「リカオン」|第22回アニマル”しっかり”みるみる
世界中から集まったさまざまな動物たちを、間近で見て・感じられる施設がサファリパーク。そんなサファリパークで動物たちの世話をする飼育員さんに、知っておくとちょっぴり動物通になれるポイントを、 "しっかり" ご指導いただきました。富士山の自然豊かな環境にある富士サファリパークの動物ふれあい課飼育担当小野さんに、「リカオン」を解説してもらいました。
くしゃみが狩りに成功する決め手⁉
リカオン(英語名:アフリカンワイルドドッグ)は、アフリカ大陸のサハラ砂漠以南の草原やサバンナなどに生息する食肉目イヌ科の動物です。体長は80~120cm、体重は20~40kgほどで、およそ中型犬くらいの体の大きさです。ちなみに「リカオン」という名前ですが、ギリシャ神話に登場する狼に姿を変えられた王の名前「リュカオン」が由来だといわれています。
リカオンの特徴は、群れの中の個体同士が協力しながら狩りを行うことです。そのため複数のオスとメスと子供からなる群れである、「パック」と呼ばれる集団を組織します(10頭ほどの個体で構成されることが多い)。パックの中で一番地位の高いオスとメスがリーダーとなり、繁殖はこのペアのみで行われます。オスとメスとは性差がなく、狩りも育児も共同で行います。パックは父系集団で、オスはみな血縁関係にあり、生まれたパック内に留まります(メスは1~3歳ほどでパックを離れる)。このパックによる狩りの成功率はとても高く、一説には7~8割ほどともいわれています。
その狩りの成功を左右するのが「くしゃみ」なのだとか。パックで狩りを行うとき、まずパックのリーダーが風邪をひいたときに出る「クシュン」という感じのくしゃみを発することで、パック全体にくしゃみが広がっていきます。このリカオンのくしゃみは単なる生理現象ではなくて、狩りへの参加の意思表示のようなものだと考えられており、くしゃみを発する個体が多いと狩りに参加する頭数が多くなって狩りの成功の確率が高くなり、反対にくしゃみを発する個体が少ないと狩りに参加する頭数が少ないので確率が下がってしまうといわれています。ただこのくしゃみですが、「園内のリカオンでは見られることは少ない」(※小野さん以下同)そうです。
ここ、富士サファリパークでは現在8頭のリカオンが3つの群れを作っていますが、オスが2頭しかいない(2つの群れにそれぞれオスが1頭ずつ、もう一つの群れはメスだけ)こともあって、どの群れも狩りを行うパックとしては組織されていないようです。
また群れで狩りを行うリカオンにとって、コミュニケーションをとることはとても大切です。特に鳴き声のバリエーションが豊富で、人間にはその意味が分からない鳴き声を含めて10種類くらいあります。例えば「エサの取り合い時は激しい鳴き声の『キャンキャン』と、仲間を呼ぶときは『ホーホー』という鳴き声を出します」。
白・黒・黄褐色の不規則な模様
リカオンの身体的な特徴はいくつかありますが、まず目に付くのが全身を覆う不規則な模様と体色です。背から腹部、足にかけて、白・黒・黄褐色のまだら模様が広がっています。顔は口吻から額にかけては黒に覆われています。まるで絵の具で体の柄を描いたようにも見えるところから、別名「ペインティングドッグ」とも言われています。
次なる特徴は、その体臭です。臭いのもとは肛門腺から分泌され、アンモニアに似たような強烈な臭いがします。「特に夏場に獣舎の掃除をするときは、鼻がマヒしてしまうほど。人工哺育をしたときの部屋は、その後2年くらいはリカオンの臭いが残っていました」。一説には、この強い体臭は集合するときに役立っているともいわれています。
活発で、よく跳ね回る
そんなリカオンとは、どんな性質の動物なのでしょうか?
「とても活発で、よく跳ね回る動物です」とのこと。
最後に「リカオンあるある」についても伺いました。
それは「積雪すると雪の塊の中に鼻を突っ込んだりして遊ぶこと」です。リカオンは、本来寒さは苦手なのですが、好奇心が強く、頭のいい動物なので、園内で雪が見られるのが珍しくてついつい遊びたくなってしまうのでしょうね。