日本車不在のミュンヘン・モーターショー。電気自動車が“愛される”ヒントはデザインにあり!?
9月初旬、ドイツ・ミュンヘンで自動車ショー「IAAモビリティ」が開催された。BEV一色となったショーの会場から、モータージャーナリストの小川フミオがリポートする。
日本車のいない電気自動車だらけのモーターショー
ドイツの自動車ショー「IAAモビリティ」が、2023年9月初頭にミュンヘンで開催されました。奇数年に開催されるIAA(国際自動車ショーを意味するドイツ語の頭文字)ですが、かつてのフランクフルトからミュンヘンへと舞台を移したのが2021年。
今回、2023年のショーのトピックといえば、全体の展示が電気自動車へシフトしたこと。展示車両も、同時に出展した部品メーカーも、それにスタートアップも、みなBEV(ピュアEV)ばかりでした。
日本車の展示がなかったのは残念といえば残念。いっぽう、ドイツと中国の企業は気を吐いていました。なかでも、フォルクスワーゲン・グループは、2033年をめどに完全にBEVのメーカーになることを表明しているだけあって、傘下のブランドはずらりとBEVが並び、フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェ、クプラ(日本未上陸)といったブランドのモデルには、来場者の熱い視線が注がれていました。
特に本丸ともいえるのが、フォルクスワーゲンがお披露目した「ID.GTI コンセプト」。フォルクスワーゲンの金看板ともいえる(ゴルフ)GTIを、電気自動車として開発したものです。
愛されるブランドを目指すVWの戦略とは?
フォルクスワーゲン乗用車部門のトーマス・シェーファーCEOはショー会場で、「フォルクスワーゲンはラブブランド(愛されるブランド)を目指し、誰もが欲しくなるクルマを手がけていきます」と話をしました。またフォルクスワーゲン・グループのオリバー・ブルーメCEOも、「デザインこそが消費者を刺激する」と語り、これからは独自のデザイン戦略で、より気合いを入れていくと発言しました。そんな想いが、全長4メートルそこそこだけれど、大きなタイヤで踏ん張ったような見た目と、それでいてどことなくキュートな顔つきのID.GTIが生まれるきっかけになったのだそう。
フォルクスワーゲン・グループは、ID.GTI コンセプトの発表と同時に、バルセロナのブランド、クプラによる「ダークレブル」という電動スポーツシューティングブレークも発表しました。ID.GTI コンセプトとはまったく方向性がちがいますが、こちらもやはりデザインの可能性を追求したモデル。ゲームからそのまま出てきたようなスタイルで、バットマンが乗っても似合いそう。450馬力で、静止から時速100kmまでを4秒で加速というスペックが掲げられています。
ミニがフルモデルチェンジ!
これまで以上に省エネの追求を目指して開発されたモデルが、メルセデス・ベンツの「コンセプトCLA」。メッセ会場とは別に市内に自社のパビリオンを特設し、そこで華やかなライトショーを展開していました。
BMWは、次世代のEVセダンである「ノイエクラッセ」を初めてショーでお披露目。会場には環境問題のアクティビストとしても知られる俳優のナタリー・ポートマンが訪れ、笑顔でノイエクラッセに乗りこんでいました。
ミニは、クーパーとカントリーマン(日本名はクロスオーバー)が新しくなりました。オープンスペースと呼ばれる市内の特設会場には、どちらのモデルもBEVが展示され、あざやかな黄色を使った会場の雰囲気と相まって、これまで以上に若々しい雰囲気が演出されたのが印象的でした。
アウディは、フォルクスワーゲン・グループのなかでも、スポーティでかつ上級マーケットをねらうブランドのために開発された「PPE」プラットフォームを使う「Q6 e-tron」をチラ見せ。
車体はタイヤにいたるまで真っ白に塗られて、まだ全容は伏せられています。公開の目玉はインテリア。湾曲した大きなモニターを使った、従来とは一線を画したダッシュボードのコンセプトが斬新です。
ポルシェは、メッセ会場では、23年のルマン24時間レース会場で発表された次世代のEVスポーツ「ミッションX」を展示。いっぽう、市内のオープンスペースでは、軽量・高性能を謳う「911S/T」が来場者の人気を集めていました。
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