妖精が見えない人必見! 『おたすけ こびと』は、重機を操る仕事人、”こびと”が大活躍するクルマの絵本。
電話1本で駆け付けて、お手伝いをしてくれるこびとが、いたらいいなー。と思ったことはないだろうか。そんな夢を、叶えてくれる絵本がある。クレーンやショベルカーなどの働くクルマを自由自在に操るプロの仕事人、こびとが大活躍する絵本を紹介しよう!
重機の操作はこびとにおまかせ!
絵本『おたすけ こびと』は、2007年に発行されて以来、いまも子供に大人気の働くクルマが登場する絵本だ。
人気の理由は、なんと言っても、ダイナミックなイラストにある。小さなこびとたちが、クレーン車で大きな石をつりあげて、ブルドーザーやショベルカーを自在に操り、砂の山をくずしては運んでいく。
工事現場の足場には大きな穴が開いていて、こびとたちはそこへ次々に材料を運び込む。ショベルカーで石を挟んだら、ハンマーを使ってひびを入れていく。
「どんな しごともおまかせさ。『トトトトトパリン!』」
すると、パリンと割れた石の中からトロッとしたオレンジ色が飛び出してきた。そう、こびとたちが運んでいた石は、卵だったのだ!
石だと思っていた材料が卵なら、ブルドーザーで集めていた砂はなんだったのだろう。その答えは、小麦粉、砂糖、ふくらしこだ。こびとたちは、集めた材料をショベルカーを使って器用に混ぜ合わせていく。
よく混ざったら、今度はポンプ車の出番だ。出来上がった生地を型へ流し込み、オーブンへと運んでいく。
焼き上がりを待つオーブンの前には、作業に関わったこびとたちが、つかの間の休憩をとる様子が描かれている。それはまるで、現場作業員の昼休憩のようだ。座っているこびとや、立ち話をしているこびとなど、それぞれの人間性が垣間見える。
おてつだいのプロ
一般的には3つの工程を守ると、美味しいお菓子を作ることができると言われている。それは、決まった分量で、作る手順を守り、おいしくなあれと気持ちを込めることだ。絵本の中のこびとたちは、この3つを守って作業を進めている。まさにお菓子作りのプロと言えるだろう。
ところで、最後まで絵本を読み終わると、ひとつの疑問が立ち上がる。それは、いったい誰がこびとたちにお菓子作りを依頼したのかということだ。
注目したいのは絵本の最初のページだ。この絵本は、こびとがデスクで電話を受ける場面から始まる。 リアルなイラストとユーモア溢れる世界観に目を奪われていると、大事な部分をつい読み飛ばしてしまうかもしれない。
作者がしかける遊び心が満載の、子供はもちろん大人も楽しめる絵本だ。よみきかせは、3歳くらいからがおすすめ。
『おたすけこびと』
作:なかがわ ちひろ
絵:コヨセ・ジュンジ
出版社:徳間書店
作者紹介
なかがわちひろさんは、翻訳家、作家、画家として、多くの絵本や童話作品を手掛ける。絵を担当した作品、『どうぶつがすき』(作:パトリック・マクドネル/出版社:あすなろ書房)で日本絵本賞翻訳絵本賞を受賞。創作絵本、『天使のかいかた』(出版社:理論社)で日本絵本賞読者賞を受賞している。