災害時には踏切が救援の障害に。全国181か所の踏切で対策
災害時には、遮断器が下りたままになった踏切道が、救援等の障害になることがある。そこで国土交通省は、災害時の管理方法を定めるべき踏切道181か所を指定し、対策を開始した。遮断機が下りたままになることを防いだり、緊急車両の通行をスムーズにすること等が目的だ。2025年度までには、約500か所の指定および管理方法の策定を目指す。
全国181か所が「災害時指定踏切」に。
国土交通省は、地震などの災害発生時に踏切の遮断機が下りたままになることを防ぎ、緊急車両の通行をスムーズにするため、全国の踏切181か所を「災害時指定踏切」に指定した。
2018年6月に発生した大阪北部地震において、大阪府摂津市の踏切の遮断機が約9時間にわたって下りた状態になった。当時、市消防本部に出動要請が入り救急車が出動したが、遮断機が下りていたため迂回。通常7分で到着する道のりに42分費やしてしまった。このことから、災害時の踏切管理に関する課題が顕在化した。
国交省はこのような事態の再発防止のため、4月に施行された改正踏切道改良促進法に基づき、以下の条件を満たす踏切を災害時指定踏切とした。
【改正踏切道改良促進法に基づいた条件】
(a)次のいずれにも該当する踏切道
・重要物流道路または緊急輸送道路と鉄道が交差する
・1時間に10本以上の列車が通過する
・人口集中地区にある
・遮断機が継続的に下りている場合に、迂回により10分以上余計に時間を要する
(b)地域の実情などを考慮して、災害発生時などに避難または緊急輸送の確保を図る必要が特に高いと認められるもの
今回指定された踏切181か所のうち、約30か所は東京都内の踏切道。大阪府や愛知県、福岡県などの主要都市部でも多数指定された。
※181か所の踏切道一覧は記事下部「この記事の画像を見る」ボタンからご覧いただけます。
災害後は、速やかに点検できるよう計画を立てておく。
災害時指定踏切に指定されると、踏切道を管理する鉄道事業者と自治体等の道路管理者は、下記のような踏切道災害時管理基準に添って、災害時の管理方法などをあらかじめ策定しなくてはならない。たとえば、災害発生後には速やかに踏切道の点検が開始できるよう、計画を決めておく必要がある。
【踏切道災害時管理基準】
(a)鉄道事業者と道路管理者、関係機関の間に災害時の連絡体制が整備されていること。
(b)鉄道事業者と道路管理者が災害時にとるべき、下記の措置について手順や内容を定めた対処要領を作成していること。
・災害発生後、速やかに踏切道の点検を開始すること
・踏切道における継続的な通行の遮断発生や、踏切遮断時間の見込みについて情報を提供すること
・踏切道における継続的な通行の遮断を解消すること
・踏切道およびそこに接続する道路の維持を行うこと
(c)鉄道事業者および道路管理者は、災害時に適切な管理が行われるよう、訓練を定期的に実施すること
踏切の遮断機は列車が接近すると自動で下りる仕組み。災害時に列車が止まると、近隣の踏切は遮断機が下りたままになるという。これを上げるには鉄道会社の作業員が現地で安全を確かめ、手作業をする必要がある。しかし、列車運行再開に向けた作業も並行するため、鉄道会社単独で遮断桿の手動による上げ下げと、道路の安全確認や管理を行うことは現実的でなかった。今回の管理基準策定により、自治体と鉄道会社、消防などが連携することで、救急車や警察車両のスムーズな通行が実現することが期待される。
国交省は2025年度までに順次、約500か所を災害時指定踏切に指定し、災害時に踏切道が障害にならないよう、管理方法の策定を目指す。