たとえ買えなくてもフェラーリが大好き!──フェラーリによるフェラーリ・ファンのためのモーターショー「ウニベルソ・フェラーリ」とは。
フェラーリによるフェラーリ・ファンのためのモーターショー。それが「ウニベルソ・フェラーリ」だ。開催されたシドニーの会場には、最新モデルから歴史的名車、F1マシンがズラリと並ぶ。ここは本社マラネロか!? と錯覚するほどに賑わった現場から、モータージャーナリストの小川フミオがリポートする。
ここは本社マラネロか!
フェラーリが大好き、というクルマファンは少なくないだろう。でも残念ながら、じっくり接する機会はとても限られています。「ウニベルソ・フェラーリ」は、フェラーリを知りたいと思っているファンのために、(ほぼ)すべてを見せてくれるイベントです。
2019年に第1回が本社のあるイタリア・マラネロで開催され、コロナ禍をはさんで、2022年11月に豪州シドニーで第2回が開かれました。シドニーの優雅な雰囲気の競馬場の一部を使ってのウニベルソ。F1をはじめとするモータースポーツ、新旧の車両、スペシャルモデル、カスタムメイドモデル、それに話題の4ドア「プロサングエ」の公開と、盛りだくさんな内容なのです。
「812GTS」「296GTB」「296GTS 」「SF90スパイダー」「ローマ」といった最新モデルが勢揃い。大きな販売店でもいっぺんにこれらを観ることは出来ないでしょう。加えて旧車では、フェラーリの歴史的な名車として、1968年の「365GTB/4 デイトナ」と、1987年にフェラーリの40周年記念で発表された「F40」が飾られていました。
フェラーリのF1マシン。シューマッハはこのF2004で、2004年シーズン18戦中13勝した。
モータースポーツの分野では、まず(当然ながら)F1。フェラーリが6年連続してF1選手権を獲得した2004年に、ミシャエル・シューマッハがドライブした「F2004」がどんっと置かれています。フェラーリのモータースポーツ活動は、そこだけにとどまりません。23年にはルマン24時間レースのLMHカテゴリーに「499P」なるプロトタイプを参戦させると発表しています(これは展示なし)。
加えて、一般の顧客向けのプログラムも多岐にわたります。プロフェッショナルに近い腕前を持つひと向けから、レースはともかくサーキットは走りたいというひと向けまで、多様な内容を世界各地で展開中です。
フェラーリは”資産”なんて言われてますが、やっぱりサーキットで走らせてナンボというひとたちがいます。そうしないと、フェラーリを語れないから、だとか。なるほど納得。
フェラーリが大好きなすべてのひとに最高の体験を
「イコナ」とよばれるごく限定的に生産される高性能モデルも、昨今のフェラーリの目玉のひとつ。2021年に発表された「デイトナSP3」が、2018年の「モンツァSP2」とともに展示されていました。
840馬力と「フェラーリがこれまでに手掛けた内燃エンジンの中では最も強力なパワーユニット」なるV12搭載のデイトナSP3。ものすごい迫力のボディです。広いはずの展示室が狭く感じるほどの迫力。
カスタムメイドはフェラーリの用語では「テイラーメイド」。3つのプログラムがあって、レースカーのイメージを強調したり、歴史的な引用をカラーリングなどに盛り込んだり、あるいは新素材を使ったり。
フェラーリでは、専任デザイナーがいて、テイラーメイドでの注文のときの調整役を務めるます。「おそろしくフェラーリに不似合いな注文はお断りするのも役目のひとつです」。テイラーメイドプログラムが始まったときのマラネロでの取材で、担当者がそう教えてくれたことがあります。
「ウニベルソ・フェラーリは、たとえ買えなくても、ファンには嬉しいイベントですよ」。シドニーでの取材当日、顔見知りのオーストラリア人ジャーナリストが教えてくれました。
「オーストラリアではそうそうフェラーリを見かけませんし、ディーラーも敷居が高いし。でもフェラーリが大好き、というひとには、最高の体験になります」。ウニベルソ・フェラーリのことを「マラネロが移動してきたようなもの」。フェラーリのスポークスパーソンを務めるチーフ・マーケティング&コマーシャルオフィサーのエンリコ・ガリエラ氏はそう定義していました。