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最終更新日:2020.10.30 公開日:2020.10.30

「ヒグマ」|第14回アニマル”しっかり”みるみる

世界中から集まったさまざまな動物たちを、間近で見て・感じられる施設がサファリパーク。そんなサファリパークで動物たちの世話をする飼育員さんに、知っておくとちょっぴり動物通になれるポイントを、 "しっかり" ご指導いただきました。富士山の自然豊かな環境にある富士サファリパークの動物展示課飼育担当の田中さんに、「ヒグマ」を解説してもらいました。

くるくら編集部 上條 謙二

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秋に蓄えた脂肪で冬の寒さを乗り切る

クマ類の中でも、最も世界に広く分布している「ヒグマ」。森や山林に暮らし、食性は植物を主体にした雑食。

 ヒグマは、ヨーロッパ、アジア、北アメリカに広く分布している動物です。中でも日本(北海道)に生息するヒグマは「エゾヒグマ」と呼ばれ、北海道を代表する大型の野生動物です。体長はオスで約2m、メスで 約1.5m、体重はオスで約150~400kg、メスで約100~200kgにもなります。

 野生のヒグマの1年ですが、活動期と冬眠期に大別できます。

 冬の間冬眠していたヒグマは3~5月頃になると目覚めて活動を開始します。5~7月にかけては繁殖の期間です。オスは広範囲にわたって移動し、発情したメスを探して交尾します。この時期のオスは戦闘的になり、オス同士で激しく争うことが多くなり、オスはメスに自分の存在をアピールします。また縄張りを主張するために、木などに背中をこすりつけるいわゆる「背こすり」の行動が見られます。

 「園内のヒグマも自分の臭いを木などにこすりつけます。他の個体の臭いが付いていると木の同じ場所に、上から自分の臭いをこすりつけます」(田中さん※以下同)。これと同様な目的から木などに「爪とぎをする」行動も見られるそうです。

 秋になると食欲が増して肉付きがよくなり、10~11月にかけては1年のうちで体が一番大きくなります。この時期は「まさに食べるものがあれば常に食べ続けている感じ」だそうです。食物が少なくなる夏に比較して、自然の木の実や果物などが食べられる秋、ヒグマは体に脂肪を蓄えて大きくなります。というのも野生のヒグマの場合、秋が終わって冬の3~4か月の間、飲まず食わずで過ごさなければならない冬眠が控えているからです。

 そして冬を迎える12月頃になると冬眠に入ります(翌年の3~5月頃まで)。ただし園内のヒグマは冬もエサを与えるので冬眠はしません。「食欲は秋に比べると格段に落ちます。動きが鈍くなり、ゴロゴロと寝転がっていることが多くなります」。自然の中であれば冬眠しているからなんでしょうね。

(※月は目安。生息している場所の環境やそれぞれの個体の体調などによってその月は変わるようです)。

特徴のあるヒグマの「冬ごもり」

ヒグマの冬眠は、深い睡眠状態には入らず、ちょっとした物音などで目を覚ましてしまうほどの浅い眠り。そんな特徴からヒグマの冬眠は「冬ごもり」とも呼ばれる。

 冬眠とは、気温が下がり食物が極端に減ってしまう冬という季節を乗り越えるために動物が手に入れた生態ですが、ヒグマも含めクマ類の冬眠は、他の動物の冬眠と比べると以下のようなちょっと変わった特徴があります。

(1)「冬眠時のヒグマの体温は30~35℃(通常時の体温は36~38℃)で、他の冬眠動物のように極端に下がらない」。たとえば冬眠する哺乳動物であるシマリスの場合、通常の体温は37℃なのが、冬眠時の体温は5~10℃程度まで下がります。このように、多くの動物では、冬眠時に20度以上体温が落ちます。

(2)「冬眠中でも深い睡眠状態には入らず、物音などのちょっとした外部刺激があると目を覚ましてしまうほどの浅い眠りになる」。そんな眠りの特徴からヒグマの冬眠は「冬ごもり」とも呼ばれています。

(3)「冬眠中は基本的に飲まず食わず。秋に体に蓄えた脂肪のみをエネルギーにする」。

(4)「冬眠中に出産する」。冬眠の間に出産するのはヒグマも含めクマ類特有のものです。 「野生のヒグマが冬眠している1~2月頃、園内のメスのヒグマも体重は400~500g、体長は20~25㎝ほどのとても小さな赤ちゃんを出産します。飼育員が目視では気付かず、『ギャーギャー』という鳴き声を耳にして初めて気付いたというくらいの小ささ」だそうです。

 それにしても初夏に交尾して冬に生まれるにしてはヒグマの赤ちゃんの体が小さすぎると思いませんか? ヒグマの場合、卵が受精してもすぐには成長せず、約6か月間は母体で休眠状態になる「着床遅延」という体内の働きのために小さな赤ちゃんで産まれます。確かに赤ちゃんの体が小さければ、冬眠中飲まず食わずの母グマが授乳によって消費するエネルギーを節約できますよね。「園内では一度に生まれるヒグマの赤ちゃんの数は1~2頭。母乳は水分が少なめで脂肪分が多くてとても濃厚」だそうです。

ひとつのことに熱中するのは、食べ物への執着から

大型のオスは400㎏に達する個体もいるヒグマ。力も強く、気性も荒い。

「ヒグマは立ち上がるとより大きさを感じ、威圧感もある動物です。もちろん力もすごいので、飼育の際は檻があっても常に警戒します」と飼育担当の田中さん。

 季節によって生活のスタイルを変化させるヒグマですが、どんな身体的な特徴があるのでしょうか?

 まず足。短くてがっしりしています。前足も後ろ足も人間同様に5本の指があり、鋭く長い鉤爪が生えています。前足の爪は、地面に穴を掘ったり、木の中の虫をかき出すなどして使います。足裏は偏平になっていて、かかとまで地面に着くことができるので、「2本足で立ち上がったり、短い距離なら2足歩行も可能」だそうです。

 歯は全部で42本あります。大きな犬歯は肉を切り裂いたり、威嚇するために使われ、草や木の実などは臼歯(奥歯)を使ってすりつぶして咀嚼します。

 ヒグマの体色は個体ごとに異なります。個体によっては、胸部斑紋(ツキノワ)のある個体もいます。

 体毛は夏毛と冬毛があり、季節で毛が生え変わります(換毛)。「冬の季節には、太く長い毛と、びっしりと密に生える下毛が生えてきます。気温が上がってくると徐々に冬毛は抜け、夏毛に生え変わります」。

 また体格ががっしりしており、とくに肩部(背中の上の方)の筋肉がこぶのように隆起しています。

「一度、園内の木を根こそぎ押し倒したことがありました。でも当の本人はほんの遊びだったようなのですが」。ヒグマのパワーは桁外れですね。

 そんなパワーあふれるヒグマってどんな性格の動物なのでしょうか?

「他のクマに比較すると気性が荒いところがあります。園内のヒグマ同士でもケンカを始めるとお互い出血を伴うケガを負うことがあります。その反面、警戒心が強く慎重で、野生のヒグマは人の存在に気付くと、その場所を自分から遠ざかるといわれています」。

 最後に「ヒグマあるある」について伺いました。

 その1は、「ぬいぐるみのような座り方をしたり、仰向けやうつ伏せで寝ること」。

 その2は、「同じ場所に固執して穴掘りをしたり、ずーっと同じ木を揺らして遊ぶなど一つの行動に熱中すること」です。熱中するのはその裏に必ず食べ物が関係しているそうです。「穴掘り」は地面の下に木の実が埋まっているからだったり、「木を揺らす」のはなっている木の実を振り落とすための行動なんです。

「ヒグマは食べ物に関しては記憶力が優れていて、栗やドングリの落ちる木があれば覚えていて、必ずその場所に集まります」。とても食いしん坊のようですね、ヒグマって!

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