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最終更新日:2021.01.29 公開日:2021.01.29

「ワオキツネザル」|第20回アニマル”しっかり”みるみる

世界中から集まったさまざまな動物たちを、間近で見て・感じられる施設がサファリパーク。そんなサファリパークで動物たちの世話をする飼育員さんに、知っておくとちょっぴり動物通になれるポイントを、 "しっかり" ご指導いただきました。富士山の自然豊かな環境にある富士サファリパークの動物ふれあい課飼育担当伊藤さんに、「ワオキツネザル」を解説してもらいました。

くるくら編集部 上條 謙二

名前の由来は、黒白の輪状の模様から

ワオキツネザルが、手足を広げて日光浴をするのは、日差しを受けて体温を上げるため。ときには目を細めて気持ちよさそうな表情も見せる。

 ワオキツネザルは、アフリカ大陸の東側に位置するマダガスカル島南部の森林地帯に生息する霊長目キツネザル科の動物です。その名前の由来ですが、尻尾が黒と白の輪状の模様になっていることから、ワオ(輪尾)キツネザルと名付けられたといわれています。体重は2.5〜5.5kg、体長は30~45cm、尾長が55〜65cmと尻尾が長い動物です。

 一見キツネを思わせる独特な顔の造り(キツネザルの名前の由来)だけでなく、その行動にもユニークな点が見受けられます。その一つが、手足を広げた大胆なポーズで日光浴をすることです。というのはワオキツネザルは、体の構造が原始的であるために代謝が低く、体温が低いときには、体を温める必要があります。そんなとき太陽の方向に腹部を向け、両手足を広げるポーズで日光浴を行って体温を上げているのです。日光浴をする姿を正面から見ると、どっしり座って通せんぼしているようにも見えます。

「代謝が低くなりがちな朝は、そんな格好で日光浴をする姿が見ることができる」(※伊藤さん以下同)そうです。

匂いで群れの中の序列を決める

長い尻尾を体にぐるっと巻きつけるワオキツネザル。手首などから分泌される匂い物質を尻尾にこすり付けている。

 ワオキツネザルの特徴は、匂いのある分泌物を体に擦り付けたり、特定の場所にこすり付けるなど自分の匂いをアピールすることで、群れの中での序列を決めることです。

 分泌物が出る臭腺は、メスは陰部付近のみ、オスはさらに手首や肩の周りにもあります。序列の高低は、ケンカによっても決まることはありますが、各個体が同じ場所に匂いを擦り付ける方法で決定します。

「例えば木の枝などに入れ替わり立ち替わり匂い付けが行われます。付けられた匂いの上に別の個体がさらに付け直すことが繰り返されます。この行動はオスもメスも行います」。最終的に匂いのアピールが強かった個体が群れの中の高い序列に付けるのです。

 ところで長い尻尾を体にぐるっと巻きつける行動をとるワオキツネザルがいますが、この習性は、分泌物を尻尾にこすり付けていると考えられています。ワオキツネザルが自分の匂いが付いた尻尾を高くピンと上げて歩く行動がよく見られますが、「これも自分の存在を誇示するとともに、尻尾から漂う匂いのアピールで周囲に自分の存在や縄張りを示しているのです」。

 続いてのワオキツネザルの特徴は、メスがオスよりも優位にあるということです。 「現在は園内にメスはいませんが、エサを与えるとメスが先にとってしまいます」。 野生種では、ワオキツネザルはメスを中心にオスも混じった5~25頭の群れを作り生活しています。メスが優位なので、中にいる個体はメスの血族です。同じ群れの中にオスもいてそのオスの中でも順位はありますが、オスのボスというのは存在しません。

 またワオキツネザルは、コミュニケーションを頻繁にとり、その手段もいくつかあるといいます。

 「鳴き声」は、ワオキツネザルが用いるコミュニケーション手段の一つで、さまざまな声を使い分けています。仲間に話すときは「ワーォ、ワーォ」とネコのような声を出し、遠くにいる仲間を呼ぶときは「コーン、コーン」とキツネのような声を出します。威嚇するときは「ケッ、ケッ、ケッ」(危険が迫っているとき、群れが不安に陥った時も)と鳴きます。

 「『ケッ、ケッ、ケッ』は緊急時の声なので、飼育員が離れていても群れに何かがあったことがすぐに分かるんです」。ワオキツネザルだけでなく、飼育員さんともコミュニケーションがとれてしまうんですね。

 「毛づくろい」もコミュニケーションをとる方法の一つ。お互いの体をなめ合ったり、毛を整えてあげたりします。毛を整えてあげる際には、薬指にある「化粧爪」という長い爪を使います。他の指も使うことはありますが、化粧爪は長いので細かいところや毛の中の奥の方まで届くのでよく使われます。ワオキツネザルは歯も毛づくろいに利用します。下の前歯6本が上向きではなく前向きに突き出してくし状に生えているので(これを「くし歯」という)、この歯を毛づくろいに役立てます。

温厚で好奇心が旺盛、しかも仲間意識が強い

ワオキツネザルは、昼行性で、気温の高い昼は木陰で休み、朝、夕方に活発に活動する。

「ワオキツネザルは、感情表現がとても豊かな動物で、自分の好物があると耳をパタパタと動かすんです」と飼育担当の伊藤さん。

 そんなワオキツネザルとは、どんな性格の動物なのでしょうか?

「温厚で好奇心が旺盛、友好的で人にも懐きます」。

 また群れ意識の強い動物で、仲間をとても大切にします。だから「群れに危険が迫っていたり、異変を感じると、それを察知した個体がすぐに鳴き声などを使って知らせます」。仲間意識が強いのですね。

 最後に「ワオキツネザルあるある」についても伺いました。

 それは「それぞれの個体がお気に入りの場所が決まっていて、そこで座ること」です。 その姿にもまた個性があって、「あぐらをかいているような姿で休憩する個体もいる」とか。どことなく人間の様子を思わせる面もあり、親しみを覚えてしまいますね。

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