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最終更新日:2024.07.26 公開日:2024.05.24

クルマ好きは東京を捨て、郊外に住もう! 若者が理想のカーライフを実現できる街はどこだ?【クルマの経済学】

「若者のクルマ離れ」が叫ばれて久しい昨今の自動車業界。しかし、モータージャーナリストの山崎 明氏によれば、それは「大都市圏に限っただけの話」と指摘する。クルマ好きにとって東京はコスパが悪すぎる? では、首都圏に通うサラリーマンは一体どこに住めば良いのか。その答えは「東京を捨てろ」!?

文=山崎 明

クルマの保有台数、実は今も昔も変わらない!

(画像:(c) beeboys/oben901 - stock.adobe.com)

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若者の車離れが進んでいると良く言われている。しかし統計を見ると人口減少にもかかわらず1世帯あたりの自動車保有台数は2014年の1.069台から1.025台(2023年)とごく僅かしか減っていない(データ:自動車検査登録情報協会)。

都道府県別の世帯あたり自動車保有台数をみると一番多いのが福井県で約1.7台、つまり1世帯2台保有が一般的であることを示す数字だ。逆に最も少ないのが東京都で約0.4台、これは他府県に比べ圧倒的に低い数字で、クルマを保有していない世帯が多いことを示している。

東京都と福井県の自動車保有台数(世帯あたり)の比較。

つまり、車離れが進んでいるように見えるのは大都市圏だけ、それも東京だけが極端にその傾向にあると言える。東京はなんだかんだ言っても情報発信の中心地なので、若者の車離れが進んでいるという話がマスコミに乗りやすいのだろう。

東京とそれ以外の決定的な違いとは?

では東京でクルマを持つことはどれだけ困難なのだろうか。経済的側面で考えると、自動車そのものの価格は新車であっても中古車であっても地域でそれほど変わるものではない。税金も同じだ。任意保険も地域によって若干差をつけている保険会社もあるが、大手損保は本土と沖縄で差をつけているだけで、本土は一律であるから、ここでも保有コストには差が出ない。ガソリン代も都心部はとても高いが、東京都全体で見れば全国平均と大差はない。

 

東京都と他県の月極駐車場代の比較。都内は地域でばらつきがある。

そうなると大きな保有コストの差となるのは駐車場代と考えられる。様々なサイトで調べてみると、東京都の月極駐車場の平均料金は約3万円程度のようだ。これは確かに他県に比べ高く、神奈川でも1万円台半ばで、多くの県は1万円以下、5000円程度の県も多い。しかし3万円というのは東京都全体で、千代田区、中央区、港区では5万円というのが相場だ。23区内でも練馬区や足立区、葛飾区、江戸川区などの安い地域であれば2万円程度で借りることも可能のようである。世田谷区や杉並区でも2万5000円程度で狙えるようだ。

つまり、保有コストで見る限りよっぽど都心に住むのでなければ、23区内でも周辺県と1万円程度の差で借りることができそうである。

令和5年賃金構造基本統計調査で都道府県別の賃金を比較する。(画像:厚生労働省の資料をもとに作成)

さらに賃金を見ると、東京は他府県に比べ賃金がダントツに高い。厚生労働省が実施した令和5年賃金構造基本統計調査によれば、全国平均の318.3万円に比べ東京は368.5万円と50万円も高い。自動車保有台数の最も多い福井県は285.3万円で東京より80万円も少ない。駐車場代の差など問題にならないほど収入差があるのだ。

家賃の差はどうか。しかしこれも駐車場代と同じで、都心部や高級住宅地は高いがエリアによっては常識的な金額で借りることが可能だ。つまり金銭的に車保有が困難なのは都心部と高級住宅地だけで、一般的な住宅地がほとんどを占めるようなエリアであれば車保有は十分に可能なように思える。

東京でのクルマ所有はコスパが悪い!

路線数も便数も多い、都内の通勤列車。(画像:(c) picture cells - stock.adobe.com)

それでも東京都の車保有台数が圧倒的に少ないのはなぜか。それはクルマの保有が経済的に困難なのではなく、所有のパフォーマンスが極めて悪いから、と考えられる。過去の国勢調査(2010年)によると、自己保有車を通勤・通学に使う人の割合は全国平均で4.5割、地方では7割を超える県も多い。この数字は地方ではクルマが必需品で、クルマが好きだろうが嫌いだろうが所有せざるをえないことがわかる。一方東京は1割にも満たないのだ。

東京は公共交通機関が発達している。勤務先に駐車場があるケースも希だ。有料駐車場に駐めれば1日で何千円もかかる。つまり通勤は公共交通機関を使うのが圧倒的に合理的で、所有しても平日にクルマを使う機会はほとんどない。

週末を考えても、都内の繁華街は駐車場代が安くても1時間600円程度と嵩むし、安いところは満車でなかなか駐められないことも多い。ドライブで行楽地に行くにしても特に帰路の高速道路は東京に近づくとほぼ必ずといって良いほど渋滞する。使う機会が多いと考えられる東名と中央道は特にひどい。アクアラインも夕方から夜にかけては渋滞必至だ。気分転換のつもりの週末ドライブがかえってストレスになりかねない。クルマが好きでも、所有を躊躇してしまうのはよくわかる。たまのドライブや大きなものを買いたい場合はカーシェアリングを利用するほうが圧倒的に合理的だ。

クルマ好きが住む理想の街はあるか?

小田原城上空からの眺め。写真右下から左上に向かって、東名と西湘バイパスに接続する小田原厚木道路が走り、写真奥の山の麓には箱根へと続くターンパイクの登り坂が見える。(画像:(c) show-m - stock.adobe.com

とはいってもクルマ好きであれば自分の気に入った車種を所有して愛着を持ちたいという気持ちはあるだろう。マニアックな車種はカーシェアやレンタカーで借りることは困難だ。所有したとしても、十分活用できなければストレスが溜まるだろう。それでは東京に勤務するクルマ好きはどうすれば良いか。

私は東京都港区生まれだが、現在は神奈川県藤沢市に住んでいる。2016年末までは毎日東京に通勤していたが、東京に戻りたいと思ったことは一度もなかった。その理由は私がクルマ好きだからだ。クルマ好きの皆さんには、湘南~西湘エリア(但し鎌倉は除く)に住むことを強くお勧めしておく。その理由はクルマ好き、運転好きであれば行くことが多いと思われる箱根・伊豆エリアに近く、東京への電車通勤もそれほど大変ではないからだ。藤沢は小田急線の快速急行の始発駅だし、JRには通勤時間帯に全席指定の特急「湘南」もある。東京駅にも新宿駅にも1時間かからずに到着できる。

クルマで箱根に行く場合は箱根ターンパイク入り口まで45分程度だし、伊豆方面へのアクセスも楽だ。また圏央道が利用しやすく東名・中央道へのアクセスも容易だし、帰路は都内に向けて渋滞する手前で高速道路を降りることが可能だ。湘南にも渋滞するエリアがあるが、住んでしまえばそれを回避する裏道を知ることができるだろう。日常生活においても、ショッピングモールなどは大型駐車場があり、ほとんどは無料だ。茅ヶ崎や平塚なら箱根・伊豆へのアクセスはさらに良くなる。

ただし、鎌倉はおすすめしない。道路環境があまりに悪いからだ。海沿いの国道134号も藤沢以西は片側2車線だが、鎌倉市に入ったとたん片側1車線となって渋滞する。それ以外も幹線と言えるような道路が事実上なく、脱出に時間がかかるし、週末は鎌倉を訪れる観光客で混雑する。高速道路へのアクセスも悪い。唯一朝比奈ICがあるが、横浜横須賀道路で東名にアクセスするには横浜町田ICまで遠回りすることになるし、帰路の渋滞にも巻き込まれるだろう。

東京を捨てると、違う世界が見えてくる!

30年後を見据えれば、湘南エリアに転居して、週末にクルマを乗り回すのもあり。(画像:(c) One - stock.adobe.com)

クルマ好きなら、東京住まいはとっととあきらめて、郊外に住もう。クルマは使ってこそ価値があるし、クルマが使いやすい場所に住むべきだ。湘南は東京への通勤と車生活を両立できる場所として最適な場所のひとつだ。

一戸建てならば、建て方次第でクルマを複数保有することも夢ではない。事実、私の家は土地35坪と大きくはないが、クルマは4台(屋内2台、屋外2台)駐めることができるスペースを確保できており、家族用のクルマの他にマツダ・ロードスターを所有し楽しんでいる。そのうえ空きスペースもあるのでクルマ好きの友人を招待するのも問題ない。もちろん駐車場代はタダだ。建てたのは30年前の34歳の時で、この家のおかげで様々なクルマを楽しむことができた。

クルマ好きの若者には住む場所と家のありかたを慎重に考えてもらいたい。その後のカーライフが全く変わることになるだろう。

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