅かだ。しかし過去には初代フィアット・パンダなど鉄板露出量が大きくても魅力的な内装を持つクルマは数多くあった。樹脂部品が少なくなればもちろん軽量化にもつながるしリサイクルも容易になる。

このあたりをどのようにデザインとしてうまく消化して魅力的なクルマに見せていくのか。スズキの行動理念である「小・少・軽・短・美」の最後は「美」である。今から次期アルトの発表が楽しみである。

左から鈴木俊宏 代表取締役社長と加藤勝弘 専務。両者が着用しているユニフォームは39年ぶりにデザインが変更されたもの。

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