看板ひとつで違法停車が激減!「ナッジ」活用の看板とは
株式会社NTTデータ経営研究所と京都市は、四条通沿道(京都府京都市)のタクシーの駐停車マナー向上を目的として、「ナッジ」を活かした看板を設置。その結果、タクシーの違法停車時間が最大9割減少したと発表した。ナッジとは一体何で、どのような看板を設置したのだろうか。
ナッジ活用の看板で違法停車時間が9割減
株式会社NTTデータ経営研究所と京都市は、公民連携の課題解決推進事業「KYOTO CITY OPEN LABO」を実施している。その一環として、四条通沿道(京都府京都市)におけるタクシーの駐停車マナー向上を目的として「ナッジ」を活用した実証実験を行った。
ナッジとは、行動科学の活用により、人々が望ましい行動を自発的に選択するように後押しする手法のこと。罰則やインセンティブによって人の行動変容を促すのではなく、環境デザインのひと工夫によって、人が自発的に行動変容することを促す。
今回、実証実験が行われた四条通では、一部のタクシーによる交差点や横断歩道付近での客待ち、四条通沿道上での違法停車が頻発。バス停におけるバス発着の妨害や渋滞の要因になっていた。その客待ちや違法停車を減少させるため、ナッジの知見を活かした看板を設置した。一体どのような看板を設置したのだろうか。
ナッジを活用した看板が面白い
設置された看板には、四角にくりぬかれた窓が設けられていて、歩道側と車道側に異なる文字がデザインされている。
歩道側には、「この窓から見えるタクシーは、違法停車中です」という文字が書かれていて、窓から車道が覗けるようになっている。
一方、車道側には、「ドライバーさん違法停車みんな見てますよ」という文字とともに、大きな目玉のイラストが描かれ、窓からは歩道側が覗けるようになっている。
看板を設置した結果、設置前は、1日平均約45分だった違法停車時間が、看板設置後は約5分と、最大約9割減少。さらに、所管の警察署からは、タクシーにかかわる苦情の頻度が、設置前後で大幅に減少したとの報告があったという。
この看板をどちらから見るかで印象が全く異なるのが面白い。この看板を見た歩行者は、違法停車をしているタクシーを窓から覗いてみようと思い、それを見たタクシーの運転手は、窓から監視をされている気分になり、そそくさと退散したくなることだろう。
タクシー乗り場でもナッジを活用した看板を設置
同実証実験では、四条通沿道のタクシー乗り場2か所(西行:高島屋前、東行:大丸前)にも、先程とは異なる看板を設置。タクシー乗り場における客待ちの停車台数が、規定台数をオーバーしないようにする実験も行った。
タクシー乗り場に、「1台目先頭」、「2台目先頭」、「3台目先頭」、「4台目先頭」と書かれた緑色の看板を設置。客待ちのタクシーが適正な車間距離となるように促した。
その結果、看板設置前に比べ、設置後では、規定台数を超過して停車する台数が、1日当たり西行で約7割、東行で約3割減少したという。
このようにどちらの実験でも、ナッジの知見を活かした看板の効果は大きく、タクシーによる違法停車の大幅な減少に役立ったようだ。
NTTデータ経営研究所と京都市は今後も、実証実験で得た知見を踏まえ、ナッジなどを活用したマナー啓発支援に努めていくという。
【実証実験概要】
設置場所:(1)四条河原町交差点南東角 (2)四条通沿道のタクシー乗り場2か所(西行:高島屋前、東行:大丸前)
測定内容:(1)タクシーの違法停車時間 (2)タクシー乗り場において規定台数を超過して停車する台数
実施前測定期間:2022年2月8~10日14~16時
実施後測定期間:2022年2月15~17日14~16時