後戻りできない高速の忘れ物。トイレにAI忘れ物発見センサーの導入が拡大
NEXCO中日本では、2017年に忘れ物に関する問い合わせが年間2万件を超えていた。その削減策として、2018年6月から、AIによる忘れ物発見センサー「アウトラインセンサー」を一部のSA・PAのトイレで導入したが、センサー精度の向上に伴い、3月から対象トイレを拡大することになった。
忘れ物だけでなくトイレ内の急病人も検知可能
NEXCO中日本の忘れ物発見装置「アウトラインセンサー」は、天井に設置されたセンサーがトイレ内のヒトやモノの動きのシルエット(輪郭)を検知。入室前と後でシルエットの差分をAI分析で識別して、忘れ物があることを知らせてくれるものだ。また扉の開閉センサーと連動し、横たわるヒトのシルエットも識別できるので、急病人の検知もできるようになっている。検知できるモノの大きさは約10cm×5cm程度から。スマホなどの小物にも対応する。
アウトラインセンサーが忘れ物を検知する流れ
人が倒れていることを検知する流れ
NEXCO中日本は2018年6月から、東海環状自動車道・鞍ヶ池PA(内回り)の男子トイレ2か所にアウトラインセンサーを設置し検証を行った。その時は忘れ物をもれなく検知したが、トイレットペーパーの切れ端や芯などといった忘れ物以外も検知してしまうことが見受けられた。
そこで同年10月以降は、財布や携帯電話などといったトイレ内の忘れ物として検知すべきもののシルエットとして約7万件の教師データ(前例として記憶させるデータ)をAIに学習させた。学習後は北陸自動車道・女形谷PA(下)にもアウトラインセンサーを設置して検証を継続。その結果、識別精度の向上が確認できたため、今回の導入拡大を決定した。
2020年3月末以降は、検証が行われた鞍ヶ池PA(内回り)や女形谷PA(下)に加えて、下記のSA・PAでアウトラインセンサーが設置される。
2020年3月末までに導入されるSA・PA
東京オリンピック・パラリンピック開催(2020年7月)までに導入されるSA・PA
NEXCO中日本は、今後もアウトラインセンサーの識別精度向上を継続し、さらなる導入拡大を進める予定としている。
「徒労に終わる」可能性が高い、高速道路の忘れ物探し
SA・PAでの忘れ物は、高速道路の利用者が気づいた時には、その場所からすでに離れていることも多く、引き返しづらいという特徴がある。また、電話などで問い合わせを行い、確保してもらっても「取りに戻る」などの手間がかかる。さらに問い合わせしても「見つからない」というケースもある。
このようにSA・PAでの忘れ物は、忘れ物をした利用者と高速道路関係者の双方にとって大きな負担となる作業である。今回のアウトラインセンサーのような「その場で知らせる」という装置の導入によって高速道路の忘れ物が減れば、利用者と関係者双方の利便性が向上するだろう。