波乱の最終戦!SUPER GT 2021年シーズンが閉幕
2021年のSUPER GTは、GT500クラスでau TOM'S GR Supraが、GT300クラスではSUBARU BRZ R&D SPORTがシリーズタイトルを獲得し閉幕した。今年も最後までタイトルの行方がわからない白熱したレースが繰り広げられた。
多種多様なマシンが揃うSUPER GTの世界
SUPER GTは楽しさが幾重にもつまったレースです。
日本を代表するレースシリーズであるSUPER GTがGT500クラスとGT300クラスを混走させる形で開催されていることは、皆さんもご存じでしょう。GT500クラスには、トヨタ、ホンダ、ニッサンがSUPER GTのために開発した「世界最速クラスのGTマシン」が参戦。日本だけでなく世界中から集まった腕利きドライバーたちによる迫力のバトルを堪能できます。GT300クラスも参戦するチームやドライバーは精鋭揃いですが、いまや「GTレース界の世界規格」となったGT3車両が数多くエントリーするいっぽう、日本独自の車両規格であるGT300車両やマザーシャシー車両なども出場。多種多様なGTマシンが華やかな戦いを繰り広げます。
しかも、GT500クラスとGT300クラスのレースを個別に実施するのではなく、あくまでもひとつの競技をして行なうことで、SUPER GTはより複雑で味わい深いレースになっているのです。
好調なNSX-GT、追うGR Supra
2021年シーズンの最終戦が、まさにそんなレースとなりました。
最終戦を前にして、チャンピオン争いのトップに立っていたのはNo.1 STANLEY NSX-GT(山本尚貴)。山本選手は2020年最終戦でも最終ラップで奇跡の大逆転を果たし、チームメイトの牧野任祐選手とともにタイトルを勝ち取りました。その牧野選手は2021年開幕戦を病気で欠場したために獲得ポイントが山本選手よりも少なく、たとえ山本選手がチャンピオンに輝いても牧野選手はタイトルに手が届かないという複雑な状況となっていました。
今年はNSX-GTを走らせるホンダ勢が全般的に好調で、前述した最終戦前の段階では、チャンピオン争いの2番手がNo.8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺)、3番手がNo.17 Astemo NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット)と、トップ3を独占。最終戦の開催地である富士スピードウェイでは、ここのところNSX-GTが2連勝しているので、トップ3を占めるNSX-GTのいずれかがチャンピオンに輝くと考えるのが順当な予想でした。
ただし、タイトル獲得の可能性を残して最終戦に挑むチームは、ほかにもあります。No.36 au TOM’S GR Supra(関口雄飛/坪井翔)、No.12 カルソニック IMPUL GT-R(平峰一貴/松下信治)、No.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太)の3チームが、そのチャンピオン候補でした。なかでも2台のGR Supraにとって富士スピードウェイはホームコースでもあるので、ここは負けられない一戦だったはずです。
逆転劇でタイトルを獲得
11月27、28日に開催された最終戦では、予選でNo.14 ENEOS X PRIME GR Supraがポールポジションを勝ち取ったものの、No.1 STANLEY NSX-GTも2番グリッドを獲得しており、タイトル争いの行方は予断を許さない状況。それでも、この時点でNo.1 STANLEY NSX-GTはNo.14 ENEOS X PRIME GR Supraを20ポイント引き離していたので、No.1 STANLEY NSX-GTが有利という状況は揺るぎませんでした。ちなみにNo.36 au TOM’S GR Supraは予選4位、No.8 ARTA NSX-GTは予選6位、No.17 Astemo NSX-GTは予選10位という結果です。
そして決勝レースでは、No.1 STANLEY NSX-GTは途中4番手まで後退したものの、このままのポジションでフィニッシュすればタイトルを勝ち取れることもあり、山本選手は落ち着いて周回を重ねていました。ところが、66周のレースの55周目に、GT300クラスの1台がNo.1 STANLEY NSX-GTと接触。ここでダメージを受けたNo.1 STANLEY NSX-GTはピットで修復作業を行なってからレースに復帰しましたが、トップからは7周遅れとなっていて、実質的にタイトル争いからは脱落。代わってトップに立ったNo.14 ENEOS X PRIME GR Supraを、No.36 au TOM’S GR Supraがレース終盤にオーバーテイクしてトップに立つと、そのまま優勝。関口選手と坪井選手は、目を見張るような逆転劇でタイトル獲得を決めました
このように、最終戦のレース終盤までタイトルの行方が予想できないSUPER GTは、まさに実力伯仲の激戦で、多くのファンを惹きつけて止まないのは当然といえるかもしれません。
いっぽうのGT300クラスもGT500クラスに負けず劣らずの熱戦で、最終戦の段階で計5台にタイトル獲得のチャンスがありました。その5台の内訳を見てみると、日本独自のGT300車両とマザーシャシー車両が計2台、GT3車両が計3台で、微妙にGT3車両のほうが有利に思えますが、GT3車両の出場台数が20台前後、GT300車両とマザーシャシー車両が8台ほどという比率を考えると、GT300車両とマザーシャシー車両のほうが若干優勢といえるかもしれません。また、タイヤの銘柄を見ると、ダンロップとヨコハマが2台ずつで互角なのに対し、ここのところ常にタイトル争いをリードしてきたブリヂストンは1台と、意外な混戦模様となっていることがわかります。
そしてタイトル争いでは、ポイントリーダーとして最終戦に臨んだNo.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)が予選でポールポジションを獲得すると、決勝レースでも粘り強く戦って3位でフィニッシュし、スバルとして初のGT300タイトルを手に入れました。
こうして、数々のドラマを繰り広げながら2021年シーズンは幕を閉じました。GT500クラスのマシンがそろって新型に生まれ変わる2022年も、きっとエキサイティングな戦いが演じられることでしょう。