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最終更新日:2021.12.27 公開日:2021.12.27

「ネコ科の動物」|第42回アニマル”しっかり”みるみる

世界中から集まったさまざまな動物たちを、間近で見て・感じられる施設がサファリパーク。そんなサファリパークで動物たちの世話をする飼育員さんに、知っておくとちょっぴり動物通になれるポイントを、 "しっかり" ご指導いただきました。富士山の自然豊かな環境にある富士サファリパークの動物展示課飼育担当市川さんに、「ネコ科の動物」について解説してもらいました。

文・上條 謙二

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トラ:水に浸かるのが好き

園内で飼育されているトラは、元々ロシアの寒い地方に生息する「アムールトラ」という種類。寒い地域で暮らす動物種なので、冬の寒い時期は動きが活発になる。雪は好きで、雪が積もった日には雪遊びをする姿が見られることも。

 2022年はトラ年です。トラは、ネコ科の中で最も体の大きな動物種です。富士サファリパークにはトラ以外にも、大型のネコ科の動物が飼育されています。今回はそんな大型のネコ科の動物たちである、トラ、ライオン、ヒョウ、チーターの特徴を比較します。同じネコ科の動物でも違いがあったり、似た特徴があったりとさまざまです。各動物の主な特徴を表(下表)にまとめました。

●ネコ科大型獣4種の特徴比較

 園内で飼育されているトラは、トラの中でも最大の「アムールトラ(別名シベリアトラ)」と呼ばれる種類です。オスの体長は2.7~3.1m、体重は180~260kgほど、メスの体長は2.4~2.8m、体重は130~160kgほどあります。

 野生下でのアムールトラは、繁殖期以外はオスもメスも単独で暮らします。単独で行動するトラの狩りは、獲物の近くまで忍び寄り、飛び掛かって捕らえるという方法です。アムールトラの全身の筋肉は大きく発達しているので、瞬発力も優れ、体もしなやかなので、瞬時に獲物を捕らえます。

 「体全体ががっしりしています。特に前足が太いのが特徴」(※市川さん以下同)です。発達した前足の筋肉(肩の筋肉も発達している)と鋭い爪と牙を使って組み伏せてしまえば捕らえられた動物はなすすべもないでしょう。

 また「園内の個体は、夏場の暑いときなど高くなった体温を下げるために水によく浸かる」そうです。野生下のトラは、狩りの前に水に入って自分の臭いを消すと言われています。水を苦手にしているネコ科大型獣が多い中で、水に入ることを好むトラの習性は、ネコ科の中では珍しいと言えます。

 「全体的にオレンジ色の地色に、黒い縞」が特有の体の模様も、森林や草原の中で獲物に近づいたり、草や木の陰などに隠れて待ち伏せするときに周りの景色に溶け込ませる効果があると言われています。

ライオン:ネコ科にはまれな「群れ」を作る

家父長然として威張っている印象のあるライオンのオスだが、園内ではメスを気遣ってエサを譲ってあげるシーンも見られるという。

 ライオンは、ネコ科の動物には珍しく群れ(プライド)を作って暮らします。野生下のライオンのプライドでは、メス同士が子供の世話を協力して行ったり、共同で狩りもします。

 ライオンは、イエネコと同様に水浴びを含め、水に浸かることを避ける傾向が強く、獣特有の体臭が強くします。中には「大きい水たまりを走って通過していく若い個体がたまにいる」とのことですが、基本的にライオンは、水に浸かることで自分の臭いが消えてしまうことを嫌うようです。

 またたてがみは、オスの成獣に特有なものです。たてがみの長い毛は、頭から首や胸までを覆っています。「個体差はありますが、年をとってくると黒っぽく、濃い色に変わっていく傾向が見られる」そうです。たてがみの毛の豊富さと色の濃さは、健康状態が良好であることを示し、ライバルに対して威圧感を与えているとの説もあります。

 ライオンにとって群れはとても重要です。群れの存在を示すため、個体同士で鳴き合います。「咆哮(ほうこう)」と呼ばれる行動で、朝方や夕方に、遠くに向かって野太い声で鳴き合います。一頭あたり、少なくて3~4回、普通は10回程度。数分間ぐらい続きます。「展示ゾーンから数百m離れた入口付近の駐車場でも聞こえることがある」そうです。イエネコも発情期を迎えると大きな声で鳴き合うことがありますが、ライオンの場合は群れの存在を示すために大きな声で吼えるんですね。

ヒョウ:木登り上手は、子育ても木の上で

ヒョウと言えばヒョウ柄。その特徴は、背中から腹部にかけてある「梅の花びら」のような斑紋。

 ヒョウは、アフリカからアジアまで広く生息している動物です。ジャングルやサバンナ、高地までさまざまな環境の中に適応して暮らしています。

 「ヒョウは木登りが得意な動物です。園内の個体は、木を組んだ高いところに登って、寝ていることが多い」そうです。

 木登りが得意な理由は、ヒョウの狩りの方法と関係していると考えられています。ヒョウはジャングルなどの木が生い茂った環境で、樹上に身を潜めて獲物を待ち、その下を通る獲物に飛びかかって仕留めます。あごの力がとても強いので木の上まで獲物を口でくわえたまま引っ張り上げることができます。ときには木の上に置いた獲物を数日間にわたって保存することがあるそうです。メスのヒョウの場合は、子供が親離れするまでの半年から1年ほどは育児も樹上で行います。

 ヒョウの特徴と言えば、体を覆う独特な形の斑紋です。 「胴体(背面部から腹部にかけて)にはいわゆるヒョウ柄と呼ばれる梅花模様や黒色の斑紋があります。体色は淡黄色や褐色(地域や個体などによって異なる)です」

チーター:出しっ放しの爪の優れた点は……

園内のチーターは、休んでいるときも離れたところにいる草食動物をしっかり目で追っていることがあるという。

 ネコ科大型獣の中でも最も速く走るというより、陸上で最速の動物であるチーター。生息するのは、熱帯雨林地方を除くアフリカ大陸や中近東の一部などのサバンナ地帯です。

 チーターの体には、速く走るためのつくりが各所に備わっています。

  「頭が小さく、胸郭(胸を取り巻く骨格)が大きく、四肢は細くて長いです。しかも後ろ足の筋肉はよく発達しており、体全体は細いのに腿は太い」そうです。小さい頭は、全力で走るときの空気抵抗を小さくします。大きな胸郭は、高い心肺機能を支える大きな心臓と肺を無理なく収めることができます。細くて長い四肢も筋肉が発達した後ろ足も、早く走るためにはとても有利です。

 そして爪。チーターは他のネコ科の大型獣と違って、爪の出し入れができません。走るときも歩くときも爪は出っ放しです。実はこの爪が「スパイク」の役目を果たし、爪が確実に地面に食い込んで、一気にトップスピードに持っていける走力を支えています。 最後に、ネコ科の大型獣の共通点について伺いました。

  「トラ、ライオン、ヒョウ、チーターの共通点の一つは、瞳孔(光線が目玉の中へ入る入口。瞳のこと)が丸いこと」だそうです。 トラ、ライオン、ヒョウ、チーターは暗い場所に入ると、瞳孔は丸型のまま大きくなり、明るい場所に行けば、瞳孔は小さな丸型になります。その点は人間と同じです。ちなみに同じネコ科のイエネコの瞳孔は紡錘型(両端がとがった円柱状)をしています。

 トラ、ライオン、ヒョウの赤ちゃんは、瞳の色が「キトゥンブルー」と呼ばれる、独特な灰色がかった深い青色です(チーターは別)。この青色は成長するにつれて変わってしまいます。イエネコの赤ちゃんも瞳の色は「キトゥンブルー」です。

 またトラ、ライオン、ヒョウ、チーターとも、イエネコ同様に「毛繕いをしたときに飲み込んだ毛を毛球として吐き戻すことがある」共通点があるそうです。毛繕いをするのは、ネコ科動物全般に共通する行動のようですね。

ネコ科の大型獣は、体が柔らかくしなやかなので、クネッと体を丸めて背中まで顔を持って行って毛繕いをします。舐める仕草は、イエネコっぽいです」と市川さん。

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