春の全国交通安全運動期間中の交通事故発生状況。死者数が約2割減
春の全国交通安全運動期間(2020年4月6日~15日)中に発生した交通事故による死者数は63人で、前年同期比約2割減であることを警察庁が発表した。交通事故の発生件数も前年同期と比べると約3割減であった。
春の全国交通安全運動、事故件数と死者数ともに減少
2020年4月6日~15日に実施された春の全国交通安全運動は、「子供をはじめとする歩行者の安全確保」「高齢運転者等の安全運転の励行」「自転車の安全利用の推進」が全国重点とされた。しかしながら今年は、新型コロナウイルスの影響でイベントが各地で中止になるなど、例年に比べ縮小された規模での活動となった。そんな中、警察庁から発表された交通事故発生状況の統計には、4月7日から発令された全国7都道府県に対する緊急事態宣言の影響が顕著に表れていた。
警察庁が発表した統計によると、「2020年春の全国交通安全運動」期間における交通事故発生件数は、7,645件で前年同期(2019年4月6日~4月15日)の10,378件と比較すると26.3%減少した。また交通事故発生による死者数においても、前年同期に比べ14人、18.2%減少という結果が出ている。
しかし、昨年の春の交通安全運動の実施期間(5月11日~20日)との統計比較をすると、今年は死者数が7人増加している。外出自粛への取り組みにより交通量が減少している中、一体どうしてこのような増加傾向にあったのだろうか。警視庁によると、この死亡事故増加の原因には、外出自粛要請にともない交通量が減少したことで、車のスピードの出し過ぎや、歩行者の飛び出しが増えていることが考えられるという。
歩行中の交通死亡事故は減少。一方で、自動車乗車中の件数は増加
次に、交通死亡事故の発生件数を状態別に見てみると、自動車乗車中26件、二輪車乗車中15件、自転車乗車中11件、歩行中11件となっている。歩行中の死亡事故件数は前年同期に比べて半減した。
また、全体件数のうち自動車乗車中の占める割合は、4割を超えている。一方で、歩行中の割合は前年比約1割減である。それらを踏まえると、全体の交通量が減ったものの、個人の車の利用頻度が増えているのではないだろうか。ナイル(株)が4月13~20日に行った調査では※、約2割が「車の利用頻度が増えた」ととの回答があった。これが、自動車乗車中の死亡事故件数の結果に影響しているのかもしれない。
※ナイル株式会社「コロナの緊急事態宣言による車利用への影響」調査より。
緊急事態宣言の影響か?発令日の死者数が激減。
さて、日別の交通事故死者数の統計結果には、新型コロナウイルス感染拡大防止策の一環で実施されている「緊急事態宣言」の影響が大きく反映された。10日間の実施期間中、緊急事態宣言が発令された4月7日は最も死者数が少なく2人だった。次いで少なかったのは、11日と12日で両日ともに週末だ。それぞれ4人と3人で、これは7日を除いた平日の死者数、そして期間中の平均死者数(6人)よりも低い数値である。このことからは、週末の外出自粛に対する人々の意識の高さを窺うことができた。
都道府県別の交通事故発生状況を、前年同期と比べた結果も出ている。緊急事態宣言の対象となった7都道府県のうち、東京都は減少割合が5割を超えた。これは、山梨県に次いで全国で2番目に減少率が高いことになる。また、残る6地域の中でも、埼玉県、神奈川県、兵庫県、福岡県で全国平均よりも高い減少率となっている。ここでも、自粛要請の影響が浮かび上がる結果となった。
緊急事態宣言とそれに伴う外出自粛に対する意識は、今回の春の全国交通安全運動期間において交通事故件数減少などの結果として表れた。一方で、警視庁が可能性を指摘する交通量の減少によるスピード超過や飛び出しなど、交通安全ルールに対する意識の緩みに対しては各々が気を引き締め直す必要があるといえるだろう。