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最終更新日:2020.06.08 公開日:2020.06.08

【JNCAP2019】衝突安全・前期+後期全12車種によるランキング

JNCAP(自動車アセスメント)の2019年度後期分が、5月27日に発表された。ここでは、2019年度に衝突安全性能評価を受けた全12車種を、合計得点の高い順にランキングで紹介する。

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JNCAPの衝突安全性能評価のひとつ、オフセット前面衝突試験の車内(後席)の様子。

 JNCAPとは、国土交通省と独立行政法人 自動車事故対策機構(NASVA)が毎年実施している、新車の安全性能評価試験のことだ。毎年10月下旬から12月初旬にかけて前期として発表され、翌年5月末に後期が発表される。

 評価試験を受けるのは、現行車種(新車)の中から特に販売台数の多い車種が選定される。実施年度か、その1~2年前に発売、もしくはマイナーチェンジによる性能向上が行われた車種が選ばれることが多い。また、メーカーが試験を依頼するケースもある。どちらのケースにしろ試験用の車両は、試験車両であることを伏せて、ユーザーと同様にディーラーで購入するのが原則。そして全車種同一条件の下に厳密で正確な試験を実施している。

 2種類ある安全性能評価のうち、ここで取り上げるのは、事故時に乗員と歩行者の保護性能を扱う衝突安全性能評価だ。パッシブ・セーフティとも呼ばれ、JNCAPでは真正面からコンクリート・バリアに正面衝突するフルラップ前面衝突試験など、実際にクルマをぶつけてその安全性能の評価が行われている。もうひとつの予防安全性能評価はアクティブ・セーフティとも呼ばれ、衝突被害軽減ブレーキなど、事故を未然に防ぐ(もしくは軽減する)ための機能を評価するものだ。

衝突安全性能評価は2018年度から得点の算出方法が大きく変更

 衝突安全性能評価は、2018年度に大きな変更が行われた。衝突安全性能評価における試験は、大別して乗員保護、歩行者保護、シートベルトの着用警報装置の3種類が行われる。2011年度から2017年度までは、乗員保護と歩行者保護は同等に取り扱われ、どちらも100点ずつ。そこにシートベルトの着用警報装置の8点を加えた合計208点満点だった。

 しかし2018年度からは乗員保護に重きが置かれて全59点、歩行者保護が全37点、シートベルト着用警報が全4点という配分で、合計100点満点となったのである。2019年度の試験結果は、得点の配点が新しくなって2年目となる。

2019年度予防安全性能評価・全16車種によるランキング

 2019年度のランキングは以下の通り。今回は90点台の車種はなかったが、12車種中の10車種と85点以上で、3.2点の間にひしめく接戦となった。各車ごとの得点の内訳や、衝突安全性能などについては後述する。なお同点の場合、獲得した★の数が多い方を先に紹介した。

第1位・88.9点:RAV4(トヨタ)
第2位・88.7点:N-WGN/N-WGN カスタム(ホンダ)
第3位・88.5点:アコード(ホンダ)
第4位・87.5点:インサイト(ホンダ)
第5位・87.3点:UX(レクサス)

第6位・86.5点:デイズ/デイズ ハイウェイスター(日産)・eKワゴン/eKクロス(三菱)
第7位・85.9点:NX(レクサス)
第8位・85.7点:ロッキー(ダイハツ)
第8位・85.7点:Cクラス(メルセデス・ベンツ)
第8位・85.7点:ポロ(フォルクスワーゲン)

第11位・80.2点:タント/タントカスタム(ダイハツ)
第12位・77.9点:ミニ 3ドア/5ドア(ミニ)

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まずは1~6位を紹介!

項目別の点数について

 衝突安全性能評価の総合計の得点は、小数点以下1位での発表となる。一方、歩行者保護、乗員保護、シートベルトの着用警報装置における各得点は、小数点以下2位までが発表されている。実際の得点の算出においては、小数点以下第3位以降での計算も行われているが、四捨五入をしているため、全項目の点数を合計しても衝突安全性能評価の総合計得点とは一致しないこともある点に留意していただきたい。

 点数の内訳は、以下のようになっている。また以下のリストで◆印のある10項目は、獲得した点数ごとにレベル(Lv)1~5の5段階で評価される。

1.歩行者保護性能(全37点)
 I.頭部保護性能試験(32点◆)
 II.脚部保護性能試験(5点◆)
2.乗員保護性能(全59点)
 I.フルラップ前面衝突試験(合計21点)
  運転席(10.5点◆)/助手席(10.5点◆)
 II.オフセット前面衝突試験(合計21点)
  運転席(10.5点◆)/助手席(10.5点◆)
 III.側面衝突試験(15点◆)※1
 IV.後面衝突頸部保護性能試験(合計2点)
  運転席(1点◆)/助手席(1点◆)
3.シートベルトの着用警報装置(全4点◆)
総合計:100点満点

※1 側面衝突試験で衝突される側の側面について:基本的には運転席側にムービングバリアを衝突させるが、助手席側のセンターピラーレス構造を採用した車種に関しては、助手席側となる。その際、ダミー人形は助手席側に着座させられる。

 このほかに点数のつかない試験として、ハイブリッド車およびEVに対してのみ行われる、衝突後の感電保護性能評価試験がある。評価基準に適合した場合は、「適合」の評価を得られる。

 さらに、獲得した点数によってそれに見合った数の★(スター)が与えられる。82.0点以上は★が5つの最高評価である「ファイブスター賞」だ。ただし、シートベルトの着用警報装置を除いた9項目において、5段階評価のレベル3以下がひとつでもあると、82.0点以上であってもファイブスター賞は得られず、4つ星止まりとなる。

82.0点以上:★★★★★(ファイブスター賞)
72.5点以上82.0点未満:★★★★
63.0点以上72.5点未満:★★★
53.5点以上63.0点未満:★★
53.5点未満:★

第1位:RAV4(トヨタ)

合計:88.9点 ★★★★★

●歩行者保護:合計29.18点
 頭部保護:24.16点・Lv4
 脚部保護:5.00点・Lv5
乗員保護:合計57.30点
 フルラップ前面衝突:20.15点(運転席:9.65点・Lv5/助手席10.50・Lv5)
 オフセット前面衝突:20.53点(運転席:10.15点・Lv5/後席:10.38・Lv5)
 側面衝突:15.00点・Lv5
 後面衝突頸部保護:1.61点(運転席:0.81点・Lv4/助手席:0.81点・Lv4)
シートベルトの着用警報装置:2.50点・Lv3
感電保護性能:適合

試験に用いられた車両の型式:6AA-AXAH54

 2019年4月に登場した5代目「RAV4」は、トヨタのミドルクラスのクロスオーバーSUVだ。「RAV4」は、全10項目のうち6項目が最高評価のレベル5を獲得した。中でも、歩行者の脚部保護(5.00点)、乗員保護のフルラップ前面衝突の助手席(10.50点)、同じく側面衝突(15.00点)はそれぞれ最大の得点を獲得した。

 そのほか、オフセット前面衝突試験の運転席(10.15点)と助手席(10.38点)も高く、全体で第3位の得点となっている。これらの項目が牽引し、合計88.9点を獲得。3車種が88点台となる接戦を制して、2019年度衝突安全性能評価ランキングの第1位となった。

第2位:N-WGN/N-WGN カスタム(ホンダ)

合計:88.7点 ★★★★★

画像は「N-WGN」。

●歩行者保護:合計30.37点
 頭部保護:25.36点・Lv5
 脚部保護:5.00点・Lv5
●乗員保護:合計55.34点
 フルラップ前面衝突:19.46点(運転席:9.76点・Lv5/助手席:9.70点・Lv5)
 オフセット前面衝突:19.10点(運転席:9.21点・Lv5/後席:9.89点・Lv5)
 側面衝突:15.00点・Lv5
 後面衝突頸部保護:1.77点(運転席:0.89点・Lv5/助手席:0.89点・Lv5)
●シートベルトの着用警報装置:3.00点・Lv4

軽自動車
試験に用いられた車両の型式:6BA-JH3

 2代目「N-WGN/N-WGN カスタム」(※2)はボンネットタイプのコンパクトな軽自動車で、発売は2019年8月。衝突安全技術として、基本フレームに衝突時の衝撃(G)を制御する安全技術「G-CON」が取り入れられている。数年前まで、軽自動車の得点は普通車に大きく離されていたが、普通車に劣らない得点で初めて上位に進出したのが2代目「N-BOX」だった(※3)。「N-WGN」は2代目「N-BOX」のプラットフォームがベースとなっており、さらに磨きがかけられたといっていいだろう。

※2 N-WGN カスタム:「N-WGN」の上級モデル。
※3 2代目「N-BOX」の衝突安全性能の順位:2011~17年度の同一の試験方法・得点算出方法の評価試験を受けた全96車種中で第14位。その次の軽自動車は初代「N-WGN」で、第36位だった。

 項目別に見てみると、歩行者の脚部保護(5.00点)、乗員保護の側面衝突(15.00点)がそれぞれ最大の得点。またシートベルトの着用警報装置は、全12車種中の第1位となるレベル4の3.00点を獲得した。このシートベルト着用警報装置のレベル4を除き、「N-WGN/N-WGN カスタム」は残りの9項目すべてがレベル5だった。0.2点差で第1位には届かなかったが、その安定した高得点が第2位獲得の原動力となった。

第3位:アコード(ホンダ)

合計:88.5点 ★★★★★

●歩行者保護:合計28.11点
 頭部保護:23.12点・Lv4
 脚部保護:4.95点・Lv5
●乗員保護:合計57.95点
 フルラップ前面衝突:20.31点(運転席:10.28点・Lv5/助手席:10.03点・Lv5)
 オフセット前面衝突:20.74点(運転席:10.24点・Lv5/後席:10.50点・Lv5)
 側面衝突:15.00点・Lv5
 後面衝突頸部保護:1.89点(運転席:0.95点・Lv5/助手席:0.95点・Lv5)
●シートベルトの着用警報装置:2.50点・Lv3
●感電保護性能:適合

試験に用いられた車両の型式:6AA-CV3

 ホンダのミドルクラス・セダン「アコード」(10代目)は、フルモデルチェンジを受けて2020年2月に登場した。2019年度の試験を受けた全12車種のうちで、最も新しい車種である。ホンダ「N-WGN/N-WGN カスタム」に0.2点及ばなかったが第3位を獲得した。

 「アコード」は、高得点を獲得した項目が多い。第1位の点数だったのは、乗員保護のフルラップ前面衝突試験の運転席(10.28点)、オフセット前面衝突試験の運転席(10.24点)および後席(最大の10.50点)、側面衝突(最大の15.00点)。第2位だったのは、後面衝突頸部保護の運転席と助手席(ともに0.95点)だ。10項目中の8項目で、レベル5の点数を獲得した。

 また動的歩行者保護機能として、「アコード」には「ポップアップフード」が備えられている。同機能は、フロントバンパーのGセンサーが歩行者との接触を検知した瞬間にボンネットの後端部を持ち上げる仕組みだ。それにより、歩行者の頭部が打ち付けられた際に、衝撃を緩和するためにボンネットが変形できるだけのスペースをエンジンルーム上部に確保するのである。

第4位:インサイト(ホンダ)

合計:87.5点 ★★★★★

●歩行者保護:合計29.84点
 頭部保護:25.44点・Lv5
 脚部保護:4.34点・LV4
●乗員保護:合計55.17点
 フルラップ前面衝突:19.43点(運転席:9.94点・Lv5/助手席:9.49点・Lv5)
 オフセット前面衝突:18.91点(運転席:9.27点・Lv5/後席:9.64点・Lv5)
 側面衝突:15.00点・Lv5
 後面衝突頸部保護:1.82点(運転席:0.91点・Lv5/助手席:0.91点・Lv5)
●シートベルトの着用警報装置:2.50点・Lv3
●感電保護性能:適合

試験に用いられた車両の型式:6AA-ZE4

 2019年度の衝突安全性能評価の上位は、ホンダ車が占める形となった。第4位もホンダ車で、2018年12月に登場したミドルセダン「インサイト」(3代目)だ。87.5点を獲得した。

 試験項目ごとの順位で見ると、実は「インサイト」はいずれの項目でも第1位にはなれなかった。第2位となった項目もふたつで、頭部保護性能(25.44点)とフルラップ前面衝突の運転席(9.94点)のみだ。しかし「インサイト」も10項目中の8項目でレベル5の得点を獲得しており、ホンダ車は平均して得点が高く、点数が突出していなかったとしても合計すると上位となるのが特徴である。

 なお、「インサイト」と「アコード」を比較した場合、どちらもセダンであり、合計得点も近いが、項目ごとの得点には差異があるようだ。頭部保護に関しては、どちらもボンネットにポップアップフードを備えるが、点数的には「インサイト」がレベル5で「アコード」がレベル4。点数的には2点差以上の開きがある。一方、脚部保護に関してはその逆で、「アコード」がレベル5で、「インサイト」がレベル4。点差は約0.6点だ。同じメーカーのセダンだが、そろってレベル5にできないところに、高い衝突安全性能を実現することの難しさがうかがえる。

第5位:UX(レクサス)

合計:87.3点 ★★★★★

●歩行者保護:合計27.86点
 頭部保護:22.80点・Lv4
 脚部保護:5.00点・Lv5
●乗員保護:合計56.95点
 フルラップ前面衝突:20.15点(運転席:9.65点・Lv5/助手席:10.50点・Lv5)
 オフセット前面衝突:20.08点(運転席:9.58点・Lv5/後席:10.50点・Lv5)
 側面衝突:15.00点・Lv5
 後面衝突頸部保護:1.71点(運転席:0.86点・Lv4/助手席:0.86点・Lv4)
●シートベルトの着用警報:2.50点・Lv3
●感電保護性能:適合

試験に用いられた車両の型式:6AA-MZAH10

 2018年11月に発売となったレクサスのコンパクト・クロスオーバーSUV「UX」。TNGA(※4)コンセプトにより開発された「GA-C」プラットフォームを採用した、新世代のレクサスの1車種だ。「UX」ではボディの高剛性化を実現するため、ドア開口部には環状構造を採用。さらに高剛性化のため、スポット溶接の欠点を克服したレーザースクリューウェルディング技術の採用や、構造用接着剤の使用部位の拡大なども取り入れられた。

 項目別で見た場合、第1位を獲得したのは、歩行者の脚部保護(最大の5.00点)、フルラップ前面衝突の助手席(最大の10.50点)、オフセット前面衝突の後席(最大の10.50点)、側面衝突(最大の15.00点)の4項目。すべて各項目の最大得点を獲得している。ただし、今回は12車種中の10車種が85点以上かつ3.2点以内にひしめくというハイレベルな接戦だったため、合計87.3点を獲得したが「UX」は第5位となった。第1位のトヨタ「RAV4」とはわずか1.6点の差しかない。

※4 TNGA:Toyota New Global Architectureの略。トヨタの新しいクルマづくりのコンセプト。クルマのサイズごとにプラットフォームが開発されている。

第6位:デイズ/デイズ ハイウェイスター(日産)、eKワゴン/eKクロス(三菱)

合計86.5点 ★★★★★

画像は三菱「eKワゴン」。

歩行者保護:合計30.50点
 頭部保護:25.44点・Lv5
 脚部保護:5.00点・Lv5
乗員保護:合計53.07点
 フルラップ前面衝突:18.66点(運転席:8.33点・Lv4/助手席:9.84点・Lv5)
 オフセット前面衝突:17.53点(運転席:8.51点・Lv4/後席:9.01点・Lv4)
 側面衝突:15.00点・Lv5
 後面衝突頸部保護:1.86点(運転席:0.93点・Lv5/助手席:0.93点・Lv5)
シートベルトの着用警報装置:3.00点・Lv4

軽自動車
試験に用いられた車種(型式):デイズ(5AA-B44W)

 「eKワゴン」は2代目までは三菱単独で開発されてきたが、3代目以降は日産と三菱が出資したジョイントベンチャーのMNKVにおいて、日産「デイズ」と共同開発されている。今回ランクインしたのは2代目「デイズ」と4代目「eKワゴン」だ。両車とも2019年3月に登場した。なお、「デイズ ハイウェイスター」は「デイズ」のスポーティモデルで、「eKクロス」は「eKワゴン」のクロスオーバーモデルという位置付けだ。

 今回、「デイズ/デイズ ハイウェイスター」と「eKワゴン/eKクロス」は順位としては第6位だったが、86.5点は優秀な点数だ。その優れた点は、歩行者保護性能の高さ。脚部保護は最大の5.00点を獲得した。頭部保護も第3位となる25.44点で、両項目を合計した30.50点で歩行者保護は全体の第2位となっている。その高い歩行者保護性能を実現しているのが、歩行者傷害軽減ボディだ。歩行者と接触する可能性が高い部位のエネルギー吸収性を高めたボディとなっている。

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続いて第7位~第12位

第7位:NX(レクサス)

合計:85.9点 ★★★★★

歩行者保護:29.10点
 頭部保護:24.72点・Lv4
 脚部保護:4.34点・Lv4
乗員保護:54.80点
 フルラップ前面衝突:19.53点(運転席:9.62点・Lv5/助手席:9.91点・Lv5)
 オフセット前面衝突:18.32点(運転席:9.17点・Lv4/後席:9.15点・Lv4)
 側面衝突:15.00点・Lv5
 後面衝突頸部保護:1.93点(運転席:0.96点・Lv5/助手席:0.96点・Lv5)
シートベルトの着用警報装置:2.00点・Lv2
感電保護性能:適合

試験に用いられた車両の型式:DAA-AYZ10

 レクサス初のコンパクト・クロスオーバーSUVとして、国内では2014年7月に登場した「NX」。レクサス「UX」とは同じコンパクト・クロスオーバーSUVにカテゴライズされるが、「NX」は発売時期が早いため、当時開発中だったTNGAプラットフォームは採用されていない。衝突安全性能において、それが点差になって表れたといっていいだろう。

 ただし、順位こそ第7位と中団に埋もれてしまったが、得点そのものは85.9点と高得点である。項目として第1位を獲得したのは、後面衝突頸部保護。後面衝突頸部保護とは、後方から衝突を受けた際の衝撃を、どれだけシートとヘッドレストが緩和・吸収し、首に負荷をかけないで済むかを示したもの。要は、どれだけむち打ち症状になりにくいシートか、というものを表した項目だ。同項目において、運転席も助手席も0.96点、合計1.93点を獲得した。2点満点中の1.9点台となった唯一の車種である。

第8位:ロッキー(ダイハツ)

合計:85.7点 ★★★★★

歩行者保護:合計28.47点
 頭部保護:23.44点・Lv4
 脚部保護:5.00点・Lv5
乗員保護:合計54.24点
 フルラップ前面衝突:18.23点(運転席:8.61点・Lv4/助手席:9.62点・Lv5)
 オフセット前面衝突:19.45点(運転席:9.41点・Lv5/後席:10.05点・Lv5)
 側面衝突:15.00点・Lv5
 後面衝突頸部保護:1.55点(運転席:0.77点・Lv4/助手席:0.77点・Lv4)
シートベルトの着用警報装置:3.00点・Lv4

試験に用いられた車両の型式:5BA-A200S
同一性能のOEM供給車:トヨタ「ライズ」

 2019年11月に発売されたダイハツのコンパクトSUV「ロッキー」。第11位にランクインした「タント/タント カスタム」で初採用された、ダイハツの新たなクルマづくりコンセプト「DNGA」(※5)を採用した第2弾である。ただし、DNGAプラットフォームは軽自動車用に開発されたことから、コンパクトカーサイズに適用すべく大きく手が入れられた。骨格の通し方や足回り部品の取り付けの考え方などを共通事項としながらも、サイズの拡大を図ったのである。

※5 DNGA:Daihatsu New Global Architectureの略。

 ダイハツの衝突安全ボディ「TAF」(※6)を採用しており、フロントサイドメンバーの高効率エネルギー吸収構造を特徴とする。さらに、基本フレーム構造の最適化や合理化を実施し、部材の構造断点を減らすと同時に、高張力鋼板を活用することで軽量化とキャビンの高剛性化を実現したとしている。

※6 TAF:Total Advanced Functionの略。「統合的に衝突安全機能が進化したボディ」という意味が持たされている。

 第1位の得点となった項目は、歩行者の脚部保護。最大の5.00点を獲得した。またシートベルトの着用警報装置は第1位となるレベル4の3.00点。レベル5とレベル4が5項目ずつで、10項目合計85.7点。「ロッキー」までがファイブスター賞を獲得した車種となる。

第8位:Cクラス(メルセデス・ベンツ)

合計:85.7点 ★★★★

画像は「C 200 アバンギャルド」。

歩行者保護:合計31.66点
 頭部保護:27.4点・Lv5
 脚部保護:4.58点・Lv5
乗員保護:合計52.08点
 フルラップ前面衝突:17.06点(運転席:8.94点・Lv4/助手席:8.12点・Lv4)
 オフセット前面衝突:18.87点(運転席:9.87点・Lv5/後席:9.00点・Lv4)
 側面衝突:15.00点・Lv5
 後面衝突頸部保護:1.12点(運転席:0.56点・Lv2/助手席:0.56点・Lv2)
シートベルトの着用警報装置:2.00点・Lv2

試験に用いられた車両の型式:5AA-205077C

 JNCAPで評価試験の対象となる車種は、販売台数の多い現行車種(新車)から選ばれる。そのため、必然的に国産車が多くなるが、2019年度の衝突安全性能評価は輸入車が3車種も選定された。その中で最も高得点だったのが、メルセデス・ベンツ「Cクラス」だ。同社は独自のクルマの分類方式を用いており、「Cクラス」とはランクとしてミドルからミドルアッパーに属する、Cで始まる車名のグループの総称である。現行のCクラスは4代目で、2014年7月に7年ぶりのフルモデルチェンジを経て登場した。

 「Cクラス」の特に優れている点が、歩行者保護性能だ。頭部保護は第2位に1.6点差をつける27.04点。27点台は唯一の車種である。脚部保護もレベル5の4.58点で、合計31.66点を獲得し、歩行者保護の第1位となった。歩行者保護で31点台は「Cクラス」のみである。

 一方で課題もあり、後面衝突頸部保護は運転席・助手席ともにレベル2となる0.56点、合計1.12点で最下位。そのため、ダイハツ「ロッキー」と同点の85.7点を獲得したにもかかわらず、ファイブスター賞(5つ星)を得ることはできなかった。

第8位:ポロ(フォルクスワーゲン)

合計:85.7点 ★★★★

歩行者保護:合計29.34点
 頭部保護:24.56点・Lv4
 脚部保護:4.74点・Lv5
乗員保護:合計53.86点
 フルラップ前面衝突:18.15点(運転席:7.88点・Lv4/助手席:10.26点・Lv5)
 オフセット前面衝突:20.25点(運転席:10.19点・Lv5/後席:10.06点・Lv5)
 側面衝突:14.28点・Lv5
 後面衝突頸部保護:1.16点(運転席:0.58点・Lv2/助手席:0.58点・Lv2)
シートベルトの着用警報装置:2.50点・Lv3
感電保護性能:適合

試験に用いられた車両の型式:ABA-AWCHZ

 約8年ぶりのフルモデルチェンジが行われ、現行のフォルクスワーゲン(VW)「ポロ」(6代目)は、2018年3月に登場した。最大の特徴は、VWグループが採用したモジュラー戦略で開発された新型「MQB」プラットフォームを採用したこと。MQBプラットフォームはVWを代表する人気車種「ゴルフ」を筆頭に、数多くの車種にも採用されているが、コンパクトカーで採用したのは「ポロ」が初となる。

 歩行者との接触を検知すると、瞬間的にボンネット後端を40~60mm持ち上げ、歩行者の頭部が打ち付けられた際に衝撃を緩和する「アクティブ・ボンネット」を装備。ただし、頭部保護はそれ以外の部分で点が伸びなかったため、レベル4の24.56点で、全体の第6位となっている。また、後面衝突頸部保護の点数が低く、運転席と助手席ともにレベル2の0.58点。このため、「ポロ」もダイハツ「ロッキー」と同点の85.7点を獲得したが、ファイブスター賞を得ることはできなかった。

第11位:タント/タント カスタム(ダイハツ)

合計:80.2点 ★★★★

画像は「タント」。

歩行者保護:合計27.66点
 頭部保護:22.96点・Lv4
 脚部保護:4.68点・Lv5
乗員保護:合計49.58点
 フルラップ前面衝突:17.47点(運転席:7.14点・Lv3/助手席:10.33点・Lv5)
 オフセット前面衝突:15.30点(運転席:8.28点・Lv4/後席:7.02点・Lv3)
 側面衝突:15.00点・Lv5
 後面衝突頸部保護:1.81点(運転席:0.92点・Lv5/助手席:0.92点・Lv5)
シートベルトの着用警報装置:3.00点・Lv4

軽自動車
試験に用いられた車両の型式:6BA-LA650S
同一性能のOEM供給車:スバル「シフォン/シフォンカスタム」

 2019年7月にフルモデルチェンジが実施され、4代目が登場したダイハツのトールワゴン軽自動車「タント/タント カスタム」(※7)。DNGAコンセプトの第1号だ。DNGAによる新型プラットフォームは、サスペンションや骨格の部品配置をゼロベースから再構築して最適化し、軽量高剛性を実現した点が特徴となっている。曲げ剛性を従来比で約30%向上させると同時に、高張力鋼板の活用や構造の合理化・最適化により、プラットフォームを含めたボディの基本フレーム全体で約40%の軽量化を実現した。

※7 タント カスタム:スタイリングを重視したタントの上級モデル。

 「タント」は乗り降りや荷物の積み卸しを考慮し、助手席側はセンターピラーレス構造を採用している。運転席側と比べた際に強度・剛性が大きく低下してしまうのを防ぐため、超高張力鋼板を使用したピラーをドアに内蔵している。JNCAPでは、こうしたセンターピラーレス構造を採用している一部の車種に対しては、あえて強度・剛性的に劣る助手席側に対して側面衝突試験を実施している。「タント/タント カスタム」も助手席側に側面衝突試験が実施されたが、最大の15.00点を獲得している。

第12位:ミニ 3ドア/5ドア(ミニ)

合計:77.9点 ★★★

画像は「ミニ 5ドア」。

●歩行者保護:合計22.93点
 頭部:19.36点・Lv3
 脚部:3.55点・Lv3
●乗員保護:合計53.00点
 フルラップ前面衝突:18.69点(運転席:8.78点・Lv4/助手席:9.91点・Lv5)
 オフセット前面衝突:17.54点(運転席:8.74点・Lv4/後席:8.79点・Lv4)
 側面衝突:15.00点・Lv5
 後面衝突頸部保護:1.75点(運転席:0.88点・Lv5/助手席:0.88点・Lv5)
●シートベルトの着用警報装置:2.00点・Lv2

試験に用いられた車両の型式:DBA-XU15M

 1958年に「オースチン・セブン」および「モーリス・ミニ・マイナー」として誕生した英BMC社の「ミニ」。その後、BMCは経営が傾き、「ミニ」の権利を手に入れたBMWにより2001年からは「ミニ」そのものがブランド名になり、現在でも存続している。現行車は、BMW傘下となってからは3代目で、2014年3月にフラッグシップモデル「3ドア(ハッチバック)」が登場。「5ドア」は同年10月に3代目が誕生した。

 今回の全12車種のうち、唯一の70点台となる77.9点で第12位、そして唯一の3つ星だった(衝突試験は「5ドア」で実施された)。しかし、これは「ミニ」の発売が2014年であることを考慮すれば、致し方がないところもあるだろう。JNCAPでは、基本的にその年度か、1~2年前に発売もしくはマイナーチェンジを受けた販売台数の多い車種が選定されるが、「ミニ」のような例外もある。これまでに評価試験を受けていない販売台数の多い現行車種であれば、選定される可能性があるのだ。

 しかも発売されて6年といえば、例外もあるが日本車ならモデル末期といってもいい。フルモデルチェンジしていてもおかしくない年数であり、6年あれば技術も大きく進展する。それでも10項目のうち4項目でレベル5、3項目でレベル3の点数を獲得したのだから、健闘したという見方もできるだろう。


 衝突安全性能評価は100点満点方式に変更されて2年目だが、2020年度に早くも次の大きな改革が待つ。これまで独立して実施されてきた衝突と予防のふたつの安全性能評価が統合され、合計100点満点となる。ふたつの安全性能がそろって高評価を得ないと、統合された評価では高得点を得られないようになるのだ。

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