「お先にどうぞ」を知らせる、交通事故回避に役立つ近未来システムとは?
パナソニックグループは、3月1日に京セラやトヨタなどと連携し、無線装置を使用した交通事故回避の検証を行った。自転車とクルマの事故を減らすために開発された近未来のシステムとは?
近未来の事故回避システムとは?
パナソニックグループは3月1日に京セラやトヨタなどと連携して、高度交通情報システム(ITS)に対応した無線装置を使用した交通事故回避のための検証を行った。これは、電動アシスト自転車とクルマが、ITS向けの専用周波数である760 MHz帯を使用して通信を行い、見通しの悪い交差点でも互いの存在を確認し、意思疎通を図ることで衝突事故を回避することを目的としている。
自転車事故の大半はクルマが起因している
警察庁の発表によると、自転車乗車中の交通事故による死者や重傷者数は減少傾向にある。しかし2020年を見ると、自転車事故の約8割がクルマと関連した事故であり、そのうち46%が交差点での事故だった。
パナソニックグループなど各社は、今回の検証をするにあたって2022年11月2日~9日にかけて自転車ユーザーを対象としたインターネット調査を事前に行った。それによると約6割が、死角から接近するクルマの存在に気づかず、交差点で出会い頭の事故に遭いそうになったことがあると回答した。
事故回避のための実証実験
第1回目の事故回避システムの検証は、そのような状況を踏まえて実施された。検証には、ITS対応無線機を搭載した電動アシスト自転車とクルマを使用。通知にはスマホアプリを利用し、画面を運転者の見える位置に固定して実験は行われた。
まず、電動アシスト自転車とクルマが見通しの悪い交差点に向かって、2方向から走行する。このとき、自転車とクルマ双方のITS対応無線機が情報を送信し、互いが接近していることをスマホアプリによって運転者へ通知する。自転車側のスマホ画面には「クルマが接近」の文字が表示される。クルマ側でも同様に、自転車が接近したことを知らせる通知が表示される。
次に、接近していることに気がついた自転車とクルマの運転者は、ともに減速。クルマが停車すると自転車へ「お先にどうぞ」と通知が送られる。それを受け取った自転車のスマホ画面には「お礼を伝えましょう」の文字が表示される。自転車は、ITS対応無線機につながるボタンを押してお礼の連絡をし、交差点を横断する。
このシステムが一般化すれば、一時停止をした後に目視で右左を確認するという従来の方法に加え、スマホの通知でも安全確認ができるようになり、特に見通しの悪い交差点などでは高い効果を発揮するようになるかもしれない。
パナソニックグループなど各社は、今後も非公道および公道での実証実験を実施し、各種データを収集する予定だ。2025年以降の社会実装を目指すという。