「バーバリーシープ」|第37回アニマル”しっかり”みるみる
世界中から集まったさまざまな動物たちを、間近で見て・感じられる施設がサファリパーク。そんなサファリパークで動物たちの世話をする飼育員さんに、知っておくとちょっぴり動物通になれるポイントを、 "しっかり" ご指導いただきました。富士山の自然豊かな環境にある富士サファリパークの動物展示課飼育担当金井さんに、「バーバリーシープ」を解説してもらいました。
長い毛に顔を突っ込んで砂ぼこり対策
「バーバリーシープ」は、アフリカ北部(モロッコ、モーリタニア、スーダン、ニジェールなど)の砂漠や乾いた山岳地帯の険しい岩場などに生息する偶蹄目ウシ科の動物です。体長は1.3~1.7m、体重は100~145kgほどあります。
ヒツジの仲間で、顎から前足にかけて生える長い毛が特徴で、別名「タテガミヒツジ」とも呼ばれています。その毛の長さは、約20~30㎝。体毛に比べると若干白っぽい色をしています(全身の体毛は茶色)。砂漠に生息する動物らしく、「風が強いと目や鼻などに砂ぼこりが入るのを防ぐため、その長い毛の中に頭を突っ込んで顔を隠してしまうこともある」(※金井さん以下同)そうです。
独特な形の角もバーバリーシープの特徴の一つです。頭頂部から2本の角が、一旦外側に伸びた後、内側へとカーブするように生えています。角の断面は丸みを帯びた三角形で、表面にはネジのような切れ込みがあり、ギザギザしています。角はオスもメスも生えますが、オスの方が発達しています。群れの中の上位のオスになると、角の長さは80㎝を超えることもあります。繁殖期になると、オス同士は角をからませるようにして、突き合いを互いに繰り返し、メスと交尾をする権利をかけて戦います。シカの仲間に見るような激しい争いはせず、相手を傷つけるほどには至りません。「大体3、4回角を合わせたらちょっと離れ、またその行為を何回か繰り返す感じで終わる」そうです。
また小さくて硬い蹄は、山岳地帯の岩場に適応したつくりになっています。「蹄は2つに分かれており、それぞれが縦方向に可動できるのでどちらかの蹄がちょっとしたでっぱりにひっかけることがでれば、そのまま体重をかけて登っていくことができます。しかも岩場でスムーズに歩けるように、足裏には肉球のような滑り止めがあります」。そんなバーバリーシープは岩登りが得意な動物らしく、「園内では展示場の岩場に登っていることが多い」そうです。
傾斜のきつい岩場を駆け上がったり、立っていることすら容易でない斜面で暮らしているので、身体能力が高く、部屋の壁を蹴り上がって三角跳びを見せることもあります。成獣なら、立ったままの状態から助走せずに2mほどジャンプすることができます。「体高が50㎝くらいの子供が、部屋の中でいきなり1.5mくらい跳躍してびっくりしたこともあった」そうです。
大人は鳴き声をめったにあげない
バーバリーシープは、オス1頭に対して、メス3~5頭と子供たちからなる群れを形成します。群れは、多いときは20頭ほどになることもあります。
生まれたばかりの子供の体重は4~5㎏、体長は20~30㎝ほど。体に比べて頭が小さいことが特徴です。生後3、4か月ほどが授乳期間、6~10か月ほどで離乳します。オスもメスも約1年半で性成熟します。
バーバリーシープのコミュニケーションは、体を舐めたり、臭いを嗅いだり、鼻先を合わせる方法で行います。鳴き声によるコミュニケーションは、成獣になるとほとんど行いませんが、「子供は、親を呼ぶときに、ヤギに近い『メ―』というやや高めの声で鳴く」そうです。
また元来、砂漠や乾燥した山岳地帯に生息する動物のため、「当園で飼育しているバーバリーシープは、水に浸かることを避ける傾向があり、暑さや寒さにも強い」そうです。
おとなしいのは逃げ出すための演技!?
そんなバーバリーシープは、どんな性質の動物なのでしょうか?
「ふだんはのんびりしていておとなしそうに見えるのですが、気が強く頑固な面がある動物です。なわばり意識が強く、自分のなわばりを一旦決めたら、他の動物を寄せ付けないこともあり、エサ場に陣取って、自分より大きな動物を追い払うこともある」そうです。 最後に「バーバリーシープあるある」についても伺いました。
「それは、『おとなしくしているからと思って保定(目的とする処置を行うために行う最小限の拘束)する力を少し緩めると、それを察知して途端に暴れ出して逃げ出そうとすること』です。とくにオスの成獣になると、体重が100㎏を超えるものもいて、人間の大人が3~4人で押さえつけても押し返されてしまう」そうです。おとなしくしているのは演技なのかも。油断は禁物のようですね。