高速道路の博物館。NEXCO東日本の総合技術センター
高速道路の土木技術者の研修や、先端技術の研究・開発などを行うNEXCO東日本の施設「総合技術センター」が取材陣に公開された。そこには、かつて路床や橋脚だったアスファルトやコンクリート、鉄骨などの実物が陳列され、さながら高速道路の博物館のようだった。
技術者の研修、先端技術の研究・開発を行う施設
NEXCO東日本が2020年3月から運用している「総合技術センター」が報道陣に公開された。
この施設が設立された背景は2つあるという。1つ目は、新人の土木技術者の研修。現在は新規に高速道路を建設する機会は減り、現場で土木建設技術を習得する機会も減っている。その中で新人が技術を研修する場が必要だった。
2つ目は、効率的な安全管理手法の確立。高速道路の新設が減る一方で、既存高速道路の老朽化など、メンテナンスや管理業務は増えている。将来の労働人口の減少も確実で、効率的な手法を研究・開発する拠点が必要となってきている。
総合技術センターではこのような社員研修、先端技術の開発のほかに、高度専門家と呼ばれるエキスパートが在籍している。高度専門家は、技術的な課題に直面している工事現場や、災害・緊急事態が発生した復旧現場へアドバイス・サポートを行うスタッフだ。
VRや3D動画を活用した土木技術研修
総合技術センターの研修設備には、体感して学ぶために最新のテクノロジーが導入されている。例えば、実物を見ることが難しい高所にある橋の内部構造をVR(ヴァーチャルリアリティ)で巡回点検するや、路面や路床が傷む過程を3D動画で視聴できるなどの機器が用意されている。
巨大な実物が所狭しと並ぶ高速道路の「博物館」
そして総合技術センターではVRとともに、実物を知ることも重点が置かれている。その実物として、かつて路床や橋脚だったアスファルトやコンクリート、鉄骨などが総合技術センター内の開発・実習棟に所狭しと並べられている。展示方法も、路床や法面(のりめん)などはカットされ、その断面から構造や劣化などを観察できるようになっている。
展示物のなかには2016年熊本地震によって変形してしまった九州道の橋桁、東日本大震災で被災した仙台東部道路のゴム支承などといった災害によって破損してしまったものまである。
安全管理手法の研究・開発
総合技術センターには、路床などの耐久試験を行う実験室・試験室もある。そこには、腐食や老朽化などを短時間で再現できる腐食促進試験機と、温度・湿度をコントロールできる低温恒湿試験機があり、凍結防止剤による腐食に強い材料の研究や、凍害・雪害に対する案内標示板や照明機器などの耐久試験を行っている。このような実験を重ねることで、最先端技術を確立しているのだ。
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