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最終更新日:2020.10.15 公開日:2020.10.15

「キリン」|第13回アニマル”しっかり”みるみる

世界中から集まったさまざまな動物たちを、間近で見て・感じられる施設がサファリパーク。そんなサファリパークで動物たちの世話をする飼育員さんに、知っておくとちょっぴり動物通になれるポイントを、 "しっかり" ご指導いただきました。富士山の自然豊かな環境にある富士サファリパークの動物展示課草食動物担当 の伊藤さんに、「キリン」を解説してもらいました。

くるくら編集部 上條 謙二

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群れの中の順位を決めるための闘い、「ネッキング」

「ネッキング」中のキリン。首は長くても、キリンの首の骨の数は他の哺乳類と同じで7個。一つ一つの骨が長くなっている。

 キリンは、偶蹄目キリン科に属する動物です。陸上で最も背の高い動物で、メスで4m、オスでは5mを超えることがあります。アフリカのケニア北部からエチオピアなどにかけて、低木の生えた草原に暮らしています。現在、富士サファリパークで飼育されているキリンは「アミメキリン」という種類で、その柄に特徴があります。体の斑紋は濃い赤褐色で、斑紋を仕切る白い筋がはっきりとしており、名前の通り「網目」柄が際立っています。

 キリンという動物に見られる特有の行動の一つが「ネッキング」です。主に群れの中でのオスの順位決めや、メスをめぐって行われる闘争行動の一種です。オス同士が互いに横に並んで4本の足を踏ん張ると、長い首をムチのようにしならせて相手の首や胴体にめがけてぶつけます。「首を振り回し、角のある頭や首を力いっぱいぶつけます。初めて目撃したときは、大きな音や動きの激しさに圧倒されました」(伊藤さん※以下同)。そのためかオスの頭骨の重さは、メスの頭骨に比べ2倍以上もあります。ネッキングによる衝撃から脳を保護するため大きく頑丈な骨に発達したともいわれています。

 そんな激しいネッキングですが、唐突に終わります。片方のオスがネッキングをやめてその場を離れると終了です。「本当にあっさりと終わります。一度などは直後何事もなかったかのようにエサを食べ始めたこともあって驚きました」。ネッキングの決着は、その場を離れた方が負けになり、片方が執拗に追いかけ回すようなことはしません。ちなみにメスはネッキングをしませんが、「メスとオスの間の求愛行動として互いに首をからませる行動をとる」そうです。キリンにとって長い首は、ときには武器、ときには気持ちを伝えるための道具になるんですね。

 キリンの首の長さは2m~2.5mほど。 首は長くても、首の骨の数は他の哺乳類と同様に7個です。首が長いことによって、他の動物が届かない高い場所にある植物の葉を食べることができます。また首が長く背が高いことによって目の位置が高くなり、周囲がよく見えて遠くの状況を把握でき、危険を察知しやすくなっています。

 脳が収められる頭が胴体から離れて高い位置にあることで、心臓から血液を押し上げるために強い圧力が必要になるので、キリンは哺乳類の中で最も高血圧の動物です。「最高で250mmHg、最低で200mmHgほどある」そうです。

 キリンは、ウシなどと同様に消化しづらい植物の繊維を消化するため、4つに分かれた胃を持っており、一度食べたものを胃から口に戻して嚙みなおします(反芻)。そのためキリンの長い首をじっくり観察すると「食べたものが上下する様子が分かる」こともあるそうです。

キリンのお産は立ったまま

キリンは、しなやかに動く長い舌を使って、木の葉をむしり取って食べる。

 長い首以外にも、キリンには身体的な特徴があります。

 まず頭の上の角です。「頭頂部には『主角(しゅかく)』と呼ばれる大きく目立つ2本の角、額にある1本が『前角(ぜんかく)』、それ以外にも後頭部(耳の付け根あたり)に2本の短い角が生えてくることがあり、多い場合は5本の角が生えます。毛の生えた皮膚で覆われています」。角はオスもメスも生えます。

 キリンは舌にも特徴があります。長さが40㎝~50㎝ほどあり、色は黒っぽい青紫色です。葉を食べるときには口の中からするすると長い舌が伸びてきて枝ごと巻き取ります。とてもしなやかに動きます。

 大きな目は顔の横に突き出るように配置されており、周囲までよく見渡せるようになっています。視力もよく、色も見分けられます。

 足はがっしりした胴体に比べると細長く、2mほどあります。走るときは前足と後ろ足を交互に出しながら、「短い距離なら最高速度は時速約60km、長い距離になると時速約16kmのペースで走れます」。足と首が同じくらいの長さなので地面近くの水を飲む際は一苦労です。頭を下げるだけでは水面に口が届かないので、前足を曲げたり、大きく横に広げます。

 またキリンは座らずに立ったままお産をします。足の長さが2mほどあるので、赤ちゃんは約2mの高さから地面に産み落とされることになります。でもご安心ください、「園内でのお産の場合、下に木のチップなどを敷いてできる限り衝撃を少なくしています」とのこと。

 産み落とされた赤ちゃんでもその身長は2m近くあります。産み落とされてから30~60分後くらいには立ち上がるそうです。 「そんなときも母親は赤ちゃんが自立しようとするのを立ったまま後ろ足で支えて介添えする」のだそうです。

穏やかな性格で警戒心が強い

エサに対して執着する動物が多い中、キリンはちょっとでも満腹を感じるとエサに対して興味を示さなくなるという。

滅多に鳴き声を上げることがないキリン。「でも親子の間などでは、『モゥ~』とウシみたいな鳴き声を上げることがあるんだそうです。ただ、それはとても珍しいことで、何年間か飼育していますが一度も聞いたことはありませんが」と飼育担当の伊藤さん。

 激しくネッキングを行ったり、唐突に止めてしまうことのあるキリンですが、どんな性格の動物なのでしょうか?

「基本的に性格は穏やかな動物です」。ただ警戒心が強いので、何か身の危険を感じとると突発的に走り出すことがあるそうです。シマウマが急に走りだしたり、車の窓を開けて写真を撮られたりすると驚いて走りだしたりします。草食動物だけに危険を感知するセンサーが敏感なんでしょうね。

 最後に「キリンあるある」について伺いました。

 それは「ちょっとでもお腹がいっぱいになると、エサを見せても寄ってこないこと」です。 「動物の中には、エサへの執着が強い種類が多いのですが、キリンはエサに関してあっさりしています」。園内でもエサあげ時、朝方はお客様のエサをよく食べるが、満腹になると、 エサをいくら見せても、寄ってもこないことが多いそうです。

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