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最終更新日:2021.10.21 公開日:2021.10.21

ポルシェ、メルセデス、アウディ、BMW他。「IAAモビリティ2021」で初公開された次世代EVコンセプトを一挙紹介!

モーターショーの会場に展示されたクルマは、ほぼすべてEV! ドイツ・ミュンヘンで開催された「IAAモビリティ2021」で発表された新世代のコンセプトカーを、ジャーナリストの会田 肇が解説する。

文=会田 肇

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EVラッシュの欧州メーカーたち

ミュンヘンのオデオン広場で開催されたメルセデス・ベンツの会場。漁網のように張られた繊維は、一部が鉄鋼の15倍もの強度を持つ繊維で、リサイクルも可能という。(写真提供:Daimler)

 これまで高い人気を集めていたドイツのフランクフルトモーターショー(IAA)が、今年から開催地をミュンヘンに変更し、装いも新たに「IAAモビリティ2021」として9月7日~12日の日程で開催された。

 出展した自動車メーカーは、ドイツ国内勢としてはBMW、メルセデス・ベンツ、アウディ、ポルシェ、フォルクスワーゲンと一通り出展したが、その一方で海外勢はフランスのルノー、米国のフォード、韓国の現代/起亜が出展したのみ。日本メーカーに至っては1社も出展しなかった。オンラインでの情報公開が進み、今後はこうした傾向がグローバルで展開されるようになるのかもしれない。

 そんなIAA Mobilityに出展された、各社からワールドプレミアされた注目車について紹介していきたい。

【BMW】EVコンセプト『1ビジョン サーキュラー』
100%リサイクルを目標に、サステイナビリティとラグジュアリーに真正面から取り組む

BMWが将来の100%リサイクルを目指したEVコンセプト『1ビジョン サーキュラー』。右は同時発表された電動アシスト自転車「BMW Motoland Vision AMBY」。(写真提供:BMW)

BMWのEVコンセプト『1ビジョン サーキュラー』。バッテリーにはリサイクル可能な原材料で作られた有機電池技術を導入する。(写真提供:BMW)

BMWのEVコンセプト『1ビジョン サーキュラー』。内外装のデザインにも「循環=サーキュラー」コンセプトを採り入れている。(写真提供:BMW)

 BMWで注目されたのが、EVコンセプト「1ビジョン サーキュラー」だ。そのコンセプトは約20年後の2040年を見据え、サステイナビリティとラグジュアリーに真正面から取り組んだことだ。プレミアムモビリティにおいて、世界で最も持続可能な自動車メーカーになることを目指すBMWグループの目標を象徴する1台として誕生している。

 素材は「リサイクル材料使用率100%」と「リサイクル可能性100%」を目標として開発し、選んだ材料は製品のライフサイクルを終えた、いわゆる二次材料やバイオベースの原材料が中心。BMWならではのキドニーグリルはヘッドライトとグリルを一体化してデジタルサーフェス化。バッテリーには100%リサイクル可能な全固体バッテリーを採用し、貴重な資源の使用を最低限にとどめつつ高いエネルギー密度を達成できるとした。

 全長はおよそ4mというコンパクトさで、それでいながら大人4名がゆったりとくつろげる室内空間を実現。内外装のデザインにも「循環=サーキュラー」コンセプトを採り入れ、「RE:THINK」「RE:DUCE」「RE:USE」「RE:CYCLE」の4原則を盛り込んだ。インストルメントパネルは全体がキャビンにV字に突き出た次世代のフィジタル・ユーザー・インターフェースに進化。車両の”思考”が視覚化される、近未来のインターフェースを実現した。

【メルセデス・ベンツ】EVコンセプト『ヴィジョン AVTR』
前後以外に横や斜めに移動できる高い敏捷性を備え、脳波によるコントロールも実現

メルセデス・ベンツが発表したEVコンセプト『ヴィジョン AVTR』。映画『アバター』のパートナーシップの成果として製作された。(写真提供:IAA)

メルセデス・ベンツのEVコンセプト『ヴィジョン AVTR』。爬虫類のようなデザインで、リアには全方位に移動可能な「バイオニックフラップ」を33個装備。(写真提供:IAA)

メルセデス・ベンツのEVコンセプト『ヴィジョン AVTR』。脳波を分析して様々な操作を行える「ブレイン・コンピュータ・インターフェイス(BCI)」を採用する。(写真提供:Daimler)

 メルセデス・ベンツのEVコンセプトで抜群の存在感を放っていたのが「ヴィジョン AVTR」だ。メルセデス・ベンツと映画『アバター』のパートナーシップの成果として製作されたもので、自動運転EVのコンセプトカーとして出展された。その最大の特徴はそのフォルムにある。爬虫類のようなデザインで、リアには全方位に移動可能な「バイオニックフラップ」を33個装備。前後だけでなく、横や斜めに移動できる高い敏捷性を備えているという。

 EV用バッテリーにはリサイクル可能な原材料で作られた有機電池技術を導入する。これは、レアアースなど希土類と金属をまったく含まないグラフェンベースの新しい電池技術で、バッテリーは完全にリサイクルできるのも大きな特徴となる。1回の充電で、最大700km以上の航続距離を確保し、充電も15分以内で完了できるという。

 見逃せないのは脳波を分析して様々な操作を行える「ブレイン・コンピュータ・インターフェイス(BCI)」の採用だ。SF映画の話ではなく、リアルな技術としてメルセデス・ベンツはBCIに注目しているのだ。具体的には思い描くことで目的地の選択や車内照明の切り替え、ラジオの選局などをコントロールできるようになるという。会場には自由に体験できるコーナーも用意された。

【フォルクスワーゲン】EVコンセプト『ID.LIFE』
ファミリーが様々なシーンで楽しめる、シンプルかつクリアな内外装を持つエントリーEV

VWが出展した、未来を見据えて環境を意識したEVコンセプトカー『ID.LIFE』。フロントに172kWの電気モーターを搭載した前輪駆動を採用する。(写真提供:VW)

VWのEVコンセプト『ID.LIFE』の内装。バッテリー容量は57kWhで、航続距離は400km。静止から100km/hまでは6.9秒という俊足ぶりも発揮する。(写真提供:VW)

VWのEVコンセプト『ID.LIFE』。停車時にはインパネ上部の大型スクリーンで映画やゲームなどが楽しめる。(写真提供:VW)

 フォルクスワーゲン(以下:VW)が出展したコンセプトカーは、未来を見据えて環境を意識したコンパクトなEV「ID.LIFE」だ。内外装にリサイクル可能な素材を多用し、デザインはきわめてクリアでシンプル。そこには不要な装飾エレメントやアドオンパーツは一切装着されていないが、それでいて高品質さにも富んでいる。

 ID.LIFEが主張する最大の特徴は、きわめて多用途な使い勝手を持つ車両において、持続可能性とデジタル化を実践したことだ。ミラーはインナーミラーやアウトサイドミラー共にすべてデジタルミラーとし、車両情報などはスマートフォンに映し出すことが可能。さらに停車時にはインストルメントパネル上部に配置した大画面のスクリーン上に、映画やゲームなどを映し出して楽しむことができるという。

 プラットフォームは”ID.ファミリー”で共用する電気自動車用「MEB(モジュラーエレクトリック マトリックス)」を使用したが、ID.LIFEのボディサイズはそれよりも少しコンパクトな全長4.1m。フロントに172kWの電気モーターを搭載した前輪駆動を採用する。バッテリー容量は57kWhで、航続距離は400km。静止から100km/hまでは6.9秒という俊足ぶりも発揮するという。価格はエントリーを意識して2万ユーロを目指すとしており、2025年の発売を予定する。

【アウディ】EVコンセプトカー『グランドスフィア』

アウディのEVコンセプトカー『グランドスフィア』。

 アウディはEVコンセプトカー「グランドスフィア」(Audi Grandsphere)を初公開。これまで発表した3台のコンセプトカーに共通するのが「スフィア(sphere:球体)」で、新コンセプトのインテリアと新たなデジタル体験を提案。

 EV専用に開発された「プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック(PPE)」をベースに、前後アクスル間に容量で約120kWhのバッテリーを搭載する。駆動系は4WD「クワトロ」ドライブシステムを採用。ツインモーターによって、システム全体で最大出力720hp、最大トルク97.9kg・mを発生するという。

【ポルシェ】コンセプトスタディモデル『ミッションR』

ポルシェのコンセプトスタディモデル『ミッションR』。

ミュンヘン市内のオープンスペースに設けられたポルシェのブース。IAA Mobility2021では至るところでこのような場所が展開された。(写真提供:IAA)

 ポルシェが発表したのはコンセプトスタディモデル「ミッションR」。最先端のテクノロジーと天然繊維強化プラスチックなどを採用し、将来に向けた持続可能な電動カスタマーレーシングのコンセプトカーでもある。フル電動マシンによるワンメイクシリーズ開催に向けての指標としても注目され、ポルシェが抱くモータースポーツへの想いが凝縮されたモデルとなっている。

 それだけに与えられたパフォーマンスは圧倒的だ。新開発の2つの電気モーターを搭載し、フロント/320kW(435ps)、リア/480kW(653ps)のパワーを供給。サーキットでは現行のポルシェ911 GT3カップと同じラップタイムで周回するという。

【ルノー】EVコンセプトカーのルノー『5(サンク)プロトタイプ』

ルノーのEVコンセプトカー『ルノー5(サンク)プロトタイプ』(手前)。左奥に新型EV「メガーヌE-TECHエレクトリック」。

 フランスのルノーは、2024年に量産化を予定するEVコンセプトカーのルノー「5(サンク)プロトタイプ」を出展した。ルノー5は、フランス乗用車史上最多の生産台数を記録した、いわばルノーにとって歴史上の名車でもある。そのルノー5へのオマージュがこのEVコンセプトで、モダンな未来に適合する100%EVのコンパクトなシティカーとして開発されている。

 イエローのボディカラーはオリジナルのルノー5のデザイン要素を取り入れたもので、ポップかつ楽しさを表現。その現代的なアプローチは、様々な仕上げや素材に表れているという。また、ルノーは新型EV「メガーヌE-TECHエレクトリック」も発表した。

【現代自動車】EVブランド『アイオニック』シリーズ

現代自動車が出展したEVセダン『アイオニック6』(右)と、自動運転レベル4のタクシー『ロボタクシー』。

 韓国の現代自動車は、世界の趨勢にいち早く反応してEVの新ブランド「アイオニック」シリーズを立ち上げた。IAA Mobilityではその人気車種「アイオニック5」をはじめ、2022年に発売を予定するEVセダン「アイオニック6」、さらに24年に発売する予定のEV販SUV「アイオニック7」を出展。自動運転レベル4のタクシー「ロボタクシー」も公開して注目を浴びた。

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