【JNCAP2019】全12車種×3種類の衝突試験公式動画を一挙掲載
JNCAP(自動車アセスメント)の2019年度後期分が、5月27日に発表された。ここでは、2019年度前期と後期合わせた12車種について、独立行政法人 自動車事故対策機構が公開している衝突試験映像を掲載した。
JNCAPは国土交通省と独立行政法人 自動車事故対策機構(NASVA)によって実施されており、厳正な試験を行って各車の安全性能を点数化し、一般に公開している。それにより、ユーザーにはより安全性の高い車種の情報を提供すると同時に、メーカーにはさらに安全性の高い車種の開発を促している。
JNCAPには、予防と衝突のふたつの安全性能評価がある。予防安全性能評価はアクティブ・セーフティともいわれ、衝突被害軽減ブレーキなど、事故を未然に防ぐための予防安全機能の性能評価を行う試験だ。一方の衝突安全性能評価はパッシブ・セーフティともいわれ、衝突に至った際に乗員と歩行者を保護するための性能の評価を行う試験である。
衝突安全性能評価で実施されているのは、3種類の衝突試験だ。真正面から衝突するフルラップ前面衝突試験、運転席側の40%の部分が対向車とすれ違えずに衝突したという設定のオフセット前面衝突試験、そして側面衝突試験である。同一車種を3台用意してクラッシュさせ、搭乗させたダミー人形などに備え付けたセンサーで計測された衝撃などを基にして、安全性能を算出しているのだ。2019年度は全12車種が衝突安全性能評価を受けた。ここではNASVAの許可を得て、YouTubeのJNCAP公式チャンネル「nasvaassess」で公開されているそれぞれ各車3種の試験動画を掲載する。
試験動画は、時速50km以上でバリア(壁)に衝突したり、逆にムービング・バリアに衝突される内容で、新車が激しく破損する様子は迫力がある。また、衝突していく瞬間のスーパースローも収録されており、どのようにクルマが壊れていき、またエアバッグなどが膨らんで搭乗者が保護される仕組みなのか、そして各車の違いも見て取れる。なお、走行音や衝突音なども収録されているので、視聴する際はボリュームに注意しよう。12車種の動画は以下のリストの順で掲載した。
【トヨタ】
●RAV4(ミドルクラス・クロスオーバーSUV・5代目)
【レクサス】
●NX(コンパクト・クロスオーバーSUV)
●UX(コンパクト・クロスオーバーSUV)
【ホンダ】
●アコード(ミドルクラス・セダン・10代目)
●インサイト(ミドルクラス・セダン・3代目)
●N-WGN(ボンネットタイプ・コンパクト軽自動車・2代目)
【日産】
●デイズ(トールワゴンタイプ軽自動車・2代目)
【ダイハツ】
●タント(トールワゴンタイプ軽自動車・4代目)
●ロッキー(コンパクトSUV・2代目)
【フォルクスワーゲン】
●ポロ(コンパクトカー・6代目)
【ミニ】
●ミニ 3ドア(コンパクトカー・3代目)
【メルセデス・ベンツ】
●Cクラス(Dセグメント車・4代目)
→ 次ページ:
続いてトヨタ+レクサスの3車種
RAV4(トヨタ)
2019年4月に発売された、トヨタのミドルクラス・クロスオーバーSUV「RAV4」。88.9点を獲得し、2019年度の衝突安全性能評価を受けた全12車種の中で最高得点だった。ファイブスター賞も受けている。
NX(レクサス)
国内では2014年7月から販売が始まった、レクサス初のコンパクト・クロスオーバーSUVが「NX」だ。フルモデルチェンジはまだ一度も実施されていない。2019年度の衝突安全性能評価で85.9点を獲得し、ファイブスター賞を受けた。
UX(レクサス)
2018年11月に発売された、レクサスのコンパクト・クロスオーバーSUV「UX」。同ブランドのSUV4車種の中では、最も新しい車種である。2019年度の衝突安全性能評価では87.3点を獲得し、ベスト5入りを果たした。また、ファイブスター賞も受けている。
→ 次ページ:
続いてはホンダの3車種
アコード(ホンダ)
1976年の初代以来、長い歴史を有するホンダのミドルクラス・セダン「アコード」。現行車種の10代目は、2019年度の全12車種中では最も新しく、2020年2月に発売された。衝突安全性能評価の得点は、1位までわずか0.4点届かなかった88.5点。総合3位の成績だった。ファイブスター賞も受けている。
インサイト(ホンダ)
2018年12月に登場した、ホンダの3代目「インサイト」。2モーター・ハイブリッドシステムを搭載したミドルセダンだ。87.5点を獲得し、全12車種中の4位だった。ファイブスター賞も受けている。
N-WGN(ホンダ)
ホンダの軽自動車「N」シリーズの1車種で、2019年8月に発売された2代目「N-WGN」。ボンネットタイプのコンパクトな軽自動車である。得点は88.7点で、1位とはわずかに0.2点差の2位だった。ファイブスター賞も獲得している。また上級モデルの「N-WGN カスタム」も同一性能だ。
→ 次ページ:
続いて、日産「デイズ」とダイハツの2車種
デイズ(日産)
日産のトールワゴンタイプの軽自動車「デイズ」(2代目)と、そのスポーティモデル「デイズ/ハイウェイスター」、そして共同開発された三菱「eKワゴン」(4代目)とそのクロスオーバーモデル「eKクロス」。これらは同一性能の兄弟車ということで、2019年度の衝突安全性能評価を受け、86.5点を獲得、ファイブスター賞が贈られた。代表して試験を受けたのが、「デイズ」だ。
タント(ダイハツ)
2019年7月に登場した、ダイハツのトールワゴンタイプの軽自動車「タント」(4代目)。2019年度の衝突安全性能評価を上級モデル「タント カスタム」と共に受け、80.2点、5段階評価の4つ星を獲得した。スバル「シフォン/シフォン カスタム」は、「タント/タント カスタム」のOEM供給車であり、同一性能を有する。
ロッキー(ダイハツ)
2019年11月に発売された、ダイハツのコンパクトSUV「ロッキー」(2代目)。2019年度の衝突安全性能評価は85.7点を獲得し、5つ星評価の「ファイブスター賞」を受けた。トヨタ「ライズ」は「ロッキー」のOEM供給車であり、同一性能を有する。
→ 次ページ:
最後は輸入車3車種
ポロ(フォルクスワーゲン)
約8年ぶりのフルモデルチェンジを経て、2018年3月に登場した6代目「ポロ」。フォルクスワーゲンのコンパクトカーである。得点は85.7点と高かったが、ファイブスター賞は獲得できず、評価は4つ星だった。本来、82点以上ならファイブスター賞を受けられるが、「シートベルトの着用警報装置」以外の試験項目のすべてが5段階評価のレベル4か5である必要があるからだ。「ポロ」は後面衝突頸部保護の点数が低く、レベル2の範疇だったのである。
Cクラス(メルセデス・ベンツ)
7年ぶりのモデルチェンジを経て、2014年7月に登場した4代目「Cクラス」。「Cクラス」とは車名を指すものではなく、メルセデス・ベンツ独自の分類によるグループの総称。同クラスは、メルセデス・ベンツの中ではミドル~ミドルアッパークラスのカテゴリーである。得点は85.7点でフォルクスワーゲン「ポロ」と同点だが、その「ポロ」と同じように後面衝突頸部保護の点数が低くてレベル2の範疇のため、ファイブスター賞を獲得できず、評価は4つ星となった。
ミニ 5ドア(ミニ)
1958年に英BMC社の革新的機構を備えたコンパクトカーとして誕生した「ミニ」。現在はBMCが経営破綻したことで、「ミニ」だけがBMWの傘下に収まり、「ミニ」というブランドを掲げている。2014年3月にフルモデルチェンジが行われ、BMW傘下となってからの3代目(最初は「3ドア」)が誕生した。同年10月に「5ドア」が誕生した。衝突試験は「5ドア」で実施された。得点は77.9点。評価は3つ星だった。
クルマの安全性能を高めるため、JNCAPが果たしている役割は大きい。こうした厳格な衝突試験で得られた知見を活かして、クルマは日々その安全性を高められているのだ。