「路面凍結推定マップ」の実証実験をウェザーニュースとトヨタが開始
道路の凍結箇所を把握する実証実験が全国で2021年2月22日から開始されている。株式会社ウェザーニュース（以下、ウェザーニュース社）とトヨタ自動車株式会社（以下、トヨタ）の共同研究の一環で、ウェザーニュース社は気象データを、トヨタは車両データをお互い持ち寄り、路面凍結の推定結果を「路面凍結推定マップ」としてWebサイトにリアルタイムで反映する。
車両データ×気象データで路面凍結情報を把握
© tkyszk – stock.adobe.com
2018年の「北海道警察『冬型事故の実態』」によると、冬型事故におけるスリップ事故の割合は9割前後にものぼっている。スリップ防止措置としては、除雪や凍結防止剤の撒布などが行われているが、これらはあくまでも巡回やライブカメラ等によって対象道路を特定する。既存の気象観測器は、設置場所や測定間隔が制限されてしまうため、凍結箇所を全線網羅的に、リアルタイムで把握することは困難だ。そのため、スリップ発生の可能性を予防的に告知する手法もほとんど存在しないのが現状だ。
しかし、IoT技術の発達により、コネクティッドカーからはクルマのコンディションデータを取得することが可能だ。そこで、ウェザーニュース社とトヨタでは、ウェザーニュース社が持つ気象データとトヨタのコネクティッドカーから得られる車両データを活用して、気象観測・予測の精度向上やドライバーの安全性向上を目指す共同研究を進めてきた。
2019年10月に実施した「冠水検知実証実験」の概念図 出典：株式会社ウェザーニュース
過去の研究の取り組みでは、2019年10月に気象データと車両データを学習させた冠水検知のAIアルゴリズムを開発。冠水しているエリアを車両が通過する時、アクセル踏み込み量に対して車両の速度が小さくなるという傾向を利用して冠水しているかどうかを推測した。
2019年7月7日8時30分のワイパーとウェザーリポートデータ／【ワイパーデータ】橙：稼働あり 灰：稼働なし、
【ウェザーリポート】赤丸：雨に関する報告があった地点 出典：株式会社ウェザーニュース
また、11月には車両のワイパーデータを用いて、雨雲データでは捉えられない対流圏下層（上空2km以下）の雨雲が降らせる雨や霧雨の降水状況を把握する実証実験を実施。車両のワイパーの稼働状況と気象データとを照らし合わせることで、正確な降水エリアの把握やワイパー強度から雨の降り方の推定などに取り組んだ。
「路面凍結推定マップ」サンプル図 出典：株式会社ウェザーニュース
そして今回、2月22日より全国で実施されているのは、気象データと車両データから道路の凍結箇所を把握するという実証実験だ。前述の通り、既存の気象観測器だけでは、全線網羅的に道路状況を把握することが難しい。そこで本実験では、まずコネクティッドカーの車のブレーキ稼働状況や走行データ等を用いて、車輪がスリップしたとみられる箇所を検出する。
例えば、2020年1月19日、都内を含む関東で雨や雪が降った事例では、車両データにより5026件のスリップデータが検出されている。このスリップデータのみでは、複数の車輪スリップの要因が考えられるため路面凍結であるとの判断は難しい。そこで、気象データ（気温、降雪、降雨など）と掛け合わせることによりスリップにつながる凍結箇所の推定が可能になるのだという。
また同実験では、凍結箇所の推定結果を「路面凍結推定マップ」としてWebサイトにリアルタイムで公開している。路面凍結やスリップの恐れがある地点をサイトでリアルタイムに公開することで、ドライバーの安全運転に役立てていく狙いがある。同時に、ウェザーニュースアプリのユーザーから寄せられる天気に関する報告や写真、コメント等を元に、前述の推定結果の検証を実施し、精度向上のためのシステム改良も行っていく予定だ。これらの実証実験結果、検証を通じて、両社では簡易で網羅的に道路の凍結状態を把握することができるシステムを構築していき、道路の安全管理の貢献と交通事故の防止や長期の立ち往生の回避など、安全な道路通行に寄与することを目指していくという。
なお、収集された車両データにおいては、統計処置を行った上で個人が識別されない形で運用されている。
【道路凍結推定の実証実験 概要】
実施期間：2021年2月22日開始
対象地域：47都道府県
実施方法：道路凍結の推定結果を『路面凍結推定マップ』としてウェブサイトに公開
サイトURL：https://weathernews.jp/v/road_frozen/map.html
