これも時代の流れ!?バス・タクシー運転手の氏名表示義務を廃止へ
国土交通省は、バス・タクシーなどで車内における乗務員等の氏名表示の掲示義務を廃止することを8月1日に発表。同日、道路運送法施行規則等の一部を改正する省令及び関連告示を公布・施行した。
どうして廃止になった?
今回施行された「バス・タクシーなどで車内における乗務員等の氏名表示の掲示義務を廃止する関連法令」は、移動サービス乗務員等のプライバシーに配慮し、安心して働ける職場環境の整備を促進することを目的としている。具体的には、SNSなどの普及によりバスやタクシードライバーの個人情報が悪用されたり、理不尽なクレームや晒し行為の対策であるようだ。
【改正概要】
■旅客自動車運送事業運輸規則関係
・バス・タクシー内における乗務員等の氏名の掲示を廃止。
・バス・タクシー事業者が自動運転車を用いて事業を行う場合に選任する特定自動運行保安員については、作成が義務付けられていた保安員証を廃止し、特定自動運行保安員であることを服装その他の方法により旅客に示すこととする。
■タクシー業務適正化特別措置法施行規則関係
・タクシーの運転者証等の様式を別紙のように変更し、利用者に表示する面から、氏名、顔写真、運転免許証の有効期限を削除。なお、引き続き運転者証等としての機能を保持するよう、氏名等については利用者から見えない面に記載。新しい運転者証等への更新については、経過措置を設ける。
■道路運送法施行規則関係
・自家用有償旅客運送自動車内における運転者の氏名の掲示を廃止し、自動車登録番号の表示に変更するとともに、NPO 法人等に作成が義務付けられていた運転者証を廃止。なお、自動車登録番号の表示義務については、経過措置を設ける。
・自家用有償旅客運送者が自動運転車を用いて旅客の運送を行う場合に選任する特定自動運行保安員について、氏名の掲示及び NPO 法人等に作成が義務付けられていた保安員証を廃止し、特定自動運行保安員であることを服装その他の方法により旅客に示すこととする。
上記の通り、まずはバス・タクシーの乗務員向けに実施される。新たな運転者証(法人タクシー)と事業者乗務証(個人タクシー)は、サイズ(横140×縦70 mm)や、色味などの新規格も定められている。
この流れはどこまで拡がる?
バス・タクシーの乗務員証提示義務の歴史は長く、1956年の省令でドライバーの氏名や車両ナンバーを乗客から見やすい位置に掲示することが義務付けられていた。67年の時を経て、まずはバス・タクシーの乗務員を守るための道路運送法施行規則等の一部改正となったが、この流れは他の業界にも拡がることだろう。
一方で、乗客側にとっては、乗務員がまったく分からない状況というのは不安になるかもしれず、サービスが低下する可能性もなくはない。個人情報保護との兼ね合いで、なかなか難しいケースといえそうだ。
たとえば、株式会社レンタルのニッケンでは、全社員が本名ではなくビジネスネームを名乗る制度に取り組んでいる。これは芸名や源氏名、ライターにとってのペンネームと考えるとイメージしやすい。これなら互いに本名を知らなくても、仕事上の名前さえ知っておけば業務に支障がない。さらに仕事用の名前を持つことで公私の切り替えが明確になり、接客時にもビジネスネームが緩衝材の役割を果たしてくれるそうだ。
ビジネスネームで全てが解決できるわけではないが、サービス提供側も顧客もともに安心できる制度の工夫が、今後はより必要になりそうである。
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