埼玉県南部の交通が変わる! 高速道路「新大宮上尾道路」とは?
「新大宮上尾道路」は、埼玉県内の新大宮バイパスおよび中山道(国道17号)の渋滞を解消することを目的に計画された高速道路だ。これから用地買収の段階に入り、建設作業が本格化していくという。
埼玉県内の交通状況は、C4圏央道以南の東京寄りの地域に交通が集中していることが判明している。そのうちの県央地域においては、新大宮バイパス(国道17号・画像1)および中山道(国道17号)に交通が集中しており、渋滞の発生回数も多い。
C3外環道~C4圏央道をつなぐ高速道路で交通容量を増強
新大宮バイパスおよび中山道の渋滞緩和と、県央地域の発展に有効と考えられているのが、E4東北道とE17関越道の間に新たな高速道路を通すことだ。C3外環道とC4圏央道をつなぎ、南北方向の交通容量を増強させるこの高速道路は、「新大宮上尾道路」と呼ばれている。
新大宮上尾道路は、さいたま市中央区円阿弥(えんなみ)から鴻巣市箕田(こうのすしみだ)までをつなぐ計画の、延長約25.1kmの高速道路だ(画像2)。ルートは、新大宮バイパスおよびその延長といえる上尾道路(国道17号バイパス)上に建設される計画である。上下2車線ずつの高速道路(道路規格は第1種第3級)で、設計速度は時速80km、道路の幅員は18.75~20.5mというスペックだ。
新大宮上尾道路は、南端の与野JCT(仮称)において首都高の埼玉大宮線および埼玉新都心線と接続。それにより、外環道や首都高・5号池袋線には美女木JCTにてアクセスできることになる。一方の北側では、桶川市川田谷(おけがわしかわたや)の桶川北本IC近辺に新たにJCTを建設して圏央道と接続させる計画だ。新大宮上尾道路はそこでは終わらず、さらに北へと向かい、終点は9kmほど北の鴻巣市の「箕田交差点」である。
さいたま市中央区円阿弥から桶川市川田谷(桶川北本ICの北側)までは、すでに新大宮バイパスと上尾道路(I期)が開通しており、新大宮上尾道路はその上を高架の高速道路として建設される。その先の鴻巣市箕田までは「上尾道路(II期)」の建設が進められており、新大宮上尾道路はその上を通ることになる。上尾道路(II期)は現在、調査設計、用地買収、改良工事の段階だ。
与野JCT~上尾南出入口間は首都高として建設される予定
新大宮上尾道路は、2016年から与野JCT~上尾南出入口(上尾市堤崎)までの南側約8kmの区間(画像3)が、国土交通省関東地方整備局大宮国道事務所により先行して着手されることとなった。そして翌2017年3月の有料道路事業許可(※1)を経て、現在では首都高速道路株式会社と共同で事業が進められている。よって、与野JCT~上尾南出入口間に関しては首都高の1路線として開通する予定だ。
これから用地買収がスタートして建設作業が本格化
事業化区間については、これまで現地測量や道路設計が行われてきた。しかし検討・精査が実施された結果、一部の道路構造を見直す必要が出たことから、2019年10月に都市計画の変更を実施。それを踏まえて、2020年3月13日に与野JCT~上尾南出入口間における都市計画の事業承認・認可(※2)の告示がされたのである。
今後は都市計画法第66条に基づき、地権者などに対して地元説明会(承認・認可の内容、設計内容、用地取得の流れなど)が開催され、その後に用地買収がスタートする。さらにそれ以降は、幅杭の設置⇒用地の測量⇒用地交渉と契約⇒埋蔵文化財調査⇒工事説明⇒工事という流れを経て、完成となる。完成時期は未定だ。
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新大宮上尾道路の出入口について
事業化区間の約8kmには4つの出入口を建設
続いては、新大宮上尾道路の出入口がどこに設けられるのかを見てみよう。まずは約8kmの事業化区間についてだが、4つのハーフICが設けられる予定だ(名称はすべて仮称・画像4)。出入口の所在地については、首都高が発表した協定および事業許可に関する資料の『「都道首都高速1号線等に関する事業」別紙-1ほか(平成29年3月31日変更許可)』を参照した。なお、南側から掲載している。
●大宮(下り線入口・上り線出口:さいたま市西区三橋五丁目)
●宮前南(上り線入口・下り線出口:さいたま市西区宮前町)
●宮前(下り線入口・上り線出口:さいたま市西区内野本郷)
●上尾南(上り線入口・下り線出口:上尾市堤崎)
そして以下のGoogleマップは、4つの出入口が建設されると推測される交差点を中心にキャプチャーしたものだ。
事業化区間で最も南側、与野JCTに最も近いのが「大宮出入口」だ。新大宮バイパスに接続するふたつの出入口のうちのひとつで、さいたま市西区三橋の「三橋5丁目交差点」付近に建設されるものと予想される(画像5赤丸)。同交差点近辺は、あらかじめ出入口の建設が想定されているようで、新大宮バイパスの中では特に中央分離帯が広く設けられている。
南側から2番目の「宮前南出入口」は、所在地とされるさいたま市西区宮前町に、高速道路の出入口にふさわしい交差点が見当たらない。画像4をチェックしたところ、さいたま市西区三橋の「大宮西警察署前交差点」の可能性があるようだ(画像6赤丸)。
ちなみに宮前南出入口と、ひとつ北側の「宮前出入口」は、国道17号バイパス(新大宮バイパス~上尾道路)と国道16号の交差部である「宮前IC」(画像6上部)を南北から挟む重要な出入口だ。宮前ICは大動脈同士の交差部のため、信号を設けず、高速道路のICやJCTのような連絡路を用いた複雑な構造が採用されている。そのため、新大宮上尾道路は宮前ICと直通する出入口は設けないようである。
事業化区間で南から3番目となる宮前出入口の建設が予想されるのが、さいたま市西区の「内野本郷交差点」付近だ(画像7赤丸)。ここから北側の出入口は上尾道路との接続となる。宮前南出入口で説明したように、宮前出入口も宮前IC(画像7下方)との関係の深い出入口である。国道16号から新大宮上尾道路の上り線に乗りたい場合は宮前南入口から、下り線に乗りたい場合は宮前入口からとなる。一方、新大宮上尾道路の上り線(上尾南出入口)から国道16号に入りたい場合は、宮前出口で降りる必要がある。下り線(与野JCT方面)から国道16号にアクセスしたい場合は、宮前南出口で降りる形だ。
上尾南出入口は、事業化区間で最も北側に位置する。上尾道路と大谷本郷さいたま線(県道165号)との交差点である上尾市の「堤崎交差点」付近に建設されるものと思われる(画像8赤丸)。なお上尾南出入口は、上り線入口が南側、下り線出口が北側と若干距離を置いて建設される予定で、上り線入口が大谷本郷さいたま線に近く、堤崎交差点近辺となる模様。下り線出口は北側の名称のない交差点近辺に設けられる可能性がある。
事業化区間以北に予定されている出入口一覧
新大宮上尾道路は、今回の事業化区間の約8kmよりも北側、残りの17.1kmの区間にも多数の出入口の建設計画が公表されている。続いてはそれらを紹介しよう。
ここでは、事業化区間に最も近い南側から、上尾道路のI期区間(開通済み)とII期区間(建設中)に分けて掲載。なお、出入口の名称はすべて仮称で、圏央道と接続する桶川北本IC以外はすべてハーフインターだ。新大宮上尾道路の未事業化区間の出入口に関しては所在地に関する資料がないため、画像9から推測したおおよそのものを記載した。掲載順は南側からだ。
【上尾道路I期区間】
●上尾北(上り線出口・下り線入口:上尾市大字壱丁目近辺)
●桶川南(上り線入口・下り線出口:桶川市大字川田谷近辺)
●桶川北(上り線出口・下り線入口:桶川市大字川田谷・桶川北本IC(南)交差点近辺)
●桶川北本IC(4方向:圏央道の桶川北本IC近辺)
【上尾道路II期区間】
●北本南(上り線入口・下り線出口:北本市荒井近辺)
●北本北(上り線出口・下り線入口:北本市高尾近辺)
●鴻巣南(上り線入口・下り線出口:鴻巣市滝馬室近辺)
●鴻巣中央(上り線出口:鴻巣市登戸・糠田など近辺)
●鴻巣中央(下り線入口:鴻巣市滝馬室・大間近辺)
●鴻巣北(上り線入口・下り線出口:鴻巣市箕田近辺)
新大宮上尾道路の終点は鴻巣市の箕田交差点だが、ここに出入口は作られないようである。箕田交差点に最も近い出入口はそこから若干南の「鴻巣北出入口」となるようだ。箕田交差点に出入口を作らないのにそこまで建設する理由は、その先があるということ。新大宮上尾道路ではないのだが、熊谷バイパスの自動車専用部が高架で建設される計画があるのだ(ただし事業化は現時点では未定)。
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首都高2路線には建設が想定された構造が
首都高2路線にはあらかじめ接続を想定した設計が
最後は、埼玉大宮線と埼玉新都心線があらかじめ新大宮上尾道路との接続を想定して建設されているところをお見せしよう。まず画像11は埼玉大宮線の与野出入口だが、このランプは出口と入口がそれぞれ異なる位置に付け替えられることになる。その空いた部分から往復4車線で、新大宮上尾道路が延伸されることになるのだ。
また、画像11の左端の埼玉新都心線(西行き)⇒埼玉大宮線(上り)の連絡路と、与野入口ランプの間に合流用の構造が見えるが、これは埼玉新都心線が西へ延伸された場合、そこからの連絡路が取り付けられる部分だ。埼玉新都心線の西への延伸はまだ構想段階で、現時点では具体的な計画はない。西へ延伸された場合、その区間が埼玉新都心線という名称になるかも未定だ。だが、計画が具体化してから分合流用構造を設けていたのでは費用と作業時間が増加し、工事による交通への影響も大きくなることから、あらかじめ設けられているのだ。
そして画像12は、下り線の南側に位置する分流用の構造。ここに与野出口のランプが付け替えられることになる。
画像13は、画像11よりも北側に位置する、埼玉新都心線(西行き)⇒埼玉大宮線(上り)の連絡路の途中に設けられている合流用の構造。ここに与野入口ランプが付け替えられることになる。
画像14は、画像12よりも北側にある、埼玉大宮線(下り)⇒埼玉新都心線(東行き)の連絡路の途中にある分流用の構造。埼玉新都心線が西へと延伸した場合、ここからその西への延伸した路線に向けて連絡路が分流する。
そして画像15は、埼玉新都心線の分合流用の構造。右端にある埼玉新都心線(西行き)⇒埼玉大宮線(上り)の連絡路の内側にあるのが、新大宮上尾道路(下り)への連絡路が取り付けられる部分である。
一方、左端の埼玉大宮線(下り)⇒埼玉新都心線(東行き)の連絡路の内側にある構造は、埼玉新都心線が西へ延伸する際に備えたものだ。新大宮上尾道路(上り)⇒埼玉新都心線(東行き)の連絡路を取り付けるための合流用構造は、画像15では見えていない。ここからもう少し西側にあり、埼玉大宮線(下り)⇒埼玉新都心線(東行き)の連絡路から北側に向けて合流用構造が設けられている。
なお、埼玉大宮線と埼玉新都心から新大宮上尾道路に接続する連絡路のうちで、最もルートの設計が難しそうなのが埼玉新都心線(西行き)⇒新大宮上尾道路(下り)の連絡路だ。画像16のループは埼玉大宮線(下り)⇒埼玉新都心線(東行き)の連絡路の一部分だが、これをどうオーバーパスもしくはアンダーパスするのか、もしくは回避するのか、設計に工夫がいりそうだ。
新大宮上尾道路の事業化区間8kmは、これから用地買収が行われる段階のため、完成時期はまだ発表されていない。宮前出入口~上尾南出入口間の上尾道路区間(延長約3km)は、道路の幅員を現在の57mから変更しなくても新大宮上尾道路の建設が可能だが、与野JCT~宮前出入口間の新大宮バイパス区間(延長約5km)は拡幅が必要だ。現在の幅員36.5mから42.5mにする計画で、用地買収が必要となる。完成するまではまだしばらくの年月を要するが、建設計画は着実に進行中だ。