自動車盗難件数ランキング2022。車名別ワーストはまた、あのクルマ。
警察庁の発表した犯罪統計資料によると、2022年の自動車盗難件数は5734件。5年連続で1万件を下回ったが、2021年と比較すると552件も増加した。依然としてゼロにはならない自動車盗難。日本損害保険協会の自動車盗難の統計から、狙われやすいクルマや都道府県、盗難場所、時間帯の傾向を見てみよう。
2022年 自動車盗難ランキング トップはランドクルーザー
警察庁の発表した犯罪統計資料によると、2022年の自動車盗難の認知件数は5734件。昨年の5182件と比較すると552件増加した。自動車盗難件数のピークだった2003年の6万4223件と比較すると、実に90%以上も減少しているが、9年ぶりに増加に転じた。
一方、一般社団法人日本損害保険協会が集計する第24回自動車盗難事故実態調査(保険金が支払われた自動車盗難の件数調査)も同様の傾向となっている。同調査の結果から、どんな種類のクルマがいつ、どこで盗難被害に遭っているのか、自動車盗難の傾向を紹介しよう。
【実態調査の実施概要】
調査期間:2020年1月1日~2022年12月31日
調査対象:損害保険会社21社(損保協会非会員会社を含む)
対象事案:全国で発生した車両本体の盗難事故および車上ねらい(部品盗難含む)で、調査期間内に自動車盗難事故が発生し、保険金の支払いを行った事案。
※同調査は、保険金請求のあった事件・事故データに基づいたもの。あくまで保険金請求実績に基づくため、保険金請求がされていない事件・事故の件数は含まれない。
【2020年調査】
1位:プリウス 383件
2位:ランドクルーザー 275件
3位:レクサスLX 175件
その他:2131件
合計:2964件
【2021年調査】
1位:ランドクルーザー 331件
2位:プリウス 266件
2位:レクサスLX 156件
その他:1672件
合計:2425件
【2022年調査】
1位:ランドクルーザー 450件
2位:プリウス 282件
3位:アルファード 184件
その他:1740件
合計:2656件
2022年の調査結果によると、盗難件数の合計は2656件。前年の2425件から231件増加した。
車両本体の盗難件数が最も多かったのはトヨタ・ランドクルーザー(プラドを含む)で450件。前年の331件から119件増加し、2年連続で盗難件数ワーストとなった。
2位は、トヨタ・プリウスで282件。前年の266件から16件増加。3位は、トヨタ・アルファードで184件。前年の138件から46件増加した。なんと盗難件数上位の3車種がいずれも増加している。
また、前年3位だったレクサスLXは156件と前年から増減なしだが、アルファードに抜かれる形で4位となった。レクサスは車種(LX、LS、RX、ES)別に集計されていることに留意したい。LX単体で見ると156件だが、トップ10入りした3車種の盗難件数を合計すると284件もある。
なお、2021年度の調査と比較しても、4位までの顔ぶれに変化はなく、特定の車種に盗難被害が集中していることがわかる。また、トップ10入りしている車種は全てトヨタが製造している事にも注目したい。
一般的に、トヨタ車は海外でも人気が高く、高値で売買されることが狙われる要因だと考えられている。また、ランドクルーザーなどは悪路走破性が高いこと、レクサスLXやアルファード、ハイエースは人や荷物の大量運搬に適していることから、発展途上国で人気が高いともいわれている。
自動車盗難件数1位の都道府県は愛知県
次に都道府県ごとの自動車盗難件数(車両保険金支払い件数)を見てみよう。
【都道府県別自動車盗難件数(車両保険金支払い件数)】
1位:愛知県 576件
2位:大阪府 370件
3位:千葉県 296件
4位:埼玉県 233件
5位:茨城県 210件
2022年に盗難件数が最も多かったのは愛知県で576件。愛知県は、2019年は3位、2020年は2位と徐々に順位が上がり、2021年に1位となった。これで2年連続のワーストである。
2019、2020年に1位だった大阪府は、2021年に大きく減少させて3位となった。しかし、2022年に370件と87件も増加させ、2位となった。
3位は千葉県で296件。昨年から9件増加したものの、大阪府の増加幅が大きかったため、順位としては下がった。
とはいえ、順位こそ変動しているものの、例年ワースト5までの顔ぶれは変わらない。その5府県を合計すると1685件で全体の約6割を占めることもわかる。これらの地域の共通点は、国際的な貿易拠点となる大きな港があること。自動車を狙う犯罪組織は、盗んだ自動車をすぐに船で運びだせる場所を狙い目と考えているのだろう。
盗難発生は深夜~朝に集中!
次に自動車盗難の発生時間帯を見てみよう。
【自動車盗難の発生時間帯】
深夜~朝(22時~翌9時)56.9%
日中(9~17時)27.23%
夜間(17~22時)9.9%
不明 6.0%
2022年の自動車盗難は、約5割が22時~翌9時までの深夜から朝にかけて起こっていることがわかる。どんな犯罪でも言えることだが、暗がりで見つかりにくいことが、犯行には好都合なようだ。また、多くの人が寝ている時間帯なので、長時間の駐車が多いことも盗難が増える理由だろう。
次に自動車盗難被害車両の年式を見てみよう。
【自動車盗難被害車両の年式】
2012年以前 51.7%
2016年式 10.4%
2018年式 6.7%
2017年式 6.6%
2019年式 6.5%
その他 18.1%
2022年に自動車盗難被害に遭った車両の年式は、最多が2012年以前で51.7%。次いで2016年式が10.4%。2018年式が6.7%だった。
2012年以前の年式は、複数の年式を合計しているとはいえ、被害車両の約半数となっている。10年以上経った年式の車両を所有しているドライバーは気を付けた方がいいだろう。近年の車両は、車両自体にさまざまな盗難対策が施されているため、犯罪組織からすると年式が古い車両ほど盗みやすいと考えられているのだろう。
一方、過去3年以内の新車も全体の4分の1を占める。新型車両は海外などでも人気があるため、高値で転売できると考えられる。そのため、犯行の難易度が高いとしても狙われやすいのだろう。また、新型車両では、リレーアタックやCANインベーダーといった新しい手口によって、電子制御されたドアロックが解除されて盗まれるケースも多発しているという。
自動車盗難を防ぐためにプラスワンの対策を!
自動車盗難に遭わないために、どのように対策をすれば良いのだろう。愛知県警は、単に車の施錠をするだけでなく、以下のようなプラスワンの対策をとるように呼びかけている。
・ハンドルロック、ブレーキペダルロック、タイヤロックをする
ハンドルやブレーキペダル、タイヤを物理的にロックすることで盗難防止になる。また、視覚的なアピールにもなり、犯人が嫌がるので抑止効果があるという。切断して取り外す犯人もいるので強固なバー式ハンドルロックの装着が必要。
・自動車の左側面を壁際に駐車する
新しい年式の自動車を狙うCANインベーダーという手口では、左前のタイヤ付近から機器を接続して車の制御を奪う。対策の1つとして車の左側面を壁際に駐車し、左前のタイヤ付近に人が入り込めないようにすることも有効だという。
・カギの管理をする。後付けのイモビライザーなどを装着する。
玄関先や事務所のキーボックスに入れたカギが盗まれ、自動車も盗まれる被害も多く発生しているという。また、スマートキーシステムの電波を悪用した「リレーアタック」という手口で、カギが開けられることもある。電波を減衰する効果のある専用ケース、ブリキやアルミホイルなどの容器に入れて、分かりにくい場所で保管する。また、後付けのイモビライザーなどエンジンが始動できない電子機器を装着することも有効だ。
・カーアラーム(振動センサー付)を設置する
CANインベーダーという手口では、自動車に連動しているセキュリティを解除して、車内に侵入する。自動車に搭載されたものとは独立に、電池式等の「カーアラーム」(振動センサー付)をドアに取付ける。
・車載GPS装置を取り付ける
車両純正でGPSが搭載されている車種もあるが、犯人は純正GPSを無効にすることもある。犯人に見つかりにくい場所に別途GPSを取り付けることで、車両の位置情報を確認し、発見することができる。
・ナンバープレート盗難防止ネジを設置する
犯人は、窃盗後にナンバーを付け替えて移動するという。ネジ頭が特殊な形状をしたネジに変更することで、ナンバーの取り外しが難しくなり盗難防止となる。
・外から見えないガレージへ格納
自宅敷地内の駐車場であっても盗難被害に遭うケースが多い。可能であれば、外から見えないガレージに格納することで、犯行グループに見つかり難く、さらに盗み難くなる。
・車のセキュリティ状態をチェック
盗難被害に遭っている車種の多くは、ドアのこじ開けなどでクラクションが鳴るようなメーカー標準のセキュリティシステムが装備されている。しかし、システムの設定がオフになっている場合もあるという。ディーラーなどでシステムの状態を確認しておきたい。
犯人はあらかじめ狙いを定めて下調べをし、犯行の機会を窺っている。車両盗難に遭わないために、普段から防犯対策をしておきたい。特に、大きな港に近い都道府県に住み、屋外に駐車している盗難に遭いやすい車種のオーナーの方々は、より注意が必要だろう。
なお、同調査結果は保険金請求のあった自動車盗難件数に基づいた発表である。これらは、あくまで保険金請求実績に基づくため、保険金の請求されていない盗難は含まれないことには注意しておきたい。例えば、車両保険に入っていない車種の盗難などは含まれない。その意味では、今回発表された盗難件数は、全盗難件数の一部でしかない。