生成AIの誕生でクルマのデザインは激変する? ヤマハが共同開発した「Concept451」の正体に迫る。【東京オートサロン2024】
この1人乗り電動モビリティにはなんと、“生成AIによるデザイン開発”が採用されているという。米国に本社を構えるFinal Aim社は、ヤマハ発動機が展開する小型低速EVの汎用プラットフォームをもとに共同開発。そのプロトモデル「Concept451」が『東京オートサロン2024』で初披露された。カーデザインの未来はいったいどうなる?
Final Aim社とヤマハが共創した背景とは?
製造業界では、デザインとその生産過程において、デザインデータや契約書・知的財産権といった法律などが煩雑化しており、これらの維持・管理作業はものづくりの本来の業務への集中をさまたげることが業界的な課題となっている。また、近年注目を集めている生成AIによるデザイン開発においても、著作権や意匠権といった知的財産権のリスクをふまえたデザイン管理の重要性が日増しに高まっている。
そこで、朝倉雅文氏らが創業し、現在は米国デラウェア州に本社を構えるFinal Aim社は、このような課題を解決してデザインと製造に集中できるよう、独自のスマートコントラクト技術を開発。同社は日米を跨いでデザインと製造業向けにブロックチェーン技術を開発・提案している。
いっぽうで、ヤマハ発動機は小型低速EVの汎用プラットフォーム「YAMAHA MOTOR PLATFORM CONCEPT」を自社で開発すると共に、幅広い活用アイデアや共創・協業パートナーを探索している。そして、多数のパートナーと共同開発を行ったプロトモデルは、東京オートサロン2024へ参考出品された。
今回はその複数のプロトモデルの中から、Final Aim社と共同開発を行い、生成AIやスマートコントラクト技術を活用した小型EV「Concept451」を紹介する。
Concept451誕生で、製造業の裾野が広がるか!?
■Concept451(プロトタイプ)
農地や中山間地で軽快に作業ができる、力強さと機動力を併せ持った1人乗り電動モビリティが「Concept451」。パワフルな動力性能で、不整地での牽引作業も想定した作りとなっている。
非対称なボディや、6連フロントライトに、フロントのピラーを排除したルーフ、ボディ上部のすり鉢状に配置され、荷物を搭載したり物を引っ掛けるのに便利なパイプなど、生成AIならではのアイデアを随所に確認することができる。また、雰囲気がまるで異なるが、実はヤマハが開発した低速モビリティNeEMO(ニーモ)をベースにデザインされている。
■生成AIとスマートコントラクト技術
今回の両社の共同開発においては、生成AIによる大量のアイデア生成から最適解に導くプロセスまでを、最新のAIテクノロジーとデザイナーのノウハウを組み合わせて行ったそうだ。具体的には「車両比較」「2030~2040年の農業」「一人乗りEVモビリティ」といった数多のプロンプト(AIに対する指示や要求)で生成AIに数千単位のアイデアを出させて、デザイナーたちが比較・選定しながらデザインを仕上げていったという。
これにより、従来のデザインプロセスから大幅な期間短縮を実現し、人が考える意匠とは異なる大胆でユニークなデザインが誕生した。
また、生成AIを使ったデザイン開発で課題となる著作権や意匠権といった、知的財産権のリスクを解消するために、ブロックチェーン技術を活用して契約を一定条件で自動化する「スマートコントラクト技術」も活用されている。一言でいえば、「完成したデザインデータを、非常に簡略化されたプロセスで安全に登録・管理できるもの」だという。
飛躍すると、ヤマハの汎用プラットフォームのような存在や、この2つの技術を活用すれば、自分でデザインする知識がなく、データ管理に疎い人でも、アイデアさえあれば製造業界で活躍できるチャンスがあるということだろうか。
このような生成AIによる斬新なデザインと、それを人と人の手によって理想的な形に近付ける開発スタイルは、刺激的で未来的な一つの手法として確立されていくかもしれない。
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