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Cars

最終更新日:2021.05.20 公開日:2021.05.20

世界中の名車が集結。今年のオートモビルカウンシルはスゴかった!

まさに奇跡。日本にはこんなにも美しいクラシックカーが存在するのか。去る4月、千葉県幕張で開催された自動車イベント「オートモビルカウンシル2021」の模様を、カー・ヒストリアンの越湖信一氏が解説。魅惑の世界へといざなう。

文と写真・越湖信一

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クラシックカーを愛でるイベント

 クラシックカーへの関心がより高まっているのを感じる昨今であるが、折りしも幕張メッセにて「オートモビルカウンシル」と称す、日本最大級のクラシックカーイベントが開催された。

 ”クラシック・ミーツ・モダン”というキーワードの元にクラシックカーを中心とする(ニューモデルも一部含む)自動車趣味の祭典として今回が6回目の開催となる。筆者自身もワンメイクのオーナーズクラブを主宰しているのだが、”ひいき”となるメイクがあると、なかなか他メイクのクルマと深く接する機会がなくなるということを感じる。

 また、SNS等におけるバーチャルな情報も役に立つが、実際のクルマをじっくりと眺め、触れるというきっかけが逆に少なくなっているように感じる。そういった中で、オートモビルカウンシルのような総合的にクラシックカーを愛でることのできるイベントというのは価値あるものだと思う。

 4月9~11日の3日間開催された当イベントは以下のようなカテゴリーから構成されていた。主催者のテーマによる展示、自動車メーカー&インポーターによる展示、そしてヘリテージカー販売店による展示、マルシェ(蚤の市)、プレミアムライフスタイル、オーナーズクラブ&イベントオーガナイザーによる展示といった具合だ。

 その中でも大きなボリュームを占めるのが、ヘリテージカーの販売とマルシェのブースだ。ヘリテージカーの販売に関しては「オリジナルの姿を忠実に復元、レストレーションされた原則25年以上前のクルマ」という規定がされており、多くの展示車両に関して会場における商談が可能となっている。

 また、マルシェは自動車関連の書籍やモデルカーやアクセサリー、カーケア関連などジャンル多彩なアイテムが並ぶ。多くの出展者は毎年参加のお馴染みの皆さんで、会場はさながらクラシックカーに関わる人々の交流会のようであった。

どの車も生き物のようだ

 今回の主催者テーマ展示のひとつは「時代を進めたラリーカーの戦闘美」。日本やイタリア生まれの珠玉のラリーカー・コレクションが集結した。そして、展示された個体はどれも実戦で活躍した貴重な個体であるところに注目したい。

 クルマは止まっている時と走っている時では全く佇まいが異なる。クラシックカーのコンクールデレガンス(美しさを競う自動車競技)は、基本的に走行できるクルマであることが要求され、参加車両はギャラリーの間を走り抜け、皆を楽しませてくれる。きれいなグリーンの上に展示された時にはあまりピンの来なかった車両も、その走る姿を見て、強く魅了されることもままある。

 このオートモビルカウンシルは屋内イベントであるため、走りの姿を見ることは叶わないが、今回のラリーカー達は、まさに私達の目の前で走り出しそうな臨場感を与えてくれた。ボディの汚れやへこみ、レースで勝つために作成されたハンドビルドのダクトや空力パーツなど、どれもまさに生き物のようだ。

 サファリ・ラリーのウイニング・カーであるダットサン・ブルーバード1600SSSからWRCで活躍したスバル・インプレッサWRCまで、1970年から2008年まで40年余りのリアルなヒストリーを楽しむことができる。これらのマシンを眺めるなら、”クルマは新しければ新しいほど良い”、という考えとはまた違った重要な価値観があることに気づかせてくれる。

ダットサン・ブルーバード1600SSS

たくさんのクラシックカーが日本に存在するという奇跡

 イタリアのマシンも凄いラインナップだ。このような素晴らしい個体が日本に存在することはまさに奇跡でもある。SNSの情報を見たイタリアの友人から、山のような数のメッセージをもらう。

「このリアホイールアーチのところをクローズアップして撮った写真を送ってくれ」なんていう少し面倒くさいマニアックなメッセージばかりだが、興奮する友人たちとやり取りしていると、私までうれしくなってしまう。

ランチア・ラリー 037 エボリューション2

ランチア・ラリー 037 エボリューション2

ランチア・ストラトス HF Gr.4

フィアット・アバルト 131ラリー

 ランチア・ラリー 037 エボリューション2、ランチア・ストラトス HF Gr.4などがアイコニックなどは間違いないが、もっとも私の友人たちが興味を持ったのは1977年のモンテカルロ・ラリーで活躍したフィアット・アバルト 131ラリーであったのも面白い。

 今回はコロナ禍の影響もあり、子供達のギャラリーが少なかったのは残念だが、きっと彼らもこれらラリーカーの機能美と無骨さにきっと興味を持ってくれるはずだ。メカの塊のような質感を持った蒸気機関車に憧れるように。

マツダ×ルマン24時間レースの展示も見逃せない

「マツダ、ルマン優勝までの軌跡」特別展示もまた見逃せない企画であった。日本車初のルマン24時間レース制覇を成し遂げた787Bには思わず見入ってしまった。マツダRX-7 254、マツダ737Cといった制覇に至るチャレンジを併せて見ることができたことで、更にヒストリーの理解が深まり、素晴らしい。

 ムーンクラフト製のボディをまとった737Cはレストア工場から会場へ、当イベント開幕ギリギリのタイミングで運ばれてきたと聞く。ホワイトのフロントフードにペイントされた赤い丸というカラーリングを見て私は、「これは日の丸の国旗かな?」などと思ったのだが、「これはラッキーストライクのスポンサーロゴなんですが、まだレストアが間に合わなくて、周りの枠や文字が完成していないから赤丸なんですよ」と聞き、その誤解に大笑い。そんなクラシックカーならではの臨場感を楽しめるのも楽しい。

マツダ737C(写真手前)

マツダのデザイン・トップの前田育男氏。後ろはルマン・ウイナー車の787B

オーナーズクラブに参加するという楽しみ

 ちなみに私が関与しているマセラティのオーナーズクラブ、「マセラティ・クラブ・オブ・ジャパン」は第1回目からこのイベントの趣旨に賛同し参加している。ボランティアで行っているオーナーズクラブにとって、このイベントに参加することイコールビジネスでは全くないし、ここに参加することでたくさん会員を勧誘しようというわけでもない。

 では、何のために参加するのか? それはメンバーと一緒に展示内容を検討し、形にする。そして開催日には各地に点在するメンバーがスタンドへ集まり、クルマを眺めてあれこれ話し合う。そんなプロセスや場を楽しむために参加しているのだ。

 今回はフィアット・マネージメント期に企画されたギブリIIのスペシャルモデルのプロトタイプを展示した。正式モデルとなるはずであったが、突然のフェラーリ傘下入りの為、キャンセルされた幻のモデル。そんな訳で製作されたのはこの1台のみだ。ギャラリーの皆さんにそれを説明するのも楽しいし、SNSを媒体に海外のマセラティスタからも多くのメッセージを受け取った。

筆者が代表を務めるマセラティのオーナーズクラブ「マセラティ・クラブ・オブ・ジャパン」とそのメンバーたち

筆者が代表を務めるマセラティのオーナーズクラブ「マセラティ・クラブ・オブ・ジャパン」とそのメンバーたち

 少しハナシは逸れるが、皆様もこういったオーナーズクラブの門を叩いてみてはいかがであろうか? クラブに参加することでメンバー達が経験していたノウハウや貴重な情報を共有し、クルマ趣味をさらに深めることが出来るかもしれない。しかし、メリットだけを求めてクラブに参加するというのは、少しもったいない。

 そこにはクラブに参加し、あなたの得意とする何かを提供するという、もうひとつの楽しみも待っている。そのメイクに対する知識だけでなく、経理を得意とする人はそれを担当すれば良いし、営業を得意とする人はそのスキルを活用し、クラブ同士のコラボレーションを行うのも面白い。人生が長くなっていく昨今、どこかで自分が社会との接点をもち、役に立つという実感を持つことが重要であり、それが豊かな気持ちを持つ秘訣である。そういう意味で、クラシックカーとクラブの趣味というのは悪くない選択肢であろう。

 おっと、もちろん若い世代に、この素晴らしい趣味を引き継ぐことも更に重要なことだ。なかなか子供たちが趣味の対象として自動車に触れることが少なくなっている中、このオートモビルカウンシルに次世代を担う子供たちをさらにたくさん呼び込みたいではないか。そんなことを考えさせられる素敵なイベントであった。

取材協力・AUTOMOBILE COUNCIL 2021 実行委員会


越湖 信一(えっこ しんいち)
PRコンサルタント、EKKO PROJECT代表
イタリアのモデナ、トリノにおいて幅広い人脈を持つカー・ヒストリアン。前職であるレコード会社ディレクター時代には、世界各国のエンターテインメントビジネスにかかわりながら、ジャーナリスト、マセラティ・クラブ・オブ・ジャパン代表として自動車業界にかかわる。現在はビジネスコンサルタントおよびジャーナリスト活動の母体としてEKKO PROJECTを主宰。クラシックカー鑑定のオーソリティであるイタリアヒストリカセクレタ社の日本窓口も務める。著書に『Maserati Complete Guide』『Giorgetto Giugiaro 世紀のカーデザイナー』『フェラーリ・ランボルギーニ・マセラティ 伝説を生み出すブランディング』などがある 近著は『Maserati Complete Guide Ⅱ』。

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