イスラエルへの直行便が日本に初就航。観光以外に自動運転系ソフトウェア開発交流の発展にも期待
日本とイスラエルを結ぶ直行便が3月に就航した。クルマの自動運転でも関わり合いが深い両国。就航でどう変わる?
成田ーテルアビブ間を週2便
日本とイスラエル最大の商業都市・テルアビブを直行便で結ぶ、初めての定期便が3月2日より始まった。運航するのはイスラエルの国営航空会社である「エルアル イスラエル航空(ELY/LY)」で週2便を予定(テルアビブ発:水曜/土曜、成田発:木曜/日曜)する。
これまで日本からイスラエルへ渡航するには、韓国や香港、中東などの都市を経由するしかなかった。そのため、フライト時間は20時間前後にも及んでいた。直行便の就航により、成田~テルアビブ間を11~13時間(ジェット気流の関係で東へ向かう成田行きは時間が短くなる)ほどで行き来できるようになる。
この日、テルアビブからの初便(LY91便)はほぼ満席となる乗客238名を乗せ、午後3時13分、成田空港に到着。歓迎の放水アーチをくぐり抜けた後、第1ターミナル18番スポットに入った。この日の機材はボーイング787-8(4X-ERC)だったが、運航日により787-9になることもある。いずれもクラスはビジネス/プレミアムエコノミー/エコノミーの3クラス。
成田に着いた乗客は、航空会社が準備した「ようこそ東京へ」と書かれたアーチを見つけると様々なポーズを取って記念写真を撮影。イスラエルの人たちにとって日本は人気の高い旅行先の一つになっているそうで、搭乗口に駆けつけていた駐日イスラエル大使館関係者とも挨拶を交わすなど、訪日の喜びを味わっていた。
自動車の開発交流に集まる期待
また、イスラエルはソフトウェア系を中心としたIT産業が盛んで、たとえば自動運転に欠かせないソフトウェアでは日本の自動車メーカーとも関わり合いが深い。日産やホンダが採用する先進運転支援システム(ADAS)も、イスラエルで誕生したモービル・アイ社製だ。今回の直行便就航によりその開発交流の促進にも期待がかかる。
エルアル・イスラエル航空で営業を担当するアビアレップスの部門ディレクター・田所雅人さんは、「日本からは全体としてパッケージによる観光客が多いと見ているが、ビジネス観光客の需要もかなり高まると期待している」とした。
直行便の気になるところ
一方で、ユダヤ教を国教とし、隣国と緊張関係にあるイスラエルが経営する航空会社だけに、政治的にもセンシティブな部分も排除し切れない。そのため、セキュリティチェックなど他の航空会社とは異なる面があるのか気になるところではある。
これについて田所さんは、「日本人はビザなし入国ができる。コロナ対策もワクチン3回接種でOKとなる。ただ、イスラエル政府からの要請で、チェックイン時にイスラエルへ行く理由などを含めた質問に答えてもらい、必要に応じて個別に訊ねる場合もある。入国時のパスポートへのスタンプは別紙に押したものを挟んで返却する形を採っており、スタンプによって他国への入国に影響はないと思う」と回答した。
乗客として気になる機内サービスについては「他の航空会社と大きな変わりはない。ワインのサービスもあり、コーシャによって厳選された食材を使っているせいか、食べてみるととても美味しく感じた」(田所さん)という。
駐日イスラエル大使館のギラッド・コーヘン大使は、「イスラエルと日本は外交関係を結んでちょうど70年を迎えた。その記念すべき年にイスラエルのベン・グリオン空港と成田空港が直行便で結ばれることは大きな意義がある。
これから日本はサクラの開花時期を迎える。二国間の関係がサクラの花のように開花することを願っている」と、直行便就航により両国間の関係が発展することへの期待を寄せた。