「ヒョウ」|第6回アニマル”しっかり”みるみる
世界中から集まったさまざまな動物たちを、間近で見て・感じられる施設がサファリパーク。そんなサファリパークで動物たちの世話をする飼育員さんに、知っておくとちょっぴり動物通になれるポイントを、 "しっかり" ご指導いただきました。富士山の自然豊かな環境にある富士サファリパークの動物ふれあい課飼育担当の志水さんに、「ヒョウ」を解説してもらいました。
食事も育児も、木の上に登って
ネコ科の動物である「ヒョウ」。アフリカからアジアまで広く生息しており、ジャングルやサバンナ、高地に至るまでさまざまな環境の中で生きています。飼育担当の志水さんに聞いたところ、ヒョウは環境に適応する能力が優れており、しかもとても身体能力が高い動物なのだそうです。
「檻の側面部分に足を引っかければ2~3mくらいはジャンプできます」(※志水さん以下同)とのこと。ヒョウの胴長は1mほど(園内の個体)というから体の大きさからみてもその能力は確かに高いようです。
どうしてヒョウは木登りが上手なのでしょうか? それはヒョウの狩りの方法と関係していると考えられているからだそうです。ジャングルなどの木が生い茂った環境でヒョウは木の上で身を潜めて獲物を待ち、その下を通る獲物に飛びかかって仕留めたりします。あごの力が強いので木の上まで獲物を口でくわえたまま引っ張り上げることができるのだそうです。ときには木の上に置いた獲物を数日間にわたって食べたり、保存することもあるそうです。木の上なら仕留めた獲物を置いたままにしても他の動物に横取りされる確率は少なくなるし、外敵に遭遇するリスクも減るので安心できますもんね。
「園内でも木の上に登って休んでいる姿がよく見られます」とのこと。
ヒョウ柄の特徴は、「梅の花」の形の斑紋
ヒョウの特徴っていうと、ヒョウ柄というかあの独特な毛皮の斑紋(まだらの模様)が思いつくのではないでしょうか? ネコ科の大型肉食獣の中には、ヒョウ以外にも体に斑紋がある動物としてジャガーやチーターなどがいます。それぞれの動物の柄の違いが分かりますか?
「ヒョウは、毛皮の地色が淡黄色や褐色(地域や個体などによって異なる)で、黒色の斑紋があり、中でも背面部から腹部にかけての斑紋が『梅の花』のような形になっています」。
ジャガーの場合は、黒色の花びらのような斑紋がやや大きめで、さらに斑紋の中に数個の黒い点があるのが特徴。またチーターの斑紋は、黒色の水玉模様になっています。
ところでヒョウには、全身が黒で覆われている黒ヒョウがいますが、ヒョウも黒ヒョウも同じヒョウだということをご存じでしたか?
「黒ヒョウはヒョウの単なる黒変種。一般的なヒョウの毛色をした両親から黒ヒョウが生まれますし、またその逆の場合もある」んだそうです。「黒ヒョウは全身が真っ黒というわけではなく、黒褐色の体毛の中に特有の『ヒョウ柄』があることが確認できます」。光がよく当たるような場所で黒ヒョウの体を観察するとそれがよく分かるそうですよ。
普段は仕舞っておける、出し入れ自由な鋭い爪
ヒョウの身体的な特徴についても聞きました。
「ビー玉みたいな真ん丸な目で、瞳の色が青っぽい色をしています。来園するお客様によく『キレイな青色』と言われることがあります。歯は横側が裂肉歯といって、ナイフのようになっているので肉を食べるときは横を向いて食べます。爪は自由に出し入れができる鋭い鉤爪になっています。普段は物にぶつけて傷めないように中にしまっています。ネコと同様に爪研ぎもします」。園内では大きな木の幹に対して2本足で立ってガリガリと爪を研ぐヒョウの姿が観察できることもあるそうです。
またヒョウの鳴き声について聞いてみると、「あまり声を立てることはありませんが、ヒョウ同士でじゃれ合うときに低い大きな声で吼えることがあります。子供のときは別で高い声で鳴いて親を呼びます。赤ちゃんのときの鳴き声はほぼネコと同じで『ニャアニャア』」なんだそうです。
ヒョウは、基本的には単独で暮らす動物ですが、「子供が親離れするまでは母親と行動します。親離れするまでの期間は、生まれてから半年から1年(他のネコ科の動物と同じくらい)ほど。木に登ることが得意なことから、野生のヒョウは育児も樹上で行うことが多い」そうです。
動きの激しいものには思わず反応する、ハンター本能
外見の印象から、いかにも悠然と、泰然自若に振る舞っていそうな印象のあるヒョウですが、意外にも「性格は警戒心が強く、行動は非常に慎重」なのだそうです。それはヒョウが狩りの行動をとるときの様子からうかがい知れるそうで、「足音を立てず、気配を消して、姿勢を低くして隠れ、いきなり飛びついてきます」とのこと。誰にも気づかれないように神経を使いながら忍び寄る感じ。志水さんが、一度ヒョウが入っている展示場の天井部分の骨組みの上を歩いているとき、「いつのまにかヒョウが真下に移動していて、飛びついてくるようにジャンプしてきたことがあったそうです。もちろん囲われた施設の中と外のことでしたので問題はなかったのですが」とのこと。
最後にヒョウあるあるについて伺ってみたのですが、これもやはり狩猟行動に関係する内容でした。「園児くらいの小さな子供が展示場の外を走っていると、どうしても追いかけたくなってしまうのかアクリル越しに飛びついてくることがあります」。
人間の子供のように小刻みで激しく動くものには、どうしても体が反応してしまうようで、「大人でも走ったりするような激しい動きをすると飛びついてくることもあります」とのこと。ヒョウって天性のハンターなんですね。