自転車を“後付け”で電動に! 話題のホンダ「スマチャリ」発売後の反応が気になる【次世代モビリティ最前線!Vol.4】
自動車ライター大音 安弘が、今みんなが気になる次世代モビリティの開発背景や魅力に迫る連載。第4回目は、ホンダが開発した後付け「SmaChari(スマチャリ)」を紹介。2023年11月に発売開始してから、どのような反響があったのだろうか?
なぜホンダが自転車事業に参入した?
ホンダが自転車向けのサービス「SmaChari(スマチャリ)」を2023年3月に発表し、話題となった。SmaChariとは、電動アシストユニットを取付け、スマホアプリで操作することで、既存の自転車を電動化かつコネクテッド化(通信で車両が外部とつながる)できる日本初のサービスだ。
ホンダが手掛けているのは、スマホアプリと電動アシストユニット(※自動車の製造・販売企業には各種ライセンスやコネクテッドプラットフォームを提供)だ。自転車そのものと電動アシストユニットは、市販品や汎用部品を活用するため、さまざまなタイプの既製の自転車を電動アシスト化・コネクテッド化できることがこのサービスの強みだ。
SmaChariはホンダの新事業創出プログラム「IGNITION」から生まれた。発案者は本田技研工業の野村真成氏で、自身の高校時代、自転車通学に苦労したことが原点となっている。開発当初は、電動アシスト化のシステムのみを検討していたが、市場調査で自転車にも先進安全機能を取り入れて欲しい、という意見があり、これを受けてコネクテッド機能の追加も決定したという。
電動アシスト化で難しいのは、人力とモーターをバランスよく制御することだが、開発チームのメンバーがホンダで培った四輪や二輪開発の知見を活用することで、乗り心地の良い電動アシスト自転車の開発を目指したサービスがSmaChariというわけだ。
SmaChari第一弾「RAIL ACTIVE-e」に試乗!
そして、SmaChari第一弾として商品化されたのが、自転車販売店「ワイズロード」を展開するワイズインターナショナルから、2023年11月に発売された「RAIL ACTIVE-e」だ。
このモデルの外観は、電動アシストユニットが小型であるため、普通のクロスバイクとほとんど差がないように見える。自転車を持ち上げてみると、重量は15kgと一般的な非電動のママチャリと同等。一般的な電動アシスト自転車と比較しても、3~4割は軽いという。
電動アシスト機能は、モーターアシストの「パワー」と「レスポンス」をそれぞれ4段階で調整できるマニュアルモードに加え、走行シーンやペダルの漕ぎ方に合わせて出力を自動調整する「AIモード」の二つを備える。また、安全装備に急発進抑制機能を搭載し、危険な運転から乗り手を守る。時速24kmを超えると、モーターアシストが停止する仕様は、他の電動アシスト自転車と同様だ。
SmaChariの試乗では、まずは「AIモード」から試した。漕ぎ出しからモーターアシストを自動的に調整してくれるので、軽やかにペダルを漕ぐだけで、自転車は滑るように走り出す。漕ぎ手にモーターによる強いアシストを感じさせないのも、SmaChari制御の特徴だ。もちろん強く漕げば、その分アシストも増して速く走ることができる。クルマでいえば、オートマチック車のようなものだ。
次に、マニュアルモードでは「パワー」と「レスポンス」を固定することができる。このモードの主な使用目的は、電動アシスト自転車らしい乗り味や、アシストをあえて弱めたいシーンでの活用くらいだろう。つまり、通常はAIモードで問題がない。このモデルなら自転車に乗る爽快さとクロスバイクのスポーティな走りを損なわず、通勤や通学シーンや、休日のツーリングなど、幅広いシーンで活躍してくれることだろう。
RAIL ACTIVE-e は今年の3月から、ホンダのe-Bikeサブスクサービス「EveryGo e-Bike」にて月額1万5950円で利用可能となったので、興味がある人はこちらをチェックしてみよう。
SmaChari開発メンバーに今後の展開を訊いてみた!
SmaChari開発メンバーのひとりである服部 真さんによれば、「社内ベンチャーにつきチームは6人のみで、4輪車と2輪車の開発部からエンジニアが集まりました。企画や開発、広報といった業務のすべてを6人でこなすので大変です。しかしそのおかげでアイデアや課題などをしっかりと共有でき、短期間での商品化につながったと思います。開発時は、クロスバイクだけでなく、ロードバイク、折り畳み自転車、サーフボードを運ぶ際に乗るビーチクルーザー、荷物運搬に優れるカーゴバイクといった、多種多様の自転車にSmaChariを搭載してみました。そして、どの自転車にも同じソフトを適用して最適な制御ができる電動アシストを実現しました。これはセンサーのフィードバックに対して、常に的確なアシストを行える制御が完成したことを意味しています」と、SmaChariの汎用性の高さを強調する。
もちろん、モーターやバッテリーなどのシステムは、自転車ごとに最適な部品と配置を行う必要があるが、理論的には、どのような自転車でも電動アシスト化できることが実証されたのだ。
第1弾のRAIL ACTIVE-eについて販売店からは、電動アシスト付のスポーツサイクルとしては反響が良い、というコメントを得ているという。また自転車の展示会では、SmaChariに対して自転車メーカーの関係者の関心が高いそうだ。一方で、ユーザーからは既存の自転車に取付け可能という点が注目され、「いつから市販の自転車に後付けできるようになるのか」という声が多いとのこと。しかし、ホンダとしては製品の安全性を重視し、法規の適合認証を取得することを前提としているため、原則として現時点では自転車メーカーが取付けを完了し、適合認証を取得した製品のみとなるようだ。
その背景には、近ごろ路上でもしばしば見かける日本の法規に適合しない違法電動アシスト自転車の増加がある。それらと混同させることなく、安全なSmaChariを普及させていきたいという開発者たちの想いがあるからだ。
上記の理由からSmaChari第二弾については未定としながらも、徐々にSmaChari搭載車を増やせればと、服部さんは意気込みを見せる。その汎用性の高さを活かせば、自転車メーカーも開発費を抑えて、新たな電動アシスト自転車を展開できるため、商品の低価格化にもつなげることができるので、大きな可能性を秘めているといえる。
ただ私自身は、電動アシスト機能よりもコネクテッド機能に注目する。上記でも述べたが自転車の安全運転対策は、乗り手に委ねられている点が大きい。SmaChariのアプリによる道路上の注意や危険な運転の警告などを行えるようになれば、自転車ユーザーの意識改革にもつながり、より安全な交通環境にも繋げることができる。ホンダがコネクテッド機能を搭載したのも、ホンダが2050年交通死者ゼロに向けた取り組みにとっても重要な役目を担うと考えたからだ。
走行速度が速い自転車は、自動車の先進安全運転支援機能だけでカバーするのは、歩行者保護よりもよりハードルが高い。SmaChariには、安全面でも電動アシスト自転車の未来を変える技術となってくれることを期待している。
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