水没から命を守る脱出用ハンマー。使い方動画や性能試験を国交省が公開
豪雨対策として、絶対に車に備えておきたい脱出用ハンマー。その装備を呼びかけるため、使用方法の動画や破砕性能試験の結果などを、国土交通省が公表した。
脱出用ハンマーで割れるのはサイドとリアのガラス
台風等による豪雨において、身を守るために大切なのは正確な情報を得た上で道路が冠水する前に早急に避難することである。それでも、いきなりのゲリラ豪雨等で車両が水没してしまう可能性もなくはない。そうした非常事態に備えて、国土交通省では、水没時に窓などを割って脱出するためのハンマーを車に装備することを強く呼びかけ、脱出用ハンマーの種類・使い方の実演動画や、51銘柄の脱出用ハンマーに対する破砕性能試験の結果をまとめて公開している。
まず、動画ではJAFが行った車の水没実験を紹介。女性のスタントが実際の車で徐々に浸水する車内からの脱出を試みている。水深30センチでは、内側からドアを開けることは可能だが、水の抵抗でドアが重くなっていて、足などで力を込めないと開けられない状況だ。
水深60センチになるとドアの隙間などから車内への浸水が始まった。水圧のため、ドアを内側から開けることもできない。そのまま浸水は進み、水深120センチでは、女性スタントの肩まで水が迫った状態になる。
ドアが開けられない状態になると、脱出するには窓ガラスを割るしかなく、その際に必要になるのが脱出用ハンマーだ。脱出用ハンマーは早めの使用がよいという。なぜなら、水位が上がってから割ると、ガラスや水が急激に車内に流れ込み、浸水が一気に進むことがあるからだ。
動画の後半では、脱出用ハンマーの使用方法を実演。普通、試しに窓ガラスを割る機会はないので、動画で仮体験をしておくとよいだろう。動画では、現在市販されている主な3つのタイプ、「金づち型」「ピック型」「ポンチ型」の使用方法を確認することができる。
ここで特に注意が必要なのは、どのタイプの脱出用ハンマーでも、フロントガラスは割れないということだ。車の窓ガラスには、「合わせガラス(主にフロントガラス)」と「強化ガラス(サイドガラス、リアガラス)」があり、脱出用ハンマーで割れるのは強化ガラスだけ。つまり、フロントガラスではなく、サイドガラスやリアガラスを割らなくてはいけない。
また、意外と盲点になるのが脱出用ハンマーの保管場所。トランクの中など、車内から取れない場所にあっても意味がない。ドアポケットやコンソールボックスなど、走行中でもしっかりと固定できる場所で、かつシートベルトをしたまま手が届く場所に設置しておく必要がある。
破砕性能試験の結果、51銘柄全てが破砕可能
脱出用ハンマーの破砕性能試験では、市販されている51銘柄の脱出用ハンマー(金づち型31銘柄、ピック型9銘柄、ポンチ型11銘柄)に対してJIS規格、GS規格に準拠した以下2通りの破砕性能試験を実施している。
【JIS規格に準拠した性能試験方法】
・金づち型、ピック型のハンマーは、高齢の女性が腕を振り下ろすエネルギーの推算値相当の衝撃を、実験装置によりガラス面に垂直自由落下させ衝撃を与える。これを3回繰り返す。
・ポンチ型ハンマーは、実験装置によりモーターでガラス面に垂直に加圧し、これを3回繰り返す。
【GS規格に準拠した性能試験方法】
・ドイツの製品安全法(ProdSG法)に準拠した破砕試験で、熟練した技術者(20代~40代男女)が実際に破砕を行う
JIS規格準拠試験では、3回とも破砕できた製品が5割以上、GS規格準拠試験では全ての製品において破砕可能であることが証明された。その上で、製品には性能差、形状等の違いによる使いやすさの差異があることも明らかとなったので、これから脱出用ハンマーを購入する人は参考にするとよいだろう。
また、国土交通省では、JISマーク、GSマークを取得している製品及び純正品等の購入を推奨している。